●見沼たんぼ
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子供の頃、清瀬市の親戚の家に遊びに行った際、電車が見えるよと言われて、近くのスーパーに買い物に付いて行った事がある。見渡す限りの畑と雑木林の中に線路は見えたが、電車はいくら待っても来なかった。今でこそ、データイムでも10分間隔で走る武蔵野線であるが、当時は40分間隔だった。見たのは貨物列車と最後尾に連結されていた車掌車のテールランプだった。武蔵野線沿線も開発され、このような光景はあまり見られなくなった。
武蔵野線を行く臨時列車を撮影したくて、南浦和駅付近を歩いていたところ、見渡す限り畑と田んぼが広がる景色に出会った。この風景を見た時に冒頭の40年前の景色を思い出した。東京を西に進んでも、なかなか田んぼを見る事は無いが、旧浦和市や川口市は、都内に近いにもかかわらず、田んぼがあり、地方のような風景が残っている。埼玉県と東京都との差なのだろうか。
見沼は江戸時代に作られた人工の沼である。周囲40数q、面積1200haという巨大な沼は次第に干拓が進み、戦後は住宅地にも転用されていったが、平成10年(1998年)には見沼たんぼの保全を図るために、公有 地化推進事業が始まったとの事である(見沼たんぼのホームページより要約)。という訳で、多くはは畑に転用されてはいるが、水田も残っており、秋には昔懐かしい稲架掛け(稲の天日干し)を見る事も出来る。
芝川(見沼代用水から水田に流れ、それを排水する為の川)を遡上してゆくと、湿地帯が現れてくる。釧路湿原みたいと言っても過言ではない。昔は水田だったのだろうが、耕作放棄で荒れ果ててしまった結果だろう。不気味で人気のない雑木林を突き抜けると現在の見沼が広がった。ここも人気はなく、まるで都会のエアポケットに入ってしまったような気がした。少し怖いので、すぐに引き返した。
現在の見沼。荒れた感じはするが、公園として再整備される計画もある。 | |
線路沿いには水田や畑が広がる。通勤電車と水田の景色はシュールな感じがする。一方で、左の寝台特急電車は、まるで東北本線を走っているように見える。 | |
保全しているからなのか、稲が天日干しされていた。地方でも珍しくなりつつある光景である。 | |
東川口寄りも、畑が広がる。この付近には地下鉄が走っているのだが、信じられない光景である。 |