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ジャパンネット銀行のシステム障害の教訓 (2003.5.13)
5月8日、ジャパンネット銀行のシステムに障害が発生、復旧に丸一日近くもかかるという大事故に発展してしまいました。何でも、連休前にオンラインのレスポンスが遅くなり、連休中に対策したのが、逆に障害を招いてしまったとか。
ほぼ一年前の4月1日、みずほ銀行で、合併の為のシステムを統合がうまくいかず、一般の市民を巻き込む大トラブルになったのは、記憶に新しいことです。
この二つの障害には共通点があります。ジャパンネット銀行にせよ、みずほ銀行にせよ、システムを作り変えたり、直したりした直後に、トラブルが発生しています。つまり、システムの変更の本番リリースに伴って発生しているのです。なぜ、こんなことが起きてしまったのでしょう。
みずほ銀行の障害のとき、塩爺こと塩川財務相は、「緊張感が欠けている。図体が大きくなっただけで、中が空っぽになったのではないか」と厳しく批判したそうですが、この言葉、核心をついていると思います。ひとえに、システムリリースに対するテスト不足、ひいては、リリースへの認識の甘さにつきます。このリリースへの認識の甘さは、とても恐ろしいことです。
IT関連企業は、この数年間のIT不況の波を乗り切るために、従業員の大規模な外注化により、自社の社員の大幅な削減を行ってきました。この結果、長年の間に会社に蓄積されたノウハウが流出し、社員は、はるかに多い外注の管理に追われてしまい、本業に手が回らなくなってきてしまった所もあるようです。これが、本番に向けてのテストや確認の甘さに繋がっているように思います。結果的に、システムの品質の低下を招いてしまったのでしょう。
先日、スペースシャトルが、大気圏突入時に空中分解するという事故がありましたが、このきっかけは、出発時に飛び散ったロケットの破片が機体にぶつかり、機体に損傷を与えたからだそうです。この損傷を、大したことはないと甘く見た、NASAの技術者たちは、飛行中のシャトルに対して何も手をうたなかった。結果的に、これが致命傷となり、大気圏突入時の爆発へと繋がってしまいました。この事故のテレビ・ニュースを見ていたとき、私は、街頭でのアナウンサーのインタビューに答えていた、一人の中年の米国人女性の言葉が、とても、気になりました。彼女は、「この事故は、技術者の慢心から起きたと思う。」と言っていたのです。 「技術者の慢心」、恐ろしいことです。人間は、慣れてしまうと、周りが見えなくなってしまうということです。こんな時、見落としや手抜きが生じ、事故を起こしやすくなります。慣れのあまり、「大丈夫」と過信してしまう。そこに落とし穴があるのでしょう。
この、「技術者の慢心」のように、物事に対する、人間の「甘さ」こそ、最も恐ろしいことです。ジャパンネット銀行のシステムに障害は、認識の「甘さ」こそ危険なのだと、私たちへの警鐘を鳴らしてくれているように思います。
私たちは、このトラブルを他山の石とかたずけることなく、「甘さ」からくる危険への教訓として、しっかりと、かみ締める必要があると思います。
筆者は、IRCA Prov. QMS Auditor
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