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2001.3.28



というわけで、前回は、謎の「FEGNOMASHIC」の話であった。

あんまし引っ張り続けるのも何なので、とっととネタバラシしてしまうと、
この「FEGNOMASHIC」とは、「記憶術を使う人」という意味の単語であると共に、
「骨内の良性嚢胞性病変の鑑別疾患の頭文字の語呂合わせ」でも
あるのである。

というわけで、胸部に続く新ジャンル、それは、専門の先生には申し訳ないが
初学者にはどう考えても罠としか思えないほど取っつきにくいジャンル、
骨・軟部・関節である。
ここを何とか1ヶ月で終わってみたい。大丈夫かしら。(^^;

さて、本来ならば、例の「FEGNOMASHIC」の解説と行きたいところであるが、
よくよく考えてみれば、この早覚えが良性嚢胞性病変の鑑別疾患である
以上、なにか写真を見せられて「はい、これは何ですか」と聞かれたときに、
そのFEGNOMASHICに行き着く前に、それが「良性」なのか否か(つまり悪性
なのか)を見極めねばならないのである。
そして、それが良性であるとした時点で初めて、FEGNOMASHICの疾患をひとつ
ひとつ潰していけばいいわけである。

つーわけで、骨軟部関節の第1回目は、「嚢胞性(溶骨性)骨腫瘍の良悪性の
鑑別」
である。


俺が最も信頼している骨軟部の教科書によると(FEGNOMASHICもその教科書からの
引用である)、病変が良性か悪性かを判断するのに最も有用な視標、それは、

移行帯

である。

というと、では移行帯とは何ぞや、という話になるのだが、移行帯とはつまり、
「病変と正常部分の境界領域」である。

でもって、この「移行帯」が、境界明瞭で先の細いペンでなぞれるような場合、
これを「狭い移行帯」という。また、不明瞭で、ペンでなぞれない場合、これを
「広い移行帯」という。

そして、移行帯が狭いのは良性病変、移行帯が広いのは「侵襲性病変」
ある。
「侵襲性病変」というのもまた分からん概念だが、つまりは、移行帯が広いもの
の中には、侵襲性の骨髄炎や好酸球性肉芽腫症など、良性病変のものがあるんで、
「悪性」と言い切れないわけである。

というわけで、完璧に良悪性を鑑別出来るものではないとはいえ、移行帯が狭い
ものは良性であるのは確かだし、この移行帯自体もかなり見やすく分かりやすい
指標なので、これを使っていきたいわけである。

ちなみに、多数の小さな点状の嚢胞性領域からなる病変、これを「浸透性病変」
と呼ぶわけだが、これも「広い移行帯」の仲間である。多発性骨髄腫や原発性骨
悪性リンパ腫、Ewing肉腫なんかがこれ。ただし上述の骨髄炎や好酸球性肉芽腫
でもこういう風になるので要注意だね。


それでは本日の最後に、この「移行帯による良悪性の鑑別」に際し、やっては
いけないこと
を2つ書いて、今日は短いが終わりにしようと思う。

・その1 造骨性病変に適用するべからず
造骨性病変は、大体狭い移行帯を有する。たとえそれが悪性であろうとも。
というわけで、造骨性病変だったら、こいつは適用できないのだ。

・その2 MRIに適用するべからず
これは単純写真限定のテクニック。MRIだと、たいがい狭い移行帯に見えて
しまうのである。


ということで、本日は終了である。
これで良悪性の鑑別がつくように(正確には良性病変が確実に分かるように)
なったわけなので、「これは良性だ。じゃあ何か」という段階に進もう。
次回はいよいよ引っ張りに引っ張ったFEGNOMASHIC。お楽しみに。


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