がんばっていきまっしょい

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 監督:磯村一路 主演:田中麗奈、真野きりな、清水真実、葵若菜、久積絵夢



 「もっと失恋しなさい。あんた演技下手なんだから...」とCMで加賀まりこに 苛められる(または叱咤激励される?)”なっちゃん”こと田中麗奈の 初主演映画がこの「がんばっていきまっしょい」である。
 本作品、口コミで(と言ってもインターネット上でだが)公開の遥か前から 評判になっており私は公開を心待ちにしていた。
 それでこの地方では本日(1998/12/12)公開されたのを機に例によって 初日に劇場に駆けつけた次第である。



 簡単にストーリーを紹介すると...。

 映画の舞台は1970年代末の四国、松山。田中麗奈演じる篠村悦子(通称:悦ネエ)は高校入学を前に毎日を何となく無為に過ごしていた。
 そして今日も衝動的に”家出”をしてみるものの家の者には何も気づいてもらえない有り様。それもこれも優秀な京大に通う姉の存在が有るためで親に期待もされていないと自分では思いこんでいる。
 唯一海辺で見たボート(レガッタ)の鮮やかな記憶だけが心を捉えていた。
 そしていよいよ高校入学となっても悦子には戸惑うことばかりで彼女には退屈で仕方がない。(その反抗的な態度からネチネチとした教師に目を付けられ、苛められるシーンは秀逸。いるんだよねこういう教師がどの学校にも。)
 そんな時でも脳裏をかすめたのは、あの日海辺で見たボート練習の姿だった。
 早速ボート部に入部を申し込むが「女子部は残念ながら無い」ということで体よく断られてしまう。しかし、そんな事ぐらいで諦めるような悦ネエではなく、無かったら自分で作れば良いと一念発起。顧問の先生を口説き落としクラスメイトや小学生時代の友人などを巻き込んでやっとのことで伊予東高女子ボート部が設立される。しかし、全員ボートは未経験、おまけに運動部もほとんどが未経験ということで何から何まで0からのスタートであった。
 そして始めは乗り気で無かった悦ネエ以外の部員達も、新人戦で味わった悔しさをバネに「ドベ」から抜け出そうと必死になっていく...。
 −と映画はこんな感じで、ありがちな”アイドル+スポーツ根性”ものと言えなくもなかったが前半のキャピキャピとした同好会的なノリから新人戦での敗戦の悔しさから本気で勝利を望み始めた時からこの映画は全く違った輝きを見せ始める。特に貧血やギックリ腰で退部まで考えた悦子が中嶋朋子扮するコーチに「わたし、ボートが無いと何も無いんです」と訴えるシーンは誰の心にもグッとくるものであるだろう。しかし決して辛気臭さや”スポーツ根性”ものにあるがちな押し付けがましさなどはこの映画からは感じれない。
 多分、監督の意図であると思われるが、主人公の少女達にありがちな姿を投影することなくある程度距離を置いた形で淡々と描いていることに好感が持てる。その距離感が絶妙である為、かえって主人公たちの心情が良く浮かび上がってくるのだ。
 後半のヤマ場であるボート大会でのシーン(悦子が貧血で半ば意識を失いながらもオールを漕ぎ続ける)は印象的なストップモーション映像と共にいつまでも心に残るものとなったのは確かであると思う。


 なんとも言葉足らずの自分が語るにはまだまだ言い尽くせない作品。ぜひとも多くの人に見てもらいたい。





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