「はやて」試乗会
盛岡駅
2002年(平成14年)12月1日の東北新幹線八戸延伸を1ヶ月ほど後に控えた11月9日・10日の2日間、一般公募による試乗会が開催さ、抽選により15,000人が試乗会に招待されることになった。我が家でも応募した結果、11月10日(日)の「盛岡発コース」に見事当選。一足早く新線区間に乗車できるチャンスを戴いた。
仙台の実家に前泊し翌10日、仙台駅より「こまち5号」に乗り込む。平年と比較して1ヶ月近く早い初雪で雪化粧した車窓を眺めながら10時47分、盛岡駅に到着した。盛岡では「こまち5号」と「やまびこ5号」の切り離し作業が行われるが、その作業現場には見学客が多数集まっていた。この群衆の中にも試乗会の参加者がいるのであろう。みんな賑やかにカメラを構え、思い思いに撮影をしていた。定刻10時50分、我が家の一家が乗車した「こまち5号」は秋田に向けて出発していった。
盛岡駅受付会場
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試乗会の参加コースと運転時間 私が乗車したのは盛岡7コース
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乗車記念品
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改札を抜けて「はやて」試乗会の受付に向かう。11時50分出発であるが10時20分より受付が行われているので、順番待ちの行列もなくあっさりと受付も済む。乗車記念品として東北新幹線八戸開業&E2系1000番台デビューを祝った記念デザインの缶コーヒーと丸形の文鎮をもらった。ただし、車内での飲食は厳禁につき、車内では飲まないように釘を指される。この時間帯の試乗列車は昼食時間帯を走行するので、盛岡で駅弁を買って食べようと考えていたのだが当てが外れた。車両が汚れるのを嫌ったのであろうが、何とも残念である。
受け付けが終わり、集合場所へ移動する。集合場所は新幹線コンコース脇の南口改札と北口改札を結ぶ通路であった。北口改札付近では、帰りの八戸−盛岡間の乗車券・自由席特急券の臨時切符売り場と記念オレンジカード・記念切符の売り場が設置され、呼び込みが行われていた。「懐かしのボディカラーキハ58、キハ28」(7枚組)と「はやてデビュー記念」(2枚組)のオレンジカードがあったので、つい買ってしまう。いきなり9,000円の散財である・・・(苦笑)
集合場所には既に試乗会参加者が列をつくっていた。鉄道ファンとおぼしき姿もちらほら見かけるが、圧倒的に家族連れやお年寄りが多かった。2日間で24本の試乗列車が運行され、15,000人の乗客が乗車するので、1列車に換算すると625人乗車することになる。使用されるJ編成の定員は約800人であるが、1,9,10号車の3両には乗車できないので、ほぼ満席状態になると思われたが、集まった人数はそれほどでもない。ざっと見て400人前後であった。これだと、かなりのんびりと乗車することが出来そうである。
さて、我々が乗る試乗列車は、八戸から11時20分に到着。八戸からの試乗客を下車させた後、あらためて乗車させると案内がある。
試乗客の到着に合わせ、11時15分頃から横浜中華街の龍舞が新幹線コンコース改札内で始まる。龍舞の周りに八戸から到着した試乗客も集まり、ちょっとした賑わいになる。何故?、横浜中華街が盛岡で宣伝活動を行うのか理解に苦しむが、東北新幹線八戸延伸を機に青森県からの観光客を横浜中華街に誘致したいという意図があるようである。
「はやて」試乗を待つ行列 |
横浜中華街の龍舞
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試乗列車「はやて」
11時30分頃、ようやくホームに案内され乗車となる。座席は全席自由で2号車から8号車への乗車が限定されている。座席確保が保証されているので落ち着いてホームにあがる。が、よりよい座席を狙う人は小走りに駆けていった。
14番ホームには既に「はやて」用新車J52編成が入線していたが、ドアは開いていない。誤乗防止を兼ねているのであろう。空いている列に狙いを定め、4号車のドアの前に並ぶ。程なくドアが開き乗車を開始した。
「はやて」
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大窓が特徴のE2系1000番台 |
4号車の乗車率は最終的には40%程度。難なく窓際席を確保できた。
さて、乗車したJ52編成を見て気がつくのは2席にまたがって設置されている大窓である。この大窓の編成こそ、JR東日本が東北新幹線八戸延伸に際して増備されたE2系1000番台である。後日、試乗した知人に聴いた話では、普通のE2系も使用されていたそうなので、新車に当たるとはかなり運がよいことになる。
