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2001.2.26



なんとなく、一日5キロバイトぐらいが、読む方にとっても書く俺にとっても
適正な文章量のような気がしてきたんだがどんなもんか。


そんなわけで、今日はすりガラスの続きで、「間質性肺炎」と名前に付いて
ないけどすりガラスを呈するやつの話である。

まずは好酸球性肺炎。これは慢性好酸球性肺炎(CEP)急性
好酸球性肺炎(AEP)
があって、当然の事ながら経過が違う。
所見としては、昨日述べたように、急性の方は肺水腫に似ているらしく、
小葉間隔壁と気管支血管束の肥厚、胸水、あと末梢優位のすりガラスや
consolidation、網状変化、線状変化、結節なんかがみられる。
それに対して、慢性はあんまし派手でなく、先日話した「photographic negative
of pulmonary edema」、つまり末梢・上肺優位に斑状のconsolidationや
すりガラスが見られるのが特徴である。十分派手だな。

そして、慢性好酸球性肺炎が出てきたら、この疾患も出さなければならない。
「器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎」
これまた長い名前であるが、英名の「Bronchiolitis Obliterans Organizing
Pneumonia」を略して「BOOP(ブープ)」と呼ぶのが一般的である。
俺なんかは、この「BOOP」っていう名前を見ると、ついベティ・ブープ
思い出してしまうんだがどうだ。


Betty Boop


ブプッピドゥ♪

それはさておき、BOOPであるが、この病態、病理学的には「呼吸細気管支、
肺胞管、肺胞腔内にポリープ様肉芽腫が形成され、その遠位に器質化肺炎が
みられる」ものをひっくるめて「BOOP」というんだそうで、つまりは、感染、
膠原病、誤嚥など、原因がどうあれ、上記のような病理組織になったものは
全てBOOPと呼ばれる
わけである。割に大ざっぱだと思った。
CTでは、
胸膜下、または気管支血管に沿って分布するconsolidationやすりガラス
小葉中心性の境界不明瞭な小結節気管支に沿った結節
・病変部位での気管支壁肥厚や気管支拡張
なんてのが特徴である。
でもって、実はこのBOOPの所見は、上記の慢性好酸球性肺炎とかなり似ている
のであり、「臨床的な情報が全く無い状態でBOOPとCEPを鑑別するのは非常に
困難」と言われている。
まぁ何だ、好酸球性肺炎は、肺胞洗浄液内に好酸球が出たり、肺生検で好酸球
浸潤があったりするので、そういうのが分かってれば好酸球性肺炎だと言える
わけだな。
あ、ちなみに、末梢血中の好酸球は、通常は初期に正常、病状が落ち着いて
しばらくして上がってくる
そうだ。これも実際患者さんを目にしたときには
役に立つ知識かも知れない。

次、急性間質性肺炎(AIP)。って、これ「間質性肺炎」なのに昨日の分で
やらなかったな。書き加えておこう。
この疾患は、急激に呼吸不全が生じる原因不明の間質性肺炎で、一昔前までは
Hamman-Rich Syndromeと呼ばれていたやつである。
こいつのCT所見の特徴は「ほぼ全肺に分布する、両側性のすりガラスと
consolidation
」である。
こういう所見があって、かつ、症状の進行が非常に急ならば、疑った方がいい
疾患であろう。
というわけで、あとからまとめて読んだ方は、昨日の分にも同じ事が書いて
あって少々戸惑ったと思うが、実は、昨日の分は次の日に後から追加した分
なのだった。と言い訳しておく。

おっと言い忘れた。いわゆるARDS(急性呼吸促迫症候群)の所見も、AIPと
同じようになる。経過も似ている。

っていうか、病理学的にはどっちも同じDAD(びまん性肺胞領域障害)だしな。

次、肺胞蛋白症。これは初日にさんざん説明したな。汎小葉性の
すりガラス+マスクメロン
。crazy-paving appearanceだ。
あのとき言い忘れたが、「crazy-paving」とは、直訳すると「キチ○イ舗装」
だそうだ。キ○ガイは放送禁止用語なので一応伏せ字。
確かに、あんな道路があったらキレるな。

次。過敏性肺臓炎。これは小葉中心性のところで話をしたような気が
するが、これは細気管支中心の変化であり、それぞれ単独なら小葉中心性、
癒合すれば「地図状」と呼ばれる汎小葉性のすりガラスを呈するわけだ。

次、薬剤性肺炎。これは前にも出てきたな。
確か、2月23日あたりに、「型が4つに分けられる」みたいなことを書いた
ような気がするんだが、それをもうちょい詳しく見てみよう。
4つの型のうちひとつは、その23日に書いた「閉塞性細気管支炎型」
これはつまり細気管支の炎症なわけで、ということは、気管支血管束の肥厚や
(細気管支のある)小葉中心性変化を示すだろう、というのがなんとなく
想像が付く。
2つ目は「慢性肺炎/肺線維症型」この型が一番多いらしい。
起こすのは主に「cytotoxicな化学療法剤」と言うから、抗ガン剤や抗生物質
あたりなんだろうな、きっと。
この型は、CTでは、
両側対称の、末梢を中心とした、特に下肺胸膜下優位の蜂窩肺や
 網状変化、気管支拡張

という所見を特徴とする他、DIPやBOOPに類似した胸膜下中心のすりガラスや
consolidationを呈することもあるらしい。
3つ目は「過敏性肺疾患型」。過敏性肺臓炎や好酸球性肺炎に似たパターンを
呈するやつだ。特徴としては胸膜直下のすりガラスやconsolidation。
最後に「ARDSを含む非心原性肺水腫型」。これは「両側、特に背側の
強いconsolidationとすりガラス」が特徴である。
と、4つ並べると、「もしかして、薬剤性肺炎って何でもあり?」とか疑問を
感じてしまうが、多分本当に何でもありなんじゃないかと俺は思って
いる。実に困ったもんだ。

次は「イヤな感染症」関係。
まずカリニ。これは、CT上「肺門から肺の内層優位、上葉優位地図状・
モザイク状
に分布するすりガラスやconsolidation 」を呈するのが特徴。
他にも、小葉間隔壁肥厚や小葉中心性変化、嚢胞や空洞が見られることもある。

そして、もうひとつ、これとの鑑別にどうしても挙がらざるを得ないのが
サイトメガロ。こいつはかなりカリニ肺炎に似た所見を呈してくる上に、大体
カリニ肺炎にかかる人はCMV肺炎にもかかる可能性が高い、つまり両者は
合併しやすい
のである。
結果的に、この両者を鑑別するのは至難の業であるような気がひしひしとする
俺なのである。
ただ、CMVの方が、カリニよりも網状変化や小葉中心性変化が目立つらしい
ので、そういう部分は鑑別に役立つとは思われる。

お次はマイコプラズマ。これは「気管支壁の肥厚、小葉中心性変化、末梢
優位のすりガラスやconsolidation」
が特徴。

さっきから同じようなもんばっかり書いてるような気がして気が滅入る。

最後にこれ行こう。肺胞出血。これは、急性期は「肺中心部領域(内層)の
すりガラスとconsolidation、小葉中心性の境界不明瞭な結節」
が特徴で
あり、胸膜下の変化が弱い
慢性期になってくると結節や網状変化になるらしい。
あと、病歴に血痰や喀血


すりガラスはここまで。明日はようやくconsolidationである。

でも、考えてみれば、今日の話で結構たくさん「すりガラスやconsolidation 」
ってのがあったわけで、ということは今日の話とかなりダブる可能性が。(汗)


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