●北上線
|
十文字駅から東京に戻るには3つの方法があった。@奥羽本線で大曲駅に出て新幹線(4時間半)、A横手駅から北上線経由で新幹線(5時間半)、B奥羽本線と山形新幹線の組み合わせ(5時間10分)。@が一番遠回りであるが、一番早い。Bは一番短距離、Aは一番時間がかかるが、乗車時間は@と遜色ない。しかし、AもBも列車の本数が少ないので、選択できる時間帯は限られる。たまたま、北上線の時間がピッタリだったのでAを選択して帰る事にした。
北上線に乗車するのは、1994年の夜行急行列車「おが」以来である。当時は、朝日が昇ってから北上線を走破した筈であるが、とにかく眠くて、通路越しに見るディーゼル機関車と、ほっとゆだ駅の通過のシーンしか覚えていない。新鮮な気持で横手駅から列車に乗り込んだ。2両目に乗車した乗客は私のみ、ボックシシートに足を投げ出しリラックスする。平日の夕方であったが、まるで旅行気分になってきた。仕事も終えているし、遠回りでもないし、何もやましい事は無いのだが、少し申し訳ない気持にもなる。16時29分、1時間半の旅が始まった。
北上線は。東北本線北上駅と、奥羽本線横手駅を結ぶ全長約60qの非電化単線のローカル線である。東北地方を横断するローカル線はいくつかあるが、新幹線乗り入れの為に改軌工事が行われていない貴重な路線で、時々、本線の迂回ルートとしても使われる事があった。とはいえ、普段は地味なローカル線である。奥羽山脈を越えてゆくので、山里の景色は美しいが、ここでしか見れないものでもない。
駅と温泉が合体したほっとゆだ駅を出ると景色が一変した。水を満々と湛えた湖の中を列車が進む・・・。そんな印象だった。実際には湖の縁を進むのであるが、左に右に、鉄橋を渡る都度、川の見える方向が変わる。その為、方向感覚がおかしくなる。夕日に輝く錦秋湖。ダム湖であるが、水を湛えていると不自然さが無く、美しいと思ってしまった。
車窓は山岳地帯、湖、とめまぐるしく景色が変わり、やがて田植えの時期を迎えた水田地帯になった。終点に近づくにつれ民家も増え、旅が終わる事を感じる。この感覚は、北海道の深名線で朱鞠内湖から名寄駅に向かった時に味わったものに似ているような気がした。今度は、ほっとゆだ駅の温泉に入る為に来たいものだ。
近代的な横手駅を出発した列車は2両編成のディーゼルカー。乗客は殆どいなかった。 水田も見える山里を行く。 |
|
ほっとゆだ駅は温泉を併設した駅として有名。ここで温泉に入りたいが、列車の本数が少なすぎて、途中下車して寄るというのは難しい。 ここを出ると錦秋湖の畔を行く。この景色が、北上線のハイライトである。夕日に浮かぶ湖は美しかった。 |
|
終着駅直前の藤根駅で最後の列車交換。 終点北上は当然だが「はやて」は止まらない。 盛岡よりも東京に近いのだが、ここからが時間的に遠いのである。 |