海の上のピアニスト
THE LEGEND OF 1900


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 監督:ジュゼッペ・トルトナーレ 音楽:エンニオ・モリコーネ 出演:ティム・ロス


 Y2Kによるトラブルもなく 無事に明けた2000年代。
 本日1月1日は 恒例の映画サービスデー。
 この記念すべき日に私が選んだ映画は今からちょうど100年前の 1900年に生まれた男の物語「海の上のピアニスト」であった。

 「海の上のピアニスト」は豪華客船ヴァージニアン号のダンス ホールのピアノの上に置き去りにされた赤ん坊がこの船の 黒人機関士に拾われ ナインティーン・ハンドレッド(1900) という名前で船の中で生きていく話である。
 そしてピアノの上に置き去りにされたことがこの男を運命づけたのか ナインティーン・ハンドレッドは頭の中でイメージしたもの全てを音符に 変える天賦の才能を発揮し、誰に教わることもなくピアノの前に座った 最初のその瞬間から 流麗にピアノを弾きこなすことが出来たのだった。
 それから月日は流れ、ナインティーン・ハンドレッドは立派に成長し 船上バンドの花形ピアニストになり、生涯の友人とある美しい女性と出会う...。

 ― と物語はこの生涯の友人であるトランペッターのマックスの思い出話として 語られていくものであるが、あるきっかけで現代(と言っても劇中の上での 設定年代―第二次世界大戦直後のことだが)にエンディングでつながっていく 構成である。
 またこの話は題名からも判るとおり”ピアノ”が重要なテーマになっている。
 ナインティーン・ハンドレッドを演じるティム・ロスは全くピアノが弾けない そうだが、この撮影の為激しい訓練をした結果(もちろん映画のように超絶技巧 を繰り出して弾けるわけではないが)さも弾いているような雰囲気を醸し出すのに 成功している。
 ところどころ吹き替えがあったようだが(ピアノのシーンで吹き替えといえば 個人的には大林宣彦監督作品「さびしんぼう」を思い出す。
 主演の尾美としのりが全くピアノが弾けない為 ところどころ手だけを大林監督が自ら吹き替えたらしい。ゆえにシーンによっては腕が4本になるところがあるとか?)全く気にならない。
 特に嵐の中、ピアノの固定装置を外し、船の揺れにまかせてローリングしながら感情にまかせてピアノを弾くシーンは出色の出来である。多分映画史に残る美しいピアノシーンだと思う。
 また実在したジャズピアニスト ジェリーロール・モートンとのピアノ対決はこの映画の最大の見せ場であった。当時流行であった難曲を交互に弾いて最後に勝者を決めるこのピアノバトルでは当初やる気の無かったナインティーン・ハンドレッドが次第に熱を帯びて神懸り的なプレイ(画面上ではそのプレイを腕が何本もあるかのような映像で表現)で相手を打ち負かしてしまう。
 このように直球的な楽器による、そのテクニックによる対決という映像はあまり見たことがないが唯一 あげるとしたら「クロスロード」という映画のラストでスティーヴ・ヴァイ扮する花形ギタリストとラルフ・マッチオ扮するロバートジョンソンの幻のブルースを探し求めるギタリストとの超絶早弾きギターバトルが思い出される。(この時は曲調はブルース―ロックであったが、なぜか早弾きのテーマだけはクラシックの伝説のヴァイオリニストニコロ・パガニーニのカプリ―スであった。それだけギターで弾くには最も難易度の高い曲であったことである。)
 だが いくらピアノの腕前が天才であっても一生船から下りることも出来ず、船と運命を共にしたナインティーン・ハンドレッドという男の生き様は滑稽で悲しく、せつない。
 それだけにこんなおとぎ話にも我々は共感できるのかもしれない。





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