●急行「もりよし」
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まるで巨大な額のような大窓を雨が激しく打ちつける。晴れていれば、初夏の緑が車窓いっぱいに広がった筈だが、マタギの里は雨に煙っていた。昼間に、そして晴れている日に、十二段峠を越えたかった。山奥の秘境の清流は、濁流が渦巻いていて恐怖感すら感じた。
昨年、雪の内陸線に乗った時、暮色が濃くなる中、人を寄せ付けないような十二段峠を越えていったディーゼルカーの旅の印象が強烈だった。あまりの寂しさに泣きたくなるような景色だったが、今度は夏に越えてみたい。そう思っているうちに、この鉄道の経営がピンチだという話が伝わってきた。この鉄道のエース、急行「もりよし」もいつまで走れるかわからない。そう思ったら、角館から列車に乗り込んでいた。
かつては、女性運転手、女性車掌で有名だった列車も、この日は男性運転手と女性車掌の組み合わせで走らせていた。乗客は1ボックスに1名程度。少々寂しい。同情の意味もあって車内販売でビールを購入し、飲みながら優雅な旅を続ける事が出来た。
列車は豪華で、サロンもあり快適なのだが、長時間停車が無いのが少し残念。阿仁合駅の売店で売られていた熊肉の煮物を購入したかったが急行列車では無理。13時50分、豪雨にもかかわらず、定時で鷹ノ巣駅に到着した。1時間48分はあっという間だった。
角館を出発 | |
窓の大きい車両 | |
濁流が渦巻く | |
お洒落な感じの阿仁合駅 | |
次第に川幅が広がる | |
終点鷹ノ巣着 |