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皮肉にも運転手の居眠りで証明された新幹線の安全性   (2003.3.1)

新幹線の運転手が居眠りという、怖〜いことが起きました。広島発新大阪行き「ひかり」が新倉敷駅を通過した頃から運転手は居眠りをはじめ、岡山に停車して車掌に起こされたというものです。
 
乗客を満載して時速250キロを越して疾走する「ひかり」の運転手が眠り込んでいた・・・ゾッとしますが、でも、新幹線の自動制御は正確に作動し、事故を未然に防ぎました。
新幹線の運転手は一人。これは、運転手が走行中に意識を失ったとしても、自動制御で安全に運行できるという、JRの自信を示すものですが、この居眠り、皮肉なことに、新幹線の安全性を証明することになってしまいました。
新幹線の列車は、ATC(自動列車制御装置)によって制御されています。列車が停車駅に近づくと、列車のセンサーは、線路の発信機からの減速指令をキャッチし、列車は、段階的に減速していきます。時速30キロ近くまで減速したとき、通常は、運転手がATCの制御を解除し、手動運転に入ります。ここからが運転手の腕の見せ所で、ブレーキを巧みに操作し、乗客に不快感を与えないようにスムーズに減速して、停止位置にピタリと止めるのです。現状のATCでは、人間のような微妙な操作が出来ず、スムーズに停止することが出来ないのだそうです。
今回の場合、30キロに減速しても、運転手がATCの制御を解除しなかったため、自動的にATCがブレーキを作動させ、通常の停止位置よりホーム半分くらい前に、列車は停止しました。正しい停止位置に停車しなかったのはなぜか疑問が残るものの、運転手が居なくても列車は安全に運行できることが、証明されたわけです。
だからといって、私は、運転手なしで良いとは思いません。
 
運転手が居眠りをしたのは、単に弛みだけだったか、それとも健康や環境上の問題があったか、今後の調査の結果を待たないとわかりませんが、いずれにせよ超高速列車の運転手が走行中にグッスリ眠ってしまったのは、あってはならないことだと思います。
単調な線路を走っていると眠くなるのは無理もないと思います。私も、高速道路を運転中に眠くなり、はっと気がついたことがあります。でも、公共交通機関の運転手となると、眠ってしまったでは済まされない。列車の運転手は、航空機のパイロットと同じで、一人で数百人の乗客の命を預かっています。
今回の場合はATCが列車を自動停止させて、未然に事故を防いでくれました。でも、ATCでも防げないこともあります。例えば、先日の韓国地下鉄の火災事故。「放火」という予想もつかないことが起きました。もし、新幹線内で放火されたら・・・・。ATCは何も出来ない。運転手に頼るしかありません。
こんなときこそ、運転手の判断が重要になります。列車を止めるか、突っ走しらせるか。でも、その運転手が眠ってしまっていたら・・・・。
つまり、すべての自動制御はありえない。自動制御が及ばないところで、どうしても人間の判断が必要です。このとき、二次災害を防止できるのは、機械でもコンピュータでもなく人間です。
人間が二次災害を防げなかった典型的な例が、先の、韓国の地下鉄の火災事故です。100人以上の犠牲者が出ましたが、犠牲者は火災が発生した列車より、反対車線に後から入ってきた列車の乗客の方ずっと多かったのです。明らかに二次災害です。このとき、この列車の運転手は、乗客を列車に閉じ込めたまま、自分だけ逃げてしまった・・・・
二次災害防止の責務を怠ったのです。
今回の居眠り事故、「自動化の中で人間のやるべきこと」について、いろいろ考える材料を与えてくれたように思います。
 
筆者は、IRCA Prov. QMS Auditor

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