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くるみ割り人形〜「雪の国」:草刈民代 (2004.2.10改)
バレエ「くるみ割り人形」の第一幕の終わり近くに、とても美しいシーンがあります。
雪の国と呼ばれているこの場面、私がとても好きなところです。
「くるみ割り人形」は2幕しかありません。しかも1幕はほとんど演技なので、本来の意味でいうバレエとはちょっと感じが違っています。
このため、クリスマスの夜のパーティの中で、クララの踊りやパーティに集まった人たちの踊りなど、それなりに楽しめるのですが、本当にバレエの楽しみを味わえるのは、この雪のシーン以降でしょう。
王子とクララが、純白に輝く雪の国にやって来ると、雪の精たちが粉雪や吹雪きになって踊り、歓迎してくれます。
クララは女王から美しいケープを贈られ、再び旅に出ていきます。
純白のチュチュを着た雪の精が雪の舞う中での踊る姿は、幻想的で夢を見ているようです。
このシーン、日本のバレエ団も世界のバレエ団も、いろいろ趣向をこらして楽しませてくれます。
雪の女王はソリスト級のバレリーナが踊るので、見応えがあります。
ソロのこともあれば、王子とのパ・ドゥ・トゥのこともあります。
この場面では少年合唱が使われるのが正式だそうで、これはバレエとしては革新的な登用と言えましょう。ただ都合によって、女声合唱のこともあるし省略される場合もあります。
とても素敵な雪の国のシーンの映像があります。
バレエの全幕ではなく、2001年のニューイヤー・オペラコンサートの中でのアトラクションで、NHKテレビで放送されたものですが、照明がやや明るすぎるかなと思いましたが、幻想的で美しいコールド・バレエと、華やかな雪の女王の踊りを楽しめました。
出演は、草刈民代と牧阿佐美バレエ団。NHKホールでの録画です。
草刈民代は、初めのうち緊張していたのか、表情がやや硬く、アダージョのバランスのあたりではわずかに不安が感じられましたが、
優雅で品の良いパ・ド・ドゥを踊っていました。
でも、コールドバレエが加わった中盤からは、すっかり落ち着いて、自分のペースを取り戻したようで、持ち前の華やかさを発揮して、光輝いて、素敵でした。
草刈民代の所属する牧阿佐美バレエ団からは、彗星のように新鋭・上野水香が現れ、草刈民代のプリマの座を脅かす勢いです。
特に、開脚で180度を楽に超える体の柔らかさと、ポアントで立ってビクともしないほどのバランスの良さは、彼女の強力な武器だと思います。
草刈民代さんは、こんな上野水香に比べると、高く脚は挙がらないし、バランスも心許なく感じられることもあります。
だからといって、草刈民代が、上野水香に劣るとは思いません。技術的には及ばないかもしれませんが、草刈民代には上野水香を凌ぐ、「華」があるし、
「品格」があります。草刈民代の踊りは、180度開脚のような派手さはありませんが、とても丁寧でしなやかなです。
また、曲芸的でビクともしないよりも、草刈民代のなんとなく頼りなくて、そっと支えてあげたくなるようなバランスに魅力を感じます。
草刈民代は、「一回一回の舞台は挑戦の場でもある。もっともっと踊りを通じて自分を知り、演じているときに解放された瞬間が経験出来ることを願い、意志を持ってそれに挑戦してゆきたい。」(草刈民代のすべて:新書館)
と言っていましたが、草刈民代の丁寧な心のこもった、そして懸命な踊りを見ていると、この気持ちがひしひしと感じられます。
プリンセスというにふさわしい、素敵なバレリーナだと思います。ただ、一つ気になる点があります。
見せ場のアラベスクパンシェで後方に挙げた脚の膝が下を向いていて、脚が曲がって見えてしまうのが惜しい。
ターンアウト(フランス語ではアンドゥオール)が正しく出来ていれば、膝が下を向くことはないはずですから、脚を付け根から外に十分開くというターンアウトの基本動作が、十分出来ていないのかもしれません。
尤もこれは一朝一夕でなおせるものではありませんが。
「くるみ割り人形」では、第2幕の「金平糖の踊り」に眼が行きがちですが、この雪の国のシーンは、派手さはありませんが、しっとりとして捨てがたいものがあります。
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