●羽幌線
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1984年8月10日
急行「大雪3号・はぼろ・紋別」という13両編成の列車は、途中で切り離されて、それぞれの目的地に向かう。 私の乗った「はぼろ」は羽幌線直通の急行列車で、深川で切り離され。留萌本線へ、留萌から廃止候補の長大ローカル線を突き進む。 廃止候補の140kmの長大ローカル線に入る。廃止候補の路線ではあるが、この時は帰省客で賑わっていた。 夜という事もあって、日本海沿いに走る荒涼とした景色は楽しめなかったが、 真っ暗な原野を突っ走っている感じが、何もと心地よい。デッキで窓を開けて外を見ると月明かりに日本海が見えるが 街の灯りは見えない。
列車はかなり遅れていたが、駅に着く度に、地元の人が10名、20名と帰省客を待っている。列車から客が降りると 歓喜の声が上がる。微笑ましいが光景でもあった。驚いたのは1人の高校生のような男の子を、15名くらいの 友達と思われる男女が集団で迎えに来ていた事。同じ高校生だった私は、こんな出迎えを受けた事も無かった(東京に住んでいれば 当たり前だが)ので、羨ましくも思ったものだ。
沢山乗っていた乗客も、終点幌延に着く頃は独り人旅ばかり5名。女の子も2名いたが、一緒に幌延駅前で寝袋を広げて 明日早朝の宗谷本線を待つ事にした。
急行「はぼろ」 |
1986年8月15日
幌延駅はとてもすがすがしい朝を迎えていた。ディーゼルカーのアイドリングの音が静かなホームにカランカランと響く。これから乗ろうとしている羽幌線は141qもの長さを持つ赤字ローカル線で廃止指定を受けている。約67qの長さの留萌本線の支線であるが、支線の方が本線よりも長いというのは珍しい。
幌延も過疎化が進んでいる街だ。しかし、最近この街に核廃棄物を捨てる事が計画されている。ゴーストタウンのような街を見ていると恐ろしく感じる。5時11分。30%ぐらいの乗車率で1両のキハ22は出発。客の殆どは鉄道ファンと帰省客。仮乗降場ではホームに1両分も入らないので後部扉を使うようにアナウンス。
曇り空の車窓は一面原野か牧場で紫色の高原植物が綺麗だ。気温の関係で高原植物が咲いているのだ。あまりに雄大な景色で、写真を撮りたいがポイントが無い。いい景色というよりも寒々としていて好ましくない。
ウトウトしつつも駅とは言えぬ小さな無人の乗降場をいくつも通り過ぎ、やがて手塩大沢駅へ。日本海が良く見え目が覚めた。初山別駅の手前で海がぐっと近くなる。しかし、海は鉛色の寒々とした色だ。
築別駅に停車、かつて列車が走った側線は錆びて自然に還りつつある。ひどく朽ち果てている。幌延駅から2時間。7時にようやく街が現れたら羽幌着。増結の為10分停車。普段は増結しないのか、7月26日〜8月17日までのみ10分停車なのだ。下り列車が切り離したキハ40×2両の増結作業中、私は街に出てみた。広い道には人影もなくゴーストタウンのようであった。車内は、地元の人で賑やかになる。それでも乗車率は20%ぐらい。ボックス席に4名座っている所もあれば0人のところもある。
苫前駅か上平駅か忘れたが、かつて有人駅だったのだろう。無人の駅舎がお化け屋敷のように荒れている。そのうち内陸部へ進入して海と一時的に別れる。トンネルを抜け、小さな丘の麓を進行。牧場を進行しているうちに、いつしか曇り空も青空に変わってきた。トンネルを抜け海と再開。そして昼力駅。千松乗降場からセーラ服が乗ってきて華やかになる。
鬼鹿駅で821Dの羽幌駅行きのキハ22単行と交換する。7時55分に出発すると間もなく海側の国道40号線を羽幌線と平行して走る沿岸バスが併走する。羽幌駅を7時30分に出発し、札幌には11時30分に着くバスである。全車指定席の豪華なデラックスバスであった。車内でスチュワーデスのような女性が接客サービスをしているのが見える。
こちらのオンボロディーゼルカーも新車のキハ40を2両も従えてバスと競り合う速度で快走する。こちらは次の富岡乗降場を通過するダイヤになっているので暫くはデッドヒートを繰り返したが、大椴駅へ停車するとバスはさっさと追い抜いていった。ここからは峠にかかり、歩むような鈍足になる。
小平駅を出ると、日本海はさらに近づく。海も明るい色になる。臼谷駅には海水浴場もあり何人か泳いでいる人を見かけた。三浜駅はどこまでがホームか判らないぐらいに草が茂り、花が咲いている。ハッキリ言えば荒れている。
オルゴールが鳴り、アナウンスが留萌着を告げた。3時間24分の羽幌線の旅も終わる。留萌本線のホームの間に側線があり、とても広く開いている。石炭を輸送する貨車が沢山止まっていた。8分停車で留萌線に入るが、こちらもローカル線で1両分もホームにかからないような乗降場も多い。10時05分深川駅着。
羽幌線は1987年3月29日に廃止された。
幌延を出発する始発列車 |
日本海を眺められる車窓はノンビリしたもの |
素朴な駅も多い |
いかにも北海道のローカル線らしい雰囲気 |
かつて程ではないが石炭列車も多かった(留萌) |