●尾久
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住んでいる地域が理由で、偏見の眼差しで見られた事は少なからずあった。住民としては憤懣やる方ないが、地元をこよなく愛する者が見ても、この古い下町は活気がなく映る事がある。JR東北本線(宇都宮線)の「尾久駅」前に立つと、隣は「上野駅」という好立地であるにも関わらず、寂れてしまった雰囲気は否めない。背後に巨大な車両基地(尾久車両センター)があり、それを横断する為の地下通路、「尾久駅構内架道橋」は人影も少なく、怖くて入れない雰囲気もある。職場の尾久住民曰く、「そういえばトンネルがあるね。だけど、何処に繋がっているのかわからない・・・。」
「尾久駅」、そして隣接する京浜東北線の「上中里駅」の乗降客数は、東京郊外の五日市線の「秋川駅」並みである。23区内では最下位ではないだろうか。小さな駅舎と島式ホームがあるだけの質素な駅である。相反して目立つのは背後に控える巨大車両基地。通勤電車に混じって、北海道や東北、北陸に向かうブルートレインなどの長距離列車も休んでいる。かつてはジョイフルトレインの「ゆとり」や「夢空間」も所属していた。日中は入れ替え作業も行われており、鉄道好きならワクワクする光景である。この日は、数人のカメラマンが、電車をバックにモデルの女性を撮影していた。
駅舎の真横に、車両基地の下を貫いている歩行者専用トンネルの入口がある。高輪橋架道橋ほどではないが、怪しい雰囲気をもっている。トンネル内には職員専用の出入り口も散見される。車両基地の施設を住民にも開放している位置づけなのだろうか。天井が低く、不気味なトンネルを出ると、住宅地の中に飛び出した。鉄道関係の施設が目立ち、町工場の裏にでも出た感じである。住宅地を抜けると、今度は新幹線の車両基地に出る。かつて田端操車場といわれた場所だ。貨物線が複雑に入り組んでいる場所を抜けると「上中里駅」。通学の女子高生だけが目立つ駅である。この駅を境に山の手になり、丘陵地となっている。小さな路地と坂が目立つ街並みが絵になる。
夕方になると、札幌へ向かう「北斗星1号」の推進回送を眺める事が出来る。ここから上野駅まで、客車列車は機関車を最後尾に推進運転を行い回送される。鉄道ファンには馴染みの光景だが、長距離客車列車そのものが減ってしまい、この光景が見られる列車も年々少なくなってきている。この時は2往復存在した「北斗星」も、2008年6月現在、1往復になってしまった。それでも子供達は何組か、この光景に夢中になっていた。
尾久に戻ってきた長距離列車 | |
右側の小さなホームが尾久駅 | |
吹きさらしのホーム | |
尾久駅構内架道入口 | |
トンネル内 | |
トンネル出口 | |
出口側から車庫を見る |