●板谷峠(2012)

作成日:2012年7月15日
    
訪れた日 2012年5月1日
 

福島盆地から山岳区間に入ると、鉄橋とトンネルが続く。峠の隘路であるが、複線で電化さた亜幹線である。やがて右手にスイッチバックの遺構が見えてくる。ここは赤岩駅。かつては、ここから4駅連続でスイッチバック駅が続いていた。

スイッチバックには色々な種類があるが、奥羽本線のものは山岳路線用のものである。勾配区間に駅を作ると発車が困難な為、本線から分岐した折り返し線と、それと対になる発着線を設け、発着線上にホームを設けていた。駅に止まるまで2回、折り返し運転が必要であった。奥羽本線はこれが4駅も続いていた。その姿も1990年には過去のものとなった。

奥羽本線の普通列車は機関車に牽引された旧態依然とした客車列車であった。奥羽本線に新幹線を乗り入れる際に、線路幅の変更と、普通列車の電車化も行われた。登坂性能に優れた電車にはスイッチバックは必要なく、プラットフォームは勾配の途中に移設されてしまった。スイッチバックは廃止されたが、その遺構は今でも残っているそうだ。今回は新幹線でなく、普通電車でこの板谷峠を越えて思い出に浸ってみた。

板谷峠は豪雪地帯である。各スイッチバック駅の複雑なポイントは巨大なスノーシェッドによって保護されていた。板谷駅にもその遺構は残っており、スノーシェッドの中に駅を作ってしまった。峠駅も同じ構造であった。そこには懐かしい駅立ち売りの姿が・・・。「峠の力餅」は健在であった。スノーシェッドといい立ち売りといい、文化遺産ではないかと思う光景である。ただし、観光目当てで乗車する人は日に何人いるのだろうか。

大沢駅を過ぎると米沢盆地である。東京では1ヶ月も前に散ってしまった桜が満開だった。峠ではヒンヤリした空気が窓から入ってきたが、盆地は清清しい気候であった。新在直通「つばさ」で通り抜けてしまっては判らない土地の空気を感じる事ができた。福島駅から米沢駅までの46分は充実した旅だった。「つばさ」なら30分強、私が乗車した1985年なら1時間以上はかかっていたと思う。


山形新幹線も2代目。初代の400系は衝撃的な近未来車両で好きだったが・・・。
普通電車は在来線ホームから出発するが、東北本線とは乗り入れることが出来ない。新幹線に合わせて標準軌に改軌してしまった為である。ただし車両は狭軌用と同じ。ロングシートの車両も導入されており、旅情を感じる事ができない車両もある。今回乗車したは最古参のセミクロスシート車だった。
福島盆地を出ると山岳区間になる。
赤岩駅の遺構跡が右上に見えてくる。1985年に乗車した際、このホームに入った客車普通列車に乗った事がある。この駅で長時間停車し、特急「つばさ」に抜かれた記憶がある。
板谷駅。かつてホームがあった場所にもスノーシェードが残っており、保線車両の待機場として機能しているようだ。
普段はこの駅から徒歩13分の「峠の茶屋 最上屋」から出張しているそうだ。列車は日に6往復。普通列車だけである。この日は2名の立ち売りがいたが、採算は全く合わないであろう。それでも販売を続けているのは老舗の意地なのだろうか・・・。窓が開かない電車もあり停車時間も短くなり環境は厳しい。スイッチバックしていた頃は、窓は開くし、停車時間も長かった。
ありがたく購入。実は甘いものが苦手で、結局食べられないのである・・・。昔、旧型客車から購入した事があったが、その時もお数個食べてあとは土産になった筈。
各駅停車は6往復、新在直通「つばさ」は16往復で、毎時運転である。

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