4.種々の合併症に対する看護
(1)感冒
痰を出す力が弱ってくる筋ジス患者にとって,感冒は肺炎になりやすく油断できないものです.
- 外出から帰ったら,必ずうがいをします.また,のどの痛みがある時はうがい薬で1日数回うがいして重症化を防ぐようにしましょう.
- 保温には十分な配慮が必要で,室温は24〜25℃,湿度は60〜65%に保ち,換気を適当に行います.夏期はクーラーや扇風機で冷え過ぎないように注意しましょう.
- 汗をかいたら体をよく拭き,汚れた衣類やシーツは交換しましょう.
- 風邪かなと思ったら,休養をとり,安静にして,早めに受診しましょう.
- 痰が多くなったら,水分を多くとり,体位ドレナージをします.
図のように丸めたふとんを抱えるようにして腹這いになり,殿部を30°前後に高くした姿勢をとり,背中をお尻から肩の方へ軽くたたきます(図1).
この体位は体力を消耗するので時間は5〜10分間が
適当です.また,嘔気や嘔吐をおこすこともあるので,
食事の前後は避けましょう.
※尚,5章5項に記載されている呼吸訓練の体位排痰法を参考にして下さい.
(2)便秘
筋ジス患者では腹筋力の低下,消化管運動の低下に運動不足や水分の摂取不足も加わり,ややもすれば便秘に傾きがちです.また外出,外泊など環境の変化による精神的ストレスが便秘を助長することもあります.
- 便意のあるなしにかかわらず,毎日食後の決まった時間にすわり,排便習慣を身に付けましょう.
- 食事は規則正しく取りましょう.特に繊維量の多い野菜や海草類をできるだけ多くとります.
- 起床時にコップ1杯の冷水や牛乳を飲むことも効果があります.
- 適当な運動や自分で出来る事は自分でするようにし,なるべく体を動かすようにしましょう.
- 腹部マッサージ(図2)
図2のように,「の」の字を書くように手で軽くマッサージする方法で便通がつくこともあります.
- 4〜5日間排便がない時は医師に相談しましょう.
(3)床ずれ,坐りダコ
同じ姿勢を長く続けると,血液の循環が悪くなり,床ずれや坐りダコが出来やすくなります.一度できると治りにくいので,予防が大切です.予防策としては,
- 皮膚の圧迫を軽くするため,体位の変換を頻回にしましょう.
- 便や尿の汚染を防ぎ、清潔にしましょう.
- 栄養状態を良好に保ちましょう.
- 車椅子では,ロホクッションやフローテーションパットを敷くと,圧迫を和らげます.・床ずれ予防用にエアーマット,無圧マット,ウォーターマット等があります.
(4)口内炎
栄養状態が悪くなったり,口腔内が不潔になったり,ストレスが溜まったりすると,口内炎になりやすくなります.
- 食後は歯磨きやうがいをして口の中を清潔にしましょう.
- バランスよい食事を取りましょう.
- ストレスが溜まらないように,天気の良い日は外へ出かけ,気分転換を図りましょう.
- できてしまったら,早めに専用の軟膏を塗りましょう.
(5)いんきんたむし
- 下着類は吸湿性のあるものを選びましょう.
- 坐っている時や寝んでいる時は,股を開くような姿勢を心がけましょう.
- 毎日下着を替え,蒸しタオルで拭き,ドライヤーなどで充分に乾燥させましょう.
(6)耳垢
入浴後,綿棒で拭き取りましょう.
(7)恥垢
恥垢がたまると尿道炎や膀胱炎など,いろいろな病気を起こしやすくなります.入浴時,自分で洗えない人は,石けんを付けて介護者によく洗ってもらいましょう.
(8)凍傷(しもやけ)
筋ジス患者ではふだんから手足が冷たく,冬期には凍傷にかかりやすくなります.予防としては,保温に注意することが大切です.
- 厚手のくつ下や足カバーを利用しましょう.
- 使い捨てカイロなどを使う場合は,低温やけどに注意しましょう.
- 温浴後,マッサージをすると効果があります.
(東 数穂)