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2001.3.9



昨日書いたトクトクのサーバ停止の件であるが、いろいろ考えた結果、ミラー
サイト、つまり「ここと全く同じ内容のサイト」をもうひとつ作ることにした
のである。
でもって、トクトクのサーバが止まっている間は、一次的にミラーサイトだけを
更新し、そちらを見ていただくようにする予定なのである。

そんなことをするなら、とっとと引っ越しちゃえばいいのに、と思われる方も
いらっしゃるとは思うが、実は、ちょいと事情があって、そうもいかないので
ある。
というのは、ここだけの話、このサイトをYahoo!Japanに登録してもらおうと
目論んでいるのである
(笑)。
というか、もう登録願いを出してしまったのである。
当然、ここのURLで登録するよう届け出たので、ここを動くことは出来ないのだ。

というわけで、明日にでも、ミラーサイトを構築することにするのである。
どーせそんなの5分で終わる。


さて。
今日は、小さな肺癌のお話である。

ここ10年ほどで、肺癌、特に小さな肺癌に関する診断は、大きく様変わりを
遂げてきた。
それはもちろん、CTが進歩したからである。
ヘリカルCTの登場により、臨床現場では「ハイレゾ」だの「シンスライス」
だの呼ばれている高分解能画像を、高速に撮像することが可能となったので
ある。

で、このような時代であるから、当然、単純写真がメインであった時代と比較し、
小さい肺癌がバシバシ見つかるようになってきているのである。
そして、そんな時代に即した、「直径2cm以下の小型腺癌のための分類」を、
本日はメインのコンテンツとしてご紹介しようと思うのである。
他の組織型の癌、また癌以外の腫瘍に関してはまた後でやるので心配するな。


直径2cm以下の小型腺癌のための分類。
野口先生という先生が提唱したんで、一般に「野口分類」と呼ばれている
分類である。
んだが、実はこいつが、分かりやすい(というか画像を見て分けやすい)上に
予後ときっちり相関するという、非常にユースフルなシロモノであるため、臨床の
先生方からは非常にありがたがられているわけである。
当然、画像が元になる分類であるから、我々放射線科の医者も、頭の中にしっかり
たたき込んでおく必要があるのである。

野口分類のキモは、まずこの分類が、肺胞上皮を置換しながら、つまり肺胞壁に
這って増殖する「置換型癌」と、そうでない「非置換型癌」の2つに分けている
点、そして、その2つがさらに3つずつに分かれている(つまり全部で6つだ)
点である。
これを頭に入れておけば、この分類の理解がすごく楽になる。

といった辺りを押さえて、その6つの分類を見てみるのである。
まず野口A型。これは「限局性細気管支肺胞上皮癌」。画像所見で
言うと
「孤立性で肺胞置換性増殖を示し、肺胞隔壁の肥厚は小さく、線維化巣を
 持たない(スリガラス陰影のみ)」
という感じになる。

次いで野口B型。これは「巣状の肺胞構造虚脱を伴う限局性細気管支
肺胞上皮癌」
。画像所見で言うと
「A型同様だが、内部に肺胞虚脱による線維化巣が存在する。この
 線維化巣の存在により、胸膜陥入像がしばしば観察される」
という感じになる。

次は野口C型。これは「巣状の活動性線維芽細胞増殖を伴う限局性
細気管支肺胞上皮癌」
。Bと似てるけど微妙に違うな。
画像所見で言うと、
「基本的には肺胞置換性増殖を示すが、内部に大きな核を持つ活性化
 線維芽細胞と小血管の増殖
があり、線維化巣内部の腫瘍細胞の核が
 肺胞置換性増殖を示す辺縁のそれに比べて大きく異型が強い
。通常、
 はっきりした胸膜陥入がある」
って感じになる。
Cが小型腺癌の60%を占める最多の型であることは覚えておこう。

ここからは非肺胞置換性の癌。この中には、肺胞内にモコモコ増える充填型
とか、そもそも肺胞なんか気にせずに男らしく周囲に進展する破壊型
なんかがここに入る。

つーわけで、野口D型。これは「低分化型腺癌」であって、
画像的には、
「充実性増殖を示し、時として大細胞癌との区別が困難」なんだそうで
ある。

次の野口E型「腺管腺癌」「気管支腺細胞に由来し、
管状あるいは篩板様構造をとることもある」
のだそうだ。むしろ病理学的な
話なのかな。

最後の野口F型であるが、これは「圧排性及び破壊性に増殖する
乳頭型腺癌」
。つまりは「肺胞置換性増殖の形態をとらず、膨張性あるいは
破壊性増殖を示す」んである。


と、ざっと分類を出したわけであるが、実は、この分類で鍵となるのは、
「B型とC型、あるいはA型とC型の境目」である。
というのは、A型とB型は予後がいいのである。どれぐらい予後がいいか
と言うと、5年生存率が100%というから、本当に圧倒的にいいのである。
ちなみに、C型が75%、D型が52%。EとFは症例が少ないんで生存曲線が
出てないんだが、何となく悪そうではある。

というわけで、A型とB型は100%助かるという意識を持って、そこを
しっかり区別するような肺癌の読影をしていきたい、と夕日に向かって誓う今日
この頃なのであった。


ごめん、やっぱ明日も休日返上でやるわ。(^^;


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