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2001.2.25



まず、ちょいと追加。
一昨日やった小葉中心性変化のところに、2つほど、疾患を追加しておくので
ある。

まず薬剤性肺炎。これはいろいろな型があるんであるが、一応4つに
分けられるらしい(この話はまたあとで)のである。うちひとつが閉塞性
細気管支炎類似の所見を呈することがあるのだ(多分、肺組織の障害部位や
機序が同じなんだと思う)。

もひとつ、アレルギー性肺アスペルギルス症も小葉中心性変化を示す
ことがある。アレルギー反応による気管支壁の損傷なんだそうだが、この
疾患は、その他にも(気管支壁のダメージっぽく)mucoid impactionや気管支
拡張、ひどくなるとconsolidationといった多彩な所見を呈したりする。

というわけで、一昨日の知識に追加しておいていただきたいわけだが、一応、
このサイトを後から見る人のために、そして俺自身が後から見直すときの
ために(笑)、一昨日の分にも書き加えておくこととするのである。


さて。
昨日言った通り、今日はすりガラス様変化である。
本当はconsolidationもやろうと思ったんであるが、ぜってー無理だ
いうことが判明したんで、次回回しである。

すりガラス様変化は「気管支血管束が透見できる」ぐらいの吸収値上昇、
consolidationは「透見できないほどの」吸収値上昇である、ということは
先日述べたとおりである。

で、consolidationが「肺胞が全部空気以外の構造物で埋まった状態」である
ことも先日述べたとおりだが、もうひとつの、「すりガラスは肺胞が少し
空気以外の構造物で埋まった状態」というのは、実は不十分な説明
あった。
まぁ、専門医試験を受けようとする皆様にこんな事を言っても、釈迦に説法で
しかないのだが、俺が忘れないために、一応書いておく。
すりガラス様に見える病変は、「肺胞が少し埋まった」状態の他に「肺胞隔壁の
肥厚」、つまり細胞間質の変化も含まれるのだ。
と言うことはどういうことかというと、

 ・すりガラスは、間質に病変がある場合と、肺胞に軽度の病変がある場合の
  両方見られる

ということではないか。
つまりそれは、「すりガラスの鑑別疾患はたくさんある」ということでは
ないか。困ったもんだ。

まぁ、困ってばかりもいられないので、さくさくと鑑別を挙げることとしよう。


まずすりガラス。この代表格は何と言っても間質性肺炎。ただ、一口に
「間質性肺炎」と言ってもいささか範囲が広いわけで、ここではそれらを
駆け足でズババババーンと説明していくのである。

通常型間質性肺炎(UIP)。これはどっちかってーと「蜂窩肺が見られる
疾患」としての方が有名かも知れぬ。この疾患の特徴は下肺背側の胸膜下に
分布する網状変化と蜂窩肺
であるからだ。
また、蜂窩肺に至る線維化の進行度が肺野内でバラバラであり、その結果
すりガラスや小葉間隔壁の肥厚、気管支拡張、蜂窩肺がごちゃ混ぜに
見られる
のも特徴である。

非特異型間質性肺炎(NSIP)。最初変換したときに「人食い型」とか
出てきやがって少々イヤになったが、非特異型間質性肺炎である。
さっきの通常型と何が違うかというと、こっちは肺内で比較的進行度が
揃っており、通常型のように「様々な所見が入り乱れる」ってことがない。
そして、更に重要なことが、「蜂窩肺はないか、あっても目立たない」
ということである。
こいつの特徴をまとめれば、「中下肺主体のすりガラスとconsolidation、
気管支拡張を認めるが蜂窩肺は目立たない」
となる。
ただ、病理的にNSIPであっても蜂窩肺がある場合も実際にはあるらしく、
ある研究では、画像によるNSIPの正診率はわずか9%だったとか。マジかい。

剥離性間質性肺炎(DIP)。何がどう剥離してるんだか俺にはよく
分かんないんだが、まぁ、病理組織学的な命名らしいな。
で、この、病理学的にDIPと呼ばれる肺病変は、原因不明だったり(これを
「特発性間質性肺炎(IIP)」と呼ぶ)、膠原病だったり、薬剤性だったり、
アスベストーシスだったりするわけで、原因としてはかなり多彩であると
言わざるを得ない。
この病変のCTの特徴は「下肺背側胸膜下の斑状すりガラス、ただし
蜂窩肺や気管支拡張などの構造改変は乏しい」
ことである。覚えておこう。

リンパ球性間質性肺炎(LIP)。この名前は何度か出たな。小葉中心性
変化や気管支血管束の肥厚を呈する疾患である。すりガラスも呈すわけだな。

呼吸細気管支炎関連間質性肺炎(RB-ILD)。長ぇ名前だな。
これは、呼吸細気管支、つまり、肺胞っぽい壁をした呼吸もできる細気管支
から、終末細気管支にかけての炎症性変化である。
喫煙者にたまたま見られるんだそうで、喫煙歴がもしかしたら重要かもだ。
多発性に認められるすりガラス、小葉中心性に見えることもある
ってのがCT上の特色。っていうかまた小葉中心性かい。23日分に書いて
おかなきゃな。

急性間質性肺炎(AIP)。この疾患は、急激に呼吸不全が生じる、
原因不明の間質性肺炎で、一昔前まではHamman-Rich Syndromeと呼ばれていた
やつである。
こいつのCT所見の特徴は「ほぼ全肺に分布する、両側性のすりガラスと
consolidation
」である。
こういう所見があって、かつ、症状の進行が非常に急ならば、疑った方がいい
疾患であろう。


つーわけで、まさかすりガラスだけでこんなに続くとは思わなかったわけで
あり、なおかつまだまだ説明してない疾患がたっぷりあるのである。
誠にもって、すりガラス恐るべしである。

しかたがないので、明日はすりガラスの続きである。consolidationはさらに
その次に回す。ごめん。


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