パリ・オペラ座バレエ団の「ラ・シルフィード」の映像があります。2004年7月に、ガルニエ宮で上演された公演の記録です。
「ラ・シルフィード」は、ロマンティック・バレエを代表する作品で、主人公の青年が妖精に魅せられたために破滅してしまう悲劇です。
主役は、オペラ座のエトワール、オレリー・デュポン。この公演の前、彼女は膝の怪我のため一年以上も舞台に立てませんでしたが、見事に復帰して、素敵なステージでした。
オレリーのシルフィードは、柔らかく丁寧な踊りで、空気の精そのものというような浮遊感がすばらしい。こんなに優雅で神秘的で透明で美しい妖精を、ここまで表現できる人は少ないと思います。
マイムも、とても愛らしく可憐で、情緒豊かな表現はまさにシルフィードでした。マチュー・ガニオによるリフトも、ふわっとあがるようで重さを感じさせません。
かって、川口ゆり子さんが、NHKのインタビューで、「チョット体を緩めるだけで、パートナーから『今日は重いね』と言われることもあります。男性の上に乗るのではなく、浮かんでいるように心がけます」と、
言っていましたが、デュポンもきっとそんな気持ちでマチューにリフトされていたのでしょう。終盤の魔法のスカーフで羽が落ちてしまうシーンでは、痛々しさが印象的でした。
全体を通して、オレリーの演技力が見事です。怪我のブランクがかえって彼女を大人にしたのかもしれません。
マチューは、当時まだ20才とのこと。収録直前にエトワールに昇進したばかりだったそうですが、キルトが良く似合っていて、優雅な身のこなし、ジャンプは軽々と美しく、
ちょっと頼りなさげな感じが、迷える青年らしくて、バレエの主人公ジェームスの役にぴったりと役にはまっているという感じです。
この二人のペア、背のバランスもよく息も合っていたと思います。この二人のペアが幻想的な世界を醸しだし、最高にロマンティックな気分に誘われました。
また、ユレルのエフィ、純粋で愛らしいく、エフィという役柄にピッタリの健気な演技でした。
スコットランド情緒ある踊りをパリ・オペラ座ならではの優雅な雰囲気で堪能できました。
ラ・シルフィード(ラコット版全2幕)
出演: オーレリ・デュポン、マチュー・ガニオ、メラニー・ユレル
原振付: フィリッポ・タリオーニ、振付: ピエール・ラコット
演奏: パリ・オペラ座管弦楽団、指揮:エルマンノ・フローリオ
音楽: J.M.シュナイツホーファー
収録: 2004年7月 パリ・オペラ座 ガルニエ宮
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