監督、制作:グレゴリー・ホブリット 出演:デニス・クエイド、ジム・カヴィーゼル
”もしも父が生きていたら 自分の人生はどうなっていただろう?”
昨年は いつになく多くの映画を劇場で、ビデオでと鑑賞したのに、なかなかこのMovie Diaryのコーナーにアップできなかった。
昨年は邦洋問わず結構良い映画を多く見たのですが、私が怠惰なせいでアップできなかったので、今年はもう少しこのコーナーも充実していこうかなあと年頭にあたり、心を入れなおしつつあります(苦笑)
それで とうとう始まってしまった21世紀。記念すべきその元旦は恒例の映画1000円均一デーだったので、今回も劇場に足を運びました。
そして この記念すべき21世紀ファースト・プログラム・ピクチャーに選んだのが「オーロラの彼方へ」です。
この作品、 簡単に言うとSFの分野におけるタイムスリップものと定義できますが、決してタイムマシンやタイムトンネルも出てきません。それに誰も未来や過去に行きません。ゆえに本来のSF映画としての定義からは外れていると言っても言いすぎではないでしょう。物語はこうです。
〜1969年、ニューヨーク。誰よりも先に火の中へ飛び込み、誰よりも後に現場から去る勇敢な消防士、フランク・サリヴァン(デニス・クエイド)は今日も火事の現場にいた。誰よりも先に火の中へ飛び込み、誰よりも後に現場から去る勇敢な消防士フランクには愛すべき妻と6歳になる「チビ隊長」の愛称の息子ジョン(ダニエル・ヘンソン)がおり、親子3人の生活は幸福な輝きで満たされていた。それはちょうどその時期、NY上空に出現した不思議なオーロラの光に照らされているかのように....。
だがその2日後、一家は思いがけない悲劇に見舞われる。倉庫火災に出動したフランクが、脱出に失敗して命を落としたのだ。
「別の脱出ルートを使えばフランクは助かっていた」 という隊長の言葉を聞いて、無念な思いを募らせるジョン。幼い彼の胸には、自分を「チビ隊長」の愛称で呼び、とびきりの愛情を注いでくれた父を失ったショックと悲しみが、深く刻みこまれていった。
それから30年後。
ジョン(ジム・カヴィーゼル)はNY市警の刑事となったものの最愛の彼女と不規則な仕事ゆえにうまくいかず つらい日々を過ごしていた。
フランクの命日が2日後に迫るなか、再びNYの空に現れたオーロラは、ジョンの思いを自然と父に向かわせた。もしも父さんが生きていたら……。 そう考えなかった日は、これまで1日たりとてなかった。
幼なじみのゴード(ノア・エメリッヒ)の親子が、クローゼットのなかにフランク愛用の無線機をみつけ出したのは、そんなときのことだった。 昔を懐かしみながら、無線機を設置するゴード。やがて彼らが帰ったあと、ジョンの耳に電波の向こうから呼びかける声が聞こえた。慌てて応答したジョンは、 CQ15のコールサインを持つ男と野球の話に花を咲かせる。
翌日、再びCQ15が交信を求めてきた。
無線の向こうで、男が子供に「チビ隊長」と呼びかけるのを聞き、愕然とするジョン。彼は直感的に悟った。
CQ15は、30年前の今日、この同じ場所で同じ無線機に向かっているフランクなのだと。
だが、彼自身も信じられないその事実を、フランクにどう説明すればいいのだろうか。 案の定、フランクは頭からジョンの言葉を信じようとせず、翌日自分が死ぬ運命にあるという話にも耳を貸さなかった。交信が途切れる寸前、ジョンは思いの限り叫んだ。「父さんは直感に従って失敗したんだ。他の脱出ルートなら助かる」と....
ジョンの言葉を信じなかったフランクであったが1969年10月12日、運命の日、倉庫火災に出動し「ワールド・シリーズの第2戦、9回にワイスが決勝打を打つ」という前夜の男の会話の内容が、消防車の上で聞いたラジオの実況中継では、確かにそのとおりのことが起こっていた。 だが何故、あの男は未来に起こることを知り得たのだろう?
狐につままれた思いで現場に到着したフランクは、いつものように先陣を切って燃えさかる火の海に飛び込んだ。
逃げ遅れた少女がいるのは倉庫の最上階。 彼女を発見したフランクは、思い切って搬送用のシュートを滑り降りた。それは、直感を無視した行動だった。そう、彼は未来の息子に命を救われたのだ。
そして やっとあれは未来の息子ジョンからの通信であったことを確信したフランクは無線機のあるデスクの上に文字を刻み付けた。「まだ生きてるぞ」 。
30年の時を隔てて、同じデスクの上に文字が彫りこまれていくのをみつめるジョン。
今は親子であることを確信した二人の口からは、この30年間、言いたくても言えなかった一言がこぼれ出た。
「お前を愛している」「ぼくもだ。ずっと会いたかった」
― というようにアクションシーンやオーロラが映るシーン以外、派手なシーンは一切ありません。
どちらかと言えばこの映画はホームドラマと言ってもいいでしょう。また父親と野球の関係をベースにしている当たりは 多少ニュアンスが違うかもしれませんが名作「フィールド オブ ドリームス」に近いのかもしれません。それにタイムパラドックス的な部分はあの「バック トゥ ザ フューチャー」を彷彿とさせ
、とても判りやすく”過去と未来、あるいは過去と現在”をつなぐものとして描かれており(写真や書類が過去を変えることにより 見る見るうちに変化していくのはまさに「バック トゥ..」を踏襲していると思う。特に机に字を刻んでいくシーンは秀逸です)SFとしての側面もきっちりとまとめられています。
しかし、個人的にはSF的にどうの、ホントの連続殺人犯がどうのということは、ほとんどどうでもよくなっていて この時を超えて、今や亡くなってしまった父と息子が時を越えて繋がるというプロット(設定)だけで 胸が熱くなってしまいました。
と言うのも個人的な話をさせてもらうと自分も主人公ジョンと同じような境遇にあり
、今年でこの物語と同じようにちょうど30年。あまりにも設定が似通っているのです!
だから こんな奇跡を信じたいし、もし過去と連絡が取れるなら”死ななくても”いいように忠告して なんとかこの埋められなかった30年間の記憶をジョンと同じように埋めたいと考えてしまうのです。
今でも時々”もしも父が生きていたら 自分の人生がどうなっていただろう?”と考えることがある。
主人公のようにキャッチボールをして、一緒に釣りに行ってと叶えられなかった日々の小さな夢に心震わされるものです。だから ジョンの気持ちも良く判るし、どうにかして父を救おうと東奔西走する姿に共感も覚えました。
ただ前半の感動的な穏やかな感じから 父が生き残ったことによるタイムパラドックスで発生する事件を巡りサイコサスペンス調になるあたりは少し無理やりな感じではありました。
ラストの衝撃的で感動的なシーンに繋ぐために 色々なことを積めこみすぎたあたりが原因だと思われますが(予定調和的な展開を裏切るという意欲は感じますが)もう少しスッキリさせても良かったのでは..。(Yahoo株がどうのというのは 笑えましたが...)前半が感動的だったゆえにちょっと残念。
でも 改めて親子の絆について考えさせられるいい映画でした。
ああ それにしても日本にもオーロラが掛かり奇跡は起こらないものだろうか?
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80点
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