●急行「くまがわ」
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車窓に球磨川が流れる。川沿いに集落が点在し、小さな駅が時々現れては消える。列車が進むにつれて川幅は狭くなり、岩場や川に削られた崖がが現れてくる。日本三大急流を思わせる光景だ。しかし、車窓からも判るが、球磨川には堰やダムが散在していて、かつての荒々しい流れは二度と見る事は出来ない。
八代駅で特急「つばめ」を降りてローカル線の旅となる。在来線最高の特急列車の旅は素晴らしかったが、満員の車内で、高速運転に振られ続けていると(乗り心地は良いのだが・・・)流石に疲れてくる。乗り換えたランナーは2両編成の老朽化したディーゼル急行。床下から伝わるエンジンの振動、低規格の線路を老朽台車で走る乗り心地は良い筈は無いのだが、適度な速度とガラガラの車内。グリーン車にも匹敵する座席に、特急列車より快適だと思った。
かつて、この区間は急行「えびの」で乗った事があった。あの時は曇っていたので気分が重かったが、今日のように晴れると、ローカル急行の旅も楽しくなる。普通列車は味わいのないワンマンカー。旅情を感じるのなら古き良き時代を彷彿させる急行列車がベストだろう。適度な速度も魅力である。
球磨川が車窓から遠ざかると、突然、かすれたような音でオルゴールが鳴った。電子音でない、懐かしいオルゴールを聞くのは何年ぶりだろう。このオルゴールが懐かしいのはある年代以上かな? オルゴールに続いて、終点「人吉」着を告げるアナウンス。80年代の旅行のようだ。ちなみに、オルゴールの曲だが、ディーゼルカーは「アルプスの牧場」。電車は「鉄道唱歌」。客車は「ハイケンスのセレナーデ」。曲の途中から始まったり、終わってからまた初めが流れたり・・・・。今の電子音には無い自然さが好きだ。
このような老朽ディーゼルカーが何故、今まで生き残っているのか不思議でならなかったが、九州新幹線開通関連のダイヤ改正で特急化されてしまった。乗車時は全く意識していなかったが、国鉄型ディーゼル急行に乗ったのはこれが最後になったのかもしれない。
八代駅 | |
長いホームは過去の栄光の跡 | |
急流の面影はない・・・ | |
次第に川幅が狭くなってくる | |
終点人吉着 |