出演:三上博史(永島利明)、葉月里緒菜(永島聖美/EVE)、別所哲也(吉住医師)、中嶋朋子(浅倉佐知子)
”90年代の大ベストセラー(?)”といわれる「パラサイトイヴ」の映画化作品。
日本の文壇にバイオホラーといわれる新分野を開拓し、小説発表時から最も映像化を望み、最も映像化が難しいと言われた作品である。
自分も先日、この原作を読み終えたところであった為、映画化に期待をもって映画館に向かった。
ストーリーは生化学者である永島利明は事故死した愛妻、聖美の腎臓提供と引き替えに肝臓を手に入れ自分の研究室で培養を試みる。しかし、培養した肝細胞中のミトコンドリアが異常な増殖を始める。それはまるで意志を持った個有の生命体のように……。
−と一般の人には生物や化学の授業でしか見聞したことがない“ミトコンドリア”という一細胞に注目した作品で、なるほど映像化など不可能に思える。しかし今回はその不可能をCGの最先端技術‘VFXによって見事に映像化に成功したといえる。
ただ原作を読んだ者にとっては“ミトコンドリア生命体”の表現が原作とはあまりにもかけ離れたものになってしまっており(原作ではもっと血だらけでドロドロ、グチャグチャしたものと記されている。)かなりホラー色が薄められている。そして‘VFX’による“ミトコンドリア生命体”が細胞というよりは水のイメージに近く、映画『アビス』の異種生命体に酷似している気がして、この点からもホラーよりもファンタジー色の強い作品となってしまった。
また主人公の“ミトコンドリア生命体”の存在自体がファンタジーの権化でありながら映画全体の雰囲気のみがホラー的なイメージを醸し出しているのにはアンバランスさが目立った。
特に冒頭の市民講座のシーン、永島の上司である教授の演技、学会発表会シーン、聖美と利明の出逢いのシーンなどでの過剰な演出が結構、鼻についた。
上映時間の関係でかなり原作を圧縮して細かい部分で原作と異なる点があり、ラストが大幅に書き換えられてしまった事には納得いかなかった。この「パラサイトイヴ」の一番Keyになる部分が削られてしまったことで、おぞましさや恐さを無くしてしまったと思う。原作では腎臓移植を行った少女から“ミトコンドリア生命体”と利明の子である“超生命体”が誕生し、やがて“それ”は数分で成人に成長するが、ミトコンドリアの異変で自己崩壊するという顛末なのだが映画では利明と聖美の記憶を取り戻したと思われる“ミトコンドリア生命体”が心中という形で燃え尽きるという終わり方には、やはり原作を知る者にとっては納得出来ないだろう。この点をもう少し忠実に描いておれば一級のホラー作品となっていただろうと思う。ただ今以上のCG技術と時間、お金がかかるのは必至だが……。
色々、不満を述べたが唯一、久石譲の音楽は今回も冴えていた。本人も大変にノッテ作曲したということもあり、映像にうまく合致していたと思う。久石お得意のミニマルミュージック的な部分とストリングス系や生ピアノを多用した親しみやすいメロディラインが融合して一流の映画音楽として仕上がった。ぜひ大林作品への復帰を望む次第である。
大林作品といえば、この「パラサイトイヴ」に大林作品との類似点が見られた。妻、聖美(葉月里緒菜)が事故死するシーンは映画『ふたり』での千津子(中嶋朋子)の事故シーンをイメージさせるものだし、それに当の中嶋朋子がこの「パラサイトイヴ」に重要な役柄で出演しているのは偶然の一致なのだろうか…。
|
65点
|
|