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ミンクス:「バヤデール」(パ・ド・ドゥ)    (2004.01.03)

1999年:バレエコレクションinOSAKA
森本由布子ほか
 
私は、森本由布子さんには思い出があります。森本由布子さんは、19歳の時モスクワ・バレエコンクールで銀賞をとり、一気に名を馳せたのですが、その翌年の1986年、「眠りの森の美女」のオーロラ姫に抜擢されました。森本由布子さんにとって、この「眠りの森の美女」は初の全幕主演で、実質的なデビューでした。
この公演は、日本バレエ協会によって、東京文化会館で、宮木百合子/篠原聖一、森本由布子/赤木圭というダブルキャストで演じられました。私は、このとき初めて森本由布子さんの舞台を観たのですが、フレッシュで全力投球の森本由布子さんの熱演に強く心を打たれました。幸い、この舞台はNHKが収録し、数ヵ月後にハイライトを放送してくれましたので、ビデオに録って、その後、繰り返し繰り返し、楽しんでいます。 特に、「ローズアダージョ」の難しいバランスに挑む彼女の真剣な眼差しと懸命な踊りは、私に勇気を与えてくれます。
この舞台がいかに注目され、彼女の評価が上がったかは、彼女がその後、関西バレエ協会やロシヤから「眠りの森の美女」の主役として招かれていることからもわかります。
 
この森本さんが、1999年夏に行われたガラ・コンサート(バレエコレクションinOSAKA)に出演された時の映像があります。彼女は「ラ・バヤデール」のパドドゥを踊っています。思い出の「眠りの森の美女」から13年後の踊りです。
当たり前のことですが、彼女の踊りも、いろいろな経験を積んで変化したことを感じましたが、彼女の踊りで13年前と少しも変わっていないところがあります。彼女の美しい容姿と、「丁寧に、一生懸命に」踊るというひたむきさです。
先の「眠りの森の美女」は、森本さんにとっては、初の大舞台、プレッシャーは大変なものだったに違いありません。でも、ひたむきに大役に挑んでいる姿には、いたく心を打たれました。客席で、思わず「頑張って!!」と祈るような気持ちになったのを記憶しています。
この、ひたむきに踊る姿は、1999年の映像にもはっきり映っています。アダージョでは、パートナー(多分、イルギス・ガリムーリンだと思います)との息はぴったりで、優雅なアラベスクのバランスをピタリと決めて息を呑む美しさ。容易に180度近くも脚が上がる柔らかく美しい肢体。 さらに魅力的なのは、独りで踊るヴァリアシオンの爽やかさ。まさに、正確で丁寧で気品が漂い、13年前と少しも変わらない初々しさに溢れています。胸には汗がひかり、ローズアダージョのヴァリアシオンで胸と背中に汗をにじませて、懸命に踊っていたオーロラ姫の姿を思い出しました。 バレエは「若さの芸術」と言われますが、19歳の時モスクワ・バレエコンクールで銀賞とられた彼女の実力には少しの衰えも感じないし、むしろ踊りには円熟味が加わって一層魅力を増してきたように思います。
そして最後のコーダ。イタリアン・フェッテを巧みにこなして技術の確かさを見せてくれたと思うと、難技にグラン・フェッテへと息つくまもなく突入し、 やや辛そうな表情ながらも、難しい回転をバッチリ踊りこなして、にっこり。こんな美しい笑顔を見るとこちらもうれしくなってしまいます。 「森本由布子健在!!」をアッピールした、素敵なパドドゥでした。VIEW
こんな素晴らしい踊りを披露してくれた森本由布子さん。毎日のレッスンは、さぞ大変なことでしょう。弛まぬ精進を続けて、ファンの期待を裏切らない森本さんに敬意を表します。私も見習わなければと思います。
 
森本さんは、現在フリーで踊る傍ら、バレエ教室で後進の育成に努めておられるとのこと。一芸に秀でた人は、心身すべてが魅力的と言われます。彼女もさぞ素敵な先生なのでしょう。 最近は、「白鳥の湖」や「眠りの森の美女」のようなグランド・バレエでの主役は踊っておられないようですが、彼女には華があり、クラシック・バレエのプリンセスがよく似合うし、それらを踊りきるに十分な実力も持っておられると思います。
彼女には、ぜひ、もう一度、「眠りの森の美女」全幕を踊って欲しい。かって彼女が「ローズアダージョ」で示してくれた感動と勇気をもう一度味合わせて欲しい。森本由布子さんがオーロラ姫を踊る日を夢見ています。

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