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2001.4.16



今日は、内ヘルニアの話である。(えーーーーーーーーーーーっ!?)


ま、待て! 俺の話を聞いてくれ!

今日もまた、最後の最後にMRIの難しいやつを引いてしまって、その読影に結構
時間と精神力を費やしてしまったんである。
で、ルーチンワーク終了後に勉強、ってことにしてるので、かなりの遅い時間
なのである。

正直、サボってしまいたい気もしないでもないんだが、とりあえずここで根性は
見せておきたいので、今日はちょいと脱線して、別件で調べた内ヘルニアの話を
流用して、それを本日分とするのである。(^^;

まぁ、流用企画にしては勉強になるし、腹部の中でも、下手したら普段あまり
お目にかからないところなので、いいんじゃないかと思ってな。


つーわけで、さっそく内ヘルニアだが、ご存じの通り、これは「臓器が正常
または異常な開口部から腹膜腔内へ突出する状態」
である。

内ヘルニアの大多数は、腸管の回転や腹膜付着の先天的異常の結果生じる。
また、もひとつ重要なのが、腹部の手術または外傷による腸間膜・腹膜の
後天的欠損
でも起こり得ると言うこと。欠損部位がヘルニア門になるわけな。
ちなみに、後腹膜の内ヘルニアは成人に、経腸間膜性のヘルニアは小児に
多い
。覚えておくべし。


さて、この内ヘルニアにはいろんな種類があるわけである。その中で最も多いのが
十二指腸傍ヘルニアというやつで、これひとつで内ヘルニアの過半数を
占めるシロモノである。

といっても、十二指腸傍ヘルニアには「左」と「右」がある
十二指腸左側の「十二指腸傍陥凹」、発見者の名を取って別名「Landzert窩」と
呼ばれる穴に小腸が落ち込むのが左十二指腸傍ヘルニア、同右側の、SMAの後側に
ある「腸間膜壁側窩」、またの名を「Waldeyer窩」に十二指腸ごと小腸が入るのが
右傍十二指腸ヘルニアである。

その構造上、このヘルニアが出る場所が決まっている。十二指腸の左または右に
拡張した腸管
があれば、やっぱ疑わざるを得まい。また、左の場合はIMV・
IMAのすぐ内側
が、右の場合はSMAのすぐ後がヘルニア門となるって
のは覚えておいた方がいいだろう。これは穴と血管の解剖学的位置関係から
自ずと決まってくるのである。

あと、今見ている教科書には、左十二指腸傍ヘルニアのCT像が載ってるんだが、
どうも膵と腎の間とか胃と膵の間とか、そーいった妙なところに
腸管がはまり込んで見えるようである。

おっと、大事なことを忘れておった。左は右の3倍多い。つまり十二指腸傍
ヘルニアの75%が左、ってこったな。


次に多いのが盲腸周囲ヘルニア。これが全体の13%っつったか。
読んで字の如く、盲腸や虫垂周囲の腸