●八木新宮特急バス(1/2)
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熊野川沿いを走る路線バスの車窓に、山崩れの跡が見えた。後部席の初老の女性が、水害について語ってくれた。2011年8月。台12号とその後の15号によってもたらされた大災害は「紀伊半島大 水害」と名付けられた。熊野川の水位が20m上昇し、死者、行方不明88名の大惨事となった。ニュースで知っていはいたが、東京に住む私からすると印象が薄かった。2011年といえば東日本大震災が3月にあったので、西日本の惨事には意識が薄かったのかもしれない。
この路線は、奈良交通のホームページには「全長166.9q、停留所の数は167、高速道路を使わない路線では、日本一の走行距離を誇る路線バス」と紹介されている。一日3往復しか走らず、朝のバスに乗る為には東京からの始発では間に合わない。また、午後のバスでは東京に戻る事もできない。乗ってみたいとは思っていたが、少し覚悟がいる。
奈良に泊まって、近鉄八木駅に8時すぎに降り立った。奈良交通のバス亭はすぐにわかったが、関空に行く人の列と、バスを待つ列が錯綜し、かつ、バスセンターでチケットを購入するように言われたので、並んだ意味が無くなってしまって、あまり良い席を確保できなかった。GWだけあって、乗客も多く、満席状態で9時15分に出発。乗客減で廃止が噂されているとは信じられない状態である。
各停留所の案内を録音しようと思ったが、あまりに長いので途中で打ち切られて、業務的な案内を被せられてがっかり。渋滞でスケジュールは遅れつつ、少し心配になりながらもゆっくりと進む。右手にJR和歌山線を眺めつつ、小さな丘が平野の中にポツポツ並ぶ田園地帯を進む。出発してから約1時間を越えて、五条バスセンターで小休止。
JR五条駅で乗客を拾い、最高乗車率となる。付近で降りる人はなるべく前に座るように整理しているが、補助席まで使う状態なので乗降にも苦労している。鯉のぼりが空中を泳ぐ吉野川を渡り、次第に山奥の様相を呈するようになる。そのような山奥に、立派な高架橋が姿を現した。完成する事が無かった五新線の跡である。2014年まで、バス専用道として使われていたらしい。バスで乗ってみたかったものだ。
「上野地」に到着、ここで20分の小休止。日本一長い吊橋「谷瀬吊り橋」を見学する。この日は混雑しているので一方通行。渡ったら戻れないので、絶対に渡らないように運転士から注意があった。食事も時間のかかる丼ものは注文しないように言われていた。せめて30分は時間が欲しいが、路線バスなので仕方ない。ここで途中下車する人もいた。乗り通すのが目的なので先を急ぐ
日本一長い路線バスという事を宣伝している。この日は盛況だったが赤字路線で存続問題が浮上している。 古びたバスが使われていたが、表示板などはフルカラー液晶画面だった。新宮まで6時間20分・・・。長い旅だ。 |
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五条から五新線の跡が見える。一部はバス専用道路として使われていたが、それも廃止されてしまった。国道の改良工事も進んでいるので、使い道がなさそうである。 五新線の区間は、このバスの走行区間と同じであるが、沿線は秘境のような場所。仮に開通していても営業が成り立ったか疑問である。トンネルの一部は開通していたようだ。 日本一長い吊橋「谷瀬吊り橋」を外から見学する事は出来るが、吊橋だけあって、定員が決められている。閑散期でも20分間に渡って戻ってくるのは難しいだろう。 |
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