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アリシア・アロンソ率いるキューバ国立バレエ団は、ヨーロッパやロシアのバレエ団に比べ、日本ではあまり知られていません。
キューバが島国で、他との競争もないため、時代に取り残されたバレエ団という人もいますが、だからこそ、すれていないというか、品が良いというか、これだけ一生懸命やっていますというような、純粋無垢という感じのバレエ団で、映像で見る限り、ダンサー全員がよく訓練されているようで、特にアネット・デルガドとヴィエングセイ・ヴァルデスという2人のプリマ・バレリーナは、いずれも小柄ですが、バランス、回転共に巧みにこなす実力派です。デルガドはほっそりとして、踊りがとても丁寧で優雅で、流れるようなパドブレと、伸びのあるグランジュッテが美しく、これに対して、バレエを始める前は新体操をやっていたというヴィエングセイ・ヴァルデスは、ややふっくらとして愛らしく、長時間の片足バランスを何なくこなす超人的技の持ち主。これほどまで長くバランスを維持できる人が世界に何人いるのでしょうか。
エスメラルダ〜パドゥドゥの稽古風景と本番の舞台の映像がyou tubeに載っていました。2008年の International Ballet Festival La Habanaの時のもののようです。踊っているのはアネット・デルガド、パートナーはジョエル・カレーニョです。まず、稽古風景ですが、大声を張り上げている教師の姿は見えませんが、おそらく、アリシア・アロンソでしょう。プリンシパルのデルガドにバランスと回転を徹底的に教えこんでいます。このバレエ団のダンサーはよく鍛えられているという評判ですが、こんな稽古の賜物でしょう。バランスも回転もお手の物というスーパーテクニシャンのライバル、ヴィエングセイ・ヴァルデスに負けまいと、デルガドは、必死に難しい技を身につけようと頑張っています。
教師は、特にバランスへのこだわりが強いようで、デルガドは何度もやり直しを、要求されていました。アダージョ最後近くでは、ポアントのアチチュードで立ち、プロムナードの回転の後、支えの手を離して、揺れをグッと堪えて一人立ち。そのまま長〜いバランスをじ〜〜と保ちます。これを3回繰り返しますが、3回目の時わずかにふらついても「ダメダメ、もっと粘って、もっと、もっと…」と教師の声。 デルガドは懸命にふらつきを堪えて頑張ります。続くピルエットでは、教師は20回転もの超絶技法を要求します。デルガドはやっとのことで19回回ったところで、がくんと軸足のかかとが落ち「キャー!!」という声とともに、思わず両手で顔を抑えて泣き崩れてしまう。容赦なく「やり直し!!」という教師の叱咤の声。デルガドは気を取りなおして、再度バランスからやり直します。今度は「無理をするな」という教師の指導があったのか、15回転までしっかり回って、右足を高くドゥバンに上げてバッチリとフィニッシュ、やれやれという表情でした。プリンシパルながら、皆の見ている前で罵倒され、ビシビシしごかれるアネット・デルガド、さぞ、恥ずかしさ、辛さ、屈辱感を感じたことでしょう。でも悪びれず黙って素直にやり直したのは偉い。健気な姿が胸を打ちます。
続いて、本番の舞台の映像。デルガドは稽古の教えを忠実に守り、丁寧に踊っていましたが、目当ての3連続バランスは、思い通りいかなかった。肝心の3回目が、トゥが崩れてしまいバランスを長く保てなかった。不本意な結果に。舞台が終わって教師にこっぴどく叱られたのではないかしら・・・。
でもその後のピルエットは頑張りました。稽古と同じ19回を倒れることなく回りきり、ドゥバンをしっかり決めて、観客は興奮して拍手喝采でした。コーダではグランフェッテを無難に決めて、嬉しそうな表情でした、
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you tube |
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本番の踊りも見応えがありますが、特に稽古の映像は、やや暗いけれど、カメラアングルが低くてダンサーの動きがよくわかるし、思い通りいかなくて泣き崩れてしまうほどの悩めるプリンシパルの姿を捉えていて、とても興味深い。
稽古、本番とも、若きプリマの旬の踊りを楽しめる貴重な映像です。
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