●天売島
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焼尻島を15時10分に出たフェリーは島の南海岸沿いを進む。目の前には天売島が近づいて来る。波は高く、揺れが激しくなり、猛進という感じで進む。しかし乗客はほとんどいない・・・。15時35分天売島到着。まだ時間は早いが、明日もあるので、今日は宿で休んでも良いのかと思っていた。迎えにきた車に集まったのは、私を含めて独り旅の3名。若い美人の女性と、ワイルドな男性。若い女性は、自転車を借りて、日没まで走ると言っていた。そんな手もあったのかと思い、他の2名も貸し自転車屋に行く。2人は4時間、明日の10時までに返すという事で2,500円(プラン的には4時間)払っていた。しかし、私は明日もあるので2時間2,000円払い、18時までに自転車を返すと言った。雲ひとつない快晴。夕日が綺麗そうだ。
美人とワイルドさんはそれぞれ、東海岸を走って行ったが、私は何よりも行きたい天売島灯台に向かうために西海岸を行く、誰もいない灯台の写真を撮って、展望台が多い西海岸を走るが、電動自転車なのでそれほど苦労はしない。ただし、どんどんバッテリーは減ってゆく。最南端の赤岩崎灯台に着くと、東側を走ってきた2名と会う。なんで、こんな島に若い美人の女性がいるのか不思議に感じた。少し挨拶して、また西海岸を戻る。どこかの展望台で夕日を見たい。
天売島は野鳥の楽園と言われている。1か月前に、人気のある民宿を予約しようとしたが断られ、次に電話した島の宿大一という大きな旅館を予約。電話口では「今は何もないのを承知の上連絡してきていますよね」と念を押された。野鳥は興味あるが、今回は島の訪問が目的なので、泊まれれば良い。それでも最初に断られたので、観光客がいるかと思いきや、この時間帯に自転車を走らせたのは3名だけだった。
3名はそれぞれバラバラで動き、私とワイルドさんは灯台で夕日を向かえた。私は今日中に自転車を返すと言ったが、他の2名同様、やはり朝まで借りた方が良かったと思った。18時では日没まで見ると時間切れになってしまう。海に沈む夕日を見て、本来であれば灯台に光が灯るまでそこにいたかったが、自転車を返す為に先にすぐに港に向かった。自転車屋に行き、携帯電話を調べて、やはり明日まで貸してくれと電話した。
宿に戻り、豪華な食事。3名は横に並んで座って会話はない。ここは旅館である。ロビーはWifiエリアになっていて、そこに美人が座ってスマホを操作していた。
「灯台には行きましたか?」の問いに、行ったと言い、しかも、日が暮れて、灯光が灯るまでいたと言っていた。あんな、何もない寂しい場所に暗くなるまで、女性が独りでいたのかと驚いたが、ちょっと悔しかった。見せてもらうと、ススキに見え隠れする灯台の動画が写っていた。うまい。自分にはこんな風には撮れない。どうしても、その動画が欲しくてお願いしてしまった。
今時、どんな島にもWifiエリアはある。誘蛾灯のように旅人が集まって、21時の消灯時間までずっと談話していた。美人はカブに乗って1か月かけて北海道を独り旅。29歳との事であった。島のキャンプ場が閉まっていたので、ここでは「イレギュラーで民宿に泊まったとの事。ワイルドさんも、なかなか渋い旅を経験されていて、美人さんとご近所だという事がわかり盛り上がった。皆でインスタを交換しようという事になったが、私はSNSをやっていなかった。そこで部屋で格闘。電波が弱かったので、設定に戸惑った。そんな事をしているうちに夜が明け、私は夜明けの灯台を見に行った。昨日の美人が撮った構図に似せて撮ってみた。
朝食後、3人はそれぞれ散っていった。船の時間まで走り続けるのだろう。私の自転車のバッテリーはもう残りがない。美人さんは半分以上残っているとの事。ローモードで節電しながら走ったのと、電気の力を借りて走った事の違いだろう。
美人さんとワイルドさんは先に島を出るので、私は見送りに来た。皆で写真を撮る。旅人宿でもないのに仲良くなるのは不思議な感じがした。最初に狙っていた民宿が取れなかった事をいうと、美人さんは
「良かったじゃないですか」と言う。本当に良かった。
私はひとりで島を歩いた。最初は良かった天気も次第に悪くなる。そして、前日寝てないせいか、眠くなってきた。3連休最終日、観光客はあまりいない。あまりに少ないので、顔見知りになって、何処であっても挨拶をするようになった。そして島を離れる時が来た。15:50発の2便。新たにやってくる客は殆どなく、まるで回送状態の船は天売島を離れた。途中、焼尻島を経由する。そこで美人さんと再会した。
「最近の人はどうやってアドレス交換するの?」
「みなインスタですかね」
旅の形態は随分変わってしまったようだ。私からすると浦島太郎状態・・・。焼尻から1時間。17:25。暮れなずむ羽幌港に到着。
「25年前のスーパーカブ見せて」
と、言い、美人さんの相棒と対面。荷物は本当に少ない。箱ひとつだけだ。それで1か月の長旅。彼女こそ旅人だ。お別れを言って、私は宿に向かって歩いた。
途中で、甲高いエンジン音が聞こえてきた。美人さんのカブであった。羽幌のキャンプ場に行くらしい。
「気をつけてね」
「バイバイ」
夕闇せまる路地で、何か切なくなってしまった。
真っ先に行った天売島灯台 |
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島の反対側の赤岩灯台 下は観音崎展望台の夕方と昼間 |
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焼尻島よりもスケールは大きかった | |
観音崎展望台から見た天売島灯台 | |
島の宿大一の談話室。ここから始まった・・・ | |
季節によって往復本数が異なる。9月までは2便あるので、訪れるなら9月までが良いかも |