なお、1号車の座席はまだビニールで覆われていた。室内をチェックすると、従来のE2系と比べてかなり様変わりしていた。まず目についたのは、初期状態の3人がけ座席の背もたれの位置である。従来車は90度以上傾いており、デフォルトのまま座ることは困難な構造になっていたが、1000番台ではその角度が緩和されていた。腰掛けてみると、背もたれがリクライニングするほか、座面も前後に可動するタイプになっている。この構造の座席は、485系3000番台で採用され、その後徐々に勢力を拡大している。
他に、空調の吹き出し口が荷棚の下側に設置された。これによって快適な室内環境が実現できるとのことであるが、見慣れていないせいかかなり違和感があった。
飲食は禁止されているが、トイレ、洗面所は使える状態である。洗面所は乾燥機が手前にあるタイプに変わっていた。事前にもらったパンフレットによると乾燥機能に優れているそうである。
その他にも、いろいろと細かい変更点が確認された。
車内の様子
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洗面台 |
定刻11時50分、滑るように盛岡駅14番ホームを発車。一路北へ向かう。秋田新幹線が分岐する地点までは、今までも乗車できたが、それ以北は初乗りである。まもなく左手に盛岡第一運転所が見え、高架橋のコンクリートも新しくなったころ、スピードも最高速に達したようである。そして、約6分後、新線区間の70%以上を占めるトンネル区間の最初のトンネル(滝沢トンネル)に入った。
いつもの新幹線だと停車駅が近づくに連れガクンとブレーキ操作の衝撃を体で感じるのであるが、新線区間はデジタルATCが導入され、最高速度から滑らかなブレーキ操作で停車できる。最初の停車駅、いわて沼宮内が近づき滑らかな減速で停車。デジタルATCの威力をまざまざと感じた
いわて沼宮内駅は高架の対面ホームの構造。ドアは開くが、ドア前にJRの職員が貼り付き乗降は出来ない。停車後、すぐ発車するのかと思ったが、この列車は約5分ほど停車した。このコースの所要時間が他のコースより10分ほど長いのは、停車時間の差がそのまま出ているようである。
ホームを見ると「はやて」の乗降口案内の他に、「MAX」の乗降案内も設置されている。開業ダイヤを見る限り、臨時でもE4系の運用はないのであるが、多客期には盛岡「やまびこ」の八戸乗り入れを考えているのだろう。
発車メロディが流れて来たのを聴いて思わずコケる。日頃、首都圏のJR線に乗車している時に耳にするメロディであった。もう少し、ふさわしいメロディを選定してくれればいいのにと思う。いわて沼宮内を出発すると、まもなく陸上トンネルでは世界一長い岩手一戸トンネルへと突入する。25キロの長さを誇るが、「はやて」は7分あまりでくぐり抜け、二戸駅に到着。
二戸駅は対面地平ホームで、在来線ホームと同じ高さ。真新しい橋上駅舎ができあがっていた。
二戸でも5分ほど停車したが、うまいタイミングで在来線ホームに485系3000番台が盛岡方面から入線した。時刻表から見て「はつかり7号」らしい。車内から思わず歓声が上がり手を振る姿も見られた。あちらの車内からも手を振る姿が確認できた。
このような光景が見られるのもあとわずかである。先に「はつかり7号」が発車。その後ろを「はやて」が追いかける形になる。
二戸の発車メロディも、首都圏でお馴染みであった。
二戸を発車して、しばらく在来線と併走する。高架橋を登り切ったところで、先行していた「はつかり7号」を一気に抜き去る。相手は100キロ近く出ているだろうが、新幹線のスピードをまざまざと感じさせる。周囲が開けるとまもなく終点八戸である。
乗車時間は50分であったが、目新しさもありあっという間であった。新幹線のスピードの威力を大いに感じることが出来た。
八戸駅のホームは地平2面4線の構造であるが、中央の2線に当たるホームには、ホーム柵が設置されていた。同じような構造の駅は新横浜があり、停車する「ひかり」や通過列車が通っている。現在は八戸に全列車停車するのだが、将来、新青森方面に延伸された際には通過列車が高速で走るのであろう。
盛岡駅でも見かけたが八戸駅でも報道関係者の姿を見かけ、隣の席に座っていた家族連れがインタビューを受けていた。
そして乗車した編成は、5分ほど停車した後、車庫へ向けて回送されていった。
八戸駅はビックリするくらいに姿を変えており、ガラス張りの明るい駅舎に変わっていた。2階のコンコースにあがれば、上りの試乗列車をまつ人々で長い行列が出来ており、熱気も感じられた。今回の東北新幹線八戸延伸は、東京に新幹線一本で直結する八戸側の期待が大いに感じられた。
試乗会はここで、解散。駅舎は新しくなったが、飲食スペースはあまり無く混雑していた。八戸らしい食事を食べたいので、八戸線で本八戸に向かった。
いわて沼宮内駅
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混雑する八戸駅 |
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