LE DOBERMANN





 監督:ヤン・クーネン 主演:ヴァンサン・カッセル モニカ・ベルッチ



大槻ケンジ氏絶賛
「俺、こんなにいやな気持ちにさせた映画、はじめてだ(笑)」

リュック・ベンソン
「「ドーベルマン」は私の仲間の最高傑作だ。」





 唐突だがフランス映画と訊いて普通、何を想像するだろうか?

「小難しい」「たるい」「おしゃれだ」等々。こんな感じではないだろうか。
 しかし前述のリュック・ベンソンがフランス映画界に登場したあたりから フランスの映画には新しい風が吹き始めたようである。
 その流れから一番に世界へ打って出てきたのが本作品であり、その監督 であるヤン・クーネンである。
 パンフレットのプロフィールによると、このヤン・クーネンという人は現在 33歳。(自分とほほ同年代だ。)フランスで30本以上のCMやビデオクリップ 、短編映画をつくり高い評価を得ており、そんな彼が初めて手がけた長編映画が本作「ドーベルマン」なのである。
 この「ドーベルマン」はもともとはフランスの犯罪小説が原作で,フランス国内 ではその過激さで一部で熱狂的な指示を集めていたらしい。そんな熱狂的なファン の一人がこのヤン・クーネンだった訳で、自分の長編映画第1作目の題材はこれと 決めていたようである。そして、その熱意が原作者に伝わった事で今回の映画化 となったらしい。
 この映画をゴールデンウイークの谷間である5/1(映画サービスデイ1000円均一) に見たのだが、意外にも満員であった。もちろん500人以上収容可能な大きな劇場 ではなくアート系の小規模な劇場(名駅ゴールド劇場)であったのだが、平日ということで甘く見ていた私は、満員の会場には驚いた。その為仕方がなく私は唯一空いていた最前列の席に座った。
 しかし、座った時点で既に映画は始まっており冒頭はドーベルマンをデザインした3DCGのオンパレード。
 映画本編の方は冒頭のCGとはうって変わって教会での洗礼式で始まった。この洗礼を受ける生まれたばかりの赤ん坊が本編の主人公”ドーベルマン”である。
 やがて洗礼式に同席したマフィアと思われる男が持っていた銃が本物のドーベルマン(犬)が男にかみついたことで宙を舞い、やがて赤ん坊の乳母車の中へ。
 それでも赤ん坊は泣くでもなく、騒ぐでもなく銃にうれしそうに触るばかり。やがて時は流れ、(この時の移り変わりの表現が秀逸)今、正に前方からやってくる現金輸送車に銃口を合わせる男がいた。
 (それも銃から飛び出るのは銃弾ではなく、小型ミサイルだ)彼こそが洗礼式で銃を受け取った赤ん坊こと”ドーベルマン”その人であり世間を騒がす強盗団の頭(Head)である。
 そして、この強盗団には、ドーベルマンの恋人で聾唖のセクシー美女ナット(爆破SPECIALIST)、短気で女好きだが仕事は冷静沈着なムス、ナットの双子の兄で一流スナイパーのマニュ、子犬のゴジラを愛するオノ使いのピットビュル、ドラッグクイーンのソニア、最後にあの洗礼式の神父までもが聖書に爆弾をつめ、この強盗団に加わっているのだ。(なによりもこの強盗団の面々が実にキレまくっている。ドラッグをやっているやつばかりなので神父以外はほとんど狂っているといっても過言ではない。まだドーベルマンぐらいがマトモに見える。)
 しかし、この強盗団を追いかけるフランスの銭形警部ことクリスチーニはヤツらの上をいく程のキレている。犯人への拷問はあたりまえ、脅し、レイプとほとんど犯罪者という感じ。
 おまけにこいつもドラッグをやっている有り様。全く狂った警官だ。特にソニアを尋問するために家にのりこみ、家族まで脅すシーンでのその憎たらしさは出色の出来だ(このクリスチーニ役をフランスの名優と言われるチェッキー・カリョという人がやっている為余計リアリティがあるのかも)
 映画前半はドーベルマンらがゲームのように銀行を警察の裏をかきながら次々と襲う姿が軽快に描かれているのだが、後半に入るとクラブ(ディスコ)でのクリスチーニら警官隊とドーベルマン達との間で激しい銃撃戦が繰り広げられるのだが(拷問によってソニアから得た情報でクリスチーニらは張り込んでいた)、プロディジー(昨年ブレークしたデジタルロックのバンド)の曲と相まってより派手なものとなった。それはタランティーノやその弟子格のロバート・ロドリケスとも異なるもので、より乾き、かつ血なま臭く派手な感じである。
 最後はクリスチーニに拉致された恋人のナットを助けるためにドーベルマンがクリスチーニと対決する形になるのだが、最後のシーンが前述の大槻ケンジ氏の言葉につながるのだと思う。唐突で観客を突き落とすかのような表現方法は決して後味すっきりといくものではないであろう。
 ただ、ああいう終わり方も自分では良しと感じたが........。(結末は見てのお楽しみ)


 この映画の前評判では「フランスのルパン三世」とか言われていたが、それよりもずっと残酷で卑猥で下品だ。(フランス映画史上初の脱糞シーンもある(笑))ただ泥棒対一匹刑事(デカ)という構図に峰不二子ばりのセクシー美女ら仲間が絡むという点が似ているだけである。(関係ないがパンフレットにはその関係でモンキーパンチ氏の絵も寄贈されている。)
 しかし、日本のアニメから多大な影響を監督が受けていることはこの映画からも一目瞭然ではある。





pic 80点






button