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スノー・ホワイト:タマラ・ロホ、イナキ・ウルレザーガ、ビブラオ・アリアーガ劇場   (2009.10.10)
バレエ『スノー・ホワイト』の世界初の映像です。白雪姫をモチーフとしたこのバレエ、 作曲したのは「バッハTOキューバ」で一躍話題の人となったエミリオ・アラゴン。ここでも彼らしく、 名作童話にほどよいラテンの味付けをして、映画音楽とも思えるような、軽快で心地よい音楽を聴かせています。
 
王子様のキスで白雪姫が目を覚ますという物語で、全体で90分で、全幕バレエにしては少し短め。 物語後半部は、王子の登場から、口付け〜白雪姫の目覚まし、結婚式と、忙しい展開でしたが、間延びしなくて良いかもしれません。
コールド・バレエは、チョッと頂けなかった。脚のラインや動きはきれいですが、 ステップをこなすことに集中するあまり、細かい部分にまで神経が行き届いてないというか、雑な感じのダンサーが多い。 しかも、それぞれが好き勝手に踊っている感じで、動きが揃っていません。七人の小人たちは、大人のダンサーが踊っているせいか、 かわいらしい小人たちという感じがせず、違和感を感じました。上手な子供を出演させた方が良かったのでは。 王子役のイナキ・ウルレザーガは初めて見ましたが、何となく若々しさがなく、王子様という感じがしませんでしたが、 タマラ・ロホとの呼吸は良く合っているようでした。
 
白雪姫役のタマラ・ロホの踊りは素晴らしい。最初から最後まで出演のシーンが多いのですが、 最後までスタミナ切れによる不安な感じがせず、安心して、とても楽しくで見ることができました。 ロホはピルエットもフェッテもとてもきれいです。回転の技術には絶対の自信をもっているよう。エミリオ・アラゴンをして、 「私の音楽において議論の余地なきミューズ」と言わしめたのも頷けます。タマラ・ロホは、 ロイヤルバレエ・プロパーのダンサーではなく、スペイン出身ですが、かってロイヤルのプリマ、シルビー・ギエムのような傲慢さはなく、 英国人を思わせるエレガントな雰囲気も備えていて、かつ、小さくぽっちゃりしていて、微妙にコケティッシュなところが可愛らしい。 ロホの為に振付けられたと思わせる最後のグラン・フェッテ、彼女は小さな体でゴムまりのようにくるくる回っていました。 回転数は、ざっと数えただけで50回。しかも4回毎にトリプルを入れるのです。しかも全く乱れず、 軸足のトゥの先が床に突き刺さっているように、ズレが全くないから凄い。 回転が得意で、グランフェッテでは驚異のトリプルの嵐で観客の拍手を誘う渡辺美咲さんでさえ真っ青という感じ。 こんな技、恐らく誰も真似が出来ないでしょう。 メディアも、「並ぶ者なきロホ、古典バレエの新しい才能!」(マドリッド,ABC)と絶賛したとのこと。  見方によれば、バレエはこれでいいのかという人もあるかもしれませんが、そんな野暮なことをいうのは止めましょう。 素直に凄いと思います。むしろ、ひたむきに一層の超絶技巧獲得へ努力を続けるタマラ・ロホ、私は好きです。 踊り終わってのカーテンコール、舞台に上がってきたエミリオ・アラゴンを見つけて飛びついて、思わず彼の胸に顔をうずめたロホ。 「良かったよ!!」とやさしく背中を叩くアラゴンに、嬉しそうに小さく頷くロホが可愛らしかった。こういう場面に会えるので、バレエを観ることは辞められません。
  バレエ:スノー・ホワイト
    タマラ・ロホ:白雪姫
    イナキ・ウルレザーガ:王子
    振付:リカルド・クエ
    音楽:エミリオ・アラゴン
    演奏:エミリオ・アラゴン指揮:ビルバオ交響楽団
    収録:2005年11月、ビブラオ・アリアーガ劇場
       

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