監督:北野武 出演:ビートたけし、オマー・エプス、真木蔵人、寺島進、加藤雅也、大杉連、石橋凌
”I understand "Fuckin Jap" asshole”
「死に至る映画」または「死生観に囚われた映画」というべきであろうか。
北野映画は1作目「その男、凶暴につき」から一貫してこのテーマを描き続けていると思う。
それは バイク事故後に作成された作品群からも顕著であると言えるだろう。
私は「あの夏、いちばん静かな海」「みんなやってるか」「キッズリターン」「HANA−BI」「菊次郎の夏」と北野映画を見てきたがビートたけし名義の「みんなやっているか」以外、彼の映画は多かれ少なかれ”死”のイメージを拭いさることは出来ない。
それは同時に「いかにして 死ぬか?」というテーマに置きかえることもできるだろう。
主人公が直接「いかにして死ぬか?」そして「どこで死ぬか」と捜し求めていく姿は「HANA−BI」で最も色濃く描かれているように思えるが
今回の「BROTHER」も正しくそれである。
また北野映画にはいつも独特の孤独感が伴う。
あのどうしようもなくポツンとした、例えば核戦争後にたった一人だけ生き残ってしまったかのような絶望的な孤独感だ。
(この独特の孤独の手触りというものは 子供の頃にかくれんぼをしてまんまと成功して最後まで隠れ通せたのに、気づいたら かくれんぼはとっくに終わっていて 一人ぼっち残されて夕闇の中、とぼとぼ家路に着くような あの惨めなさびしい観じに似ていると映画を見ていてはたと気づいたが..どうだろう?)
「BROTHER」も死と孤独に満ちた映画ではあったが、北野監督いわく初めてエンターテイメント性を重視したということ、舞台をアメリカ、LAに設定したことで陰惨さは意外にも薄められてはいる。
ストーリーは東京で抗争の果てに組を追われた山本(ビートたけし)は留学したまま消息が絶えてしまった弟・ケン(真木蔵人)がいるロサンゼルスに向かい、
そこでジャンキー相手の売人に成り下がっていた弟と再会する。
しかし、再会を喜ぶ間もなくドラッグトレードの現場に出くわした山本は、本能の赴くままに弟たちを助けるのだがこのドラッグをめぐる小さないざこざが、
いつしか地元マフィアを巻き込んでの抗争に発展していくというもの。
ストーリー的には 今までの北野作品にあったように脚本にヒネリが加えてあるとか、大どんでん返しがあるなどという凝った構成は全くない。
ただ淡々といつものように映像で見せていくだけだ。
そして 抗争の果てに当たり前のように人がどんどん死んでいく。それも惨めな死体となって....。
ただケンの友人である黒人デニー(オマー・エプス)とのエピソードのみ(ラストにも絡んでくるので)微笑ましいものがある(いつものたけしのギャグほどではないが)。
またアメリカまで追っかけてきた山本の舎弟、加藤(寺島進)とのエピソードも凄まじいものもあるが 最後のセリフは泣かせずにはいられない。
「BROTHER」とは―(当たり前だが) 日本語で訳せば「兄弟」ということになるがこの言葉には色々な意味が込められているように思える。
当然、弟・ケンとの関係、または舎弟である加藤との関係、そして同じく袂を分かった舎弟の原田(大杉漣)との関係(その末路は悲惨である)、それから兄弟のように親しくなったデニーとの関係など多種多様であり、それぞれの思いも深い。
しかし黒人が親しくなった友人を「BROTHER」と呼ぶように この映画で最も描きかったのはデニーとのことであろう。
白人中心の社会において日本人 ― アジア人のように、どうしてもマイノリティにならざるを得ない黒人との友情を描くことによって、日本そしてアメリカにおいても行き場を失った男の孤独をより深く描こうとしたのではないか。
登場人物全てが時流の波に呑み込まれ、没落していく姿を描くことで現代において自分に正直に生きることの難しさを表現したかったのかもしれない。
私はそんな気がしている。
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78点
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