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2001.2.23



というわけで、土日もサボらずに勉強する俺である。

基本的に、俺が更新可能であるときには必ず更新する方針で行こうと思って
いる。
ちなみに、俺が想定している「更新不可能なとき」は、

・「俺の身に何かが起こったとき」
・「俺が宇都宮にいないとき」
・「当直あるいは緊急血管造影当番で呼び出されたとき」

の3つである。(笑)


さて、それはそれとして、今日は「びまん性肺疾患の鑑別の続き」であるな。

昨日、俺は、病変が「どこにあるか」そして「どんな性状か」を正確に把握
する事が、すなわちその病変を正確に把握することに他ならない、という
話をした。


疾患を「鑑別」するということは、つまり、その所見の特徴を把握して、
それを既知の疾患と照らし合わせ、可能性のあるものをリストアップする、と
いう作業に他ならない。
それが1つしかなければそれでよし、1つに絞り切れなければ幾つかの疾患を
可能性の高い順に併記すればいいわけである。

だいたい、昨日挙げたような「部位」や「性状」は、ひとつだけでなく、
いくつか組み合わさっている場合が多く、その組み合わせパターンも
疾患によって決まっていることが多い
のである。

びまん肺の(に限ったことではないのだが)読影は、いわば「究極の
パターン認識」
であると言えよう。そしてその「パターン認識」のための
知識、引き出しを増やすことこそが、放射線科診断医に、そしてこの試験に
求められる「勉強」なのである。


といったところで、今日は、その「各論」と行こう。

まずは小葉中心性病変。これは、小葉の中心にある血管、細気管支、周囲の
リンパ組織、更に周囲の肺胞に病変がある印である、と言う話を昨日したな。
つまり、小葉中心性病変を見たら、こういうところが冒される疾患を想起すれば
いいわけである。

例えば、細気管支に病変がある場合。
例としては・・・
DPB。分岐線(つまりY字型の小領域)+小葉中心性の多発性結節、
 それと肺の過膨脹による全体的な吸収値低下が特徴。
結核と非定型抗酸菌感染症。小葉中心性病変にconsolidation、空洞性病変が
 かぶることがある。あとsatellite noduleな。いかにも「気道散布してる」
 感じの。それを見たら可能性が高いんじゃないかと。
(細)気管支炎。結核以外の感染での場合。これももちろんありだ。
過敏性肺臓炎。これは吸引した抗原が元で引き起こされるアレルギー反応で
 あるから、気道、つまり小葉中心性の病変になる。癒合すると汎小葉性
 病変、というか地図状のすりガラス様変化となる。合わせ技で一本。

珪肺。珪酸を吸引するんで起こる。なもんで、小葉中心性になるんだが、
 これは、進行するとランダムな分布と区別が付かないことがある。
 ランダムな分布と言えば血行性散布、粟粒結核や多発性転移であり、かなり
 やばいので、鑑別を誤るとピンチであるが、そういう場合は、珪肺は上肺野
 (なかでも背側)や肺門部に多く、血行性散布は下肺野に多い
ってのが
 手がかりになるかもだ。血は重力で下に行くのだな。
 あと、珪肺と言えば縦隔リンパ節のegg shel calcification。重要。
好酸球性肉芽腫症。これは小葉中心性の結節+壁の厚い嚢胞。細気管支周囲に
 病変が出現し、進行すると周囲をどんどん破壊して嚢胞になるらしいぞ。
薬剤性肺炎。これはいろいろな型があるんであるが、一応4つに
分けられるらしい(この話はまたあとで)のである。うちひとつが閉塞性
細気管支炎類似の所見を呈することがあるのだ(多分、肺組織の障害部位や
機序が同じなんだと思う)。

アレルギー性肺アスペルギルス症(ABPA)も小葉中心性変化を示す
ことがある。アレルギー反応による気管支壁の損傷なんだそうだが、この疾患は
その他にも(気管支壁のダメージっぽく)mucoid impactionや気管支拡張、
ひどくなるとconsolidationといった多彩な所見を呈したりする。
呼吸細気管支炎関連間質性肺炎(RB-ILD)。喫煙者に時々見られる
病態で、呼吸細気管支〜終末細気管支がターゲット。多発性のすりガラスが
小葉中心性に見えることがあるそうだ。
例えば、リンパ組織に病変がある場合。
例としては・・・
癌性リンパ管症。やっぱこれだろう。他にも、リンパ組織のある小葉間
 隔壁の肥厚、気管支血管束の肥厚も見られる。胸膜直下の病変もある。
 あと、他に癌がある人がかかる病気。(笑)
サルコイドーシス。癌性リンパ管症が出てくれば必ず出てくる鑑別疾患。
LIP(リンパ球性間質性肺炎)。これもリンパ増殖性疾患であるから、
 小葉中心性変化が出てもおかしくない。が、本によると、小葉間隔壁の
 肥厚や、気管支血管束の肥厚、それにしばしば嚢胞を伴うそうである。
 そうそう、LIPはシェーグレン症候群に合併しやすいので覚えとけ。
例えば、周囲の肺胞に病変がある場合。
例としては・・・
・初期の感染性肺炎。まぁこれはいいだろう。上述の結核もこの類だ。

例えば、血管に病変がある場合。
例としては・・・
うっ血性心不全に伴う肺水腫。血管から水がしみ出すわけだ。
 もちろん、小葉間隔壁や気管支血管束の肥厚もきたす。


とまぁ、こんな感じである。

本来ならばもう少し進みたかったんだが、本日はダウン。許せ。


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