●山田線
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窓を開けて風にあたりながら旅を楽しむ。ノンビリした景色を眺めながら、ビールを飲んでいると最高の贅沢をしている気がする。列車は13時10分に宮古を出ると盛岡まで2時間ノンストップだ。途中から乗ってくる人はいない、4人ボックス席を占領して、足を投げ出しリラックスして旅が出来る。90年代初頭まで、何処でもこのような旅が楽しめたのに、冷房の無い車両は珍しくなり、窓が開く車両すら貴重品になってしまった。
山田線は内陸の盛岡から三陸海岸の宮古を結ぶ路線という印象が強い。正確には、宮古から三陸海岸を南下し釜石まで行く157.5キロの路線。政治路線として有名で、岩手県出身の原敬首相が無理矢理作らせたが、野党から、「熊でも運ぶ気か」と激しく攻撃された事は有名。それだけに超閑散路線である。
人口希薄地帯を走るので快速列車は2時間もノンストップで走るのだ。夜行列車でも無い限り、2時間もノンストップで走る列車など国内では他には無いだろう。この列車は臨時列車だが、昔は定期快速列車「リアス」も長時間無停車運転で有名だった。94年に乗車時は帰省客でいっぱいで、立ちっぱなしの2時間で旅情どころでは無かったが、今回は充分に旅が楽しめそうだ。
こんな閑散路線だが、1日3往復しか走らない岩泉線という支線も持っている。その分岐駅の茂市をはじめ、通過する途中駅の幾つかでは駅員さんが直立不動で見送ってくれる。何とも頼もしいが、1日5往復の定期列車しか走らない路線にこんなコストをかけて良いのか気になる。また、宮古−盛岡間の16駅の利用客が合わせても20人に満たないと聞いたことがあるが本当なのだろうか。途中駅の区界だったと思うが、快速列車とすれ違うために運転停車したが、2時間走ってすれ違うのはこの1本のみ・・・。山田線の行く末が心配になる。
走っても、走っても山の中・・・という日本とチベットとも揶揄される区間を走りぬけ、大きな街が現れると終点盛岡だ。15時09分着。特急列車の2時間は苦痛だが、この列車は実に楽しかった。名残惜しい・・・・。気がついたら窓枠に乗せていた腕が日焼けして痛かった。
旧国鉄型ばかりの山田線 | |
支線を分岐する茂市も通過 | |
車窓は長閑 | |
唯一の交換列車 | |
ひたすら山岳区間を行く | |
終点盛岡は大都会のようだ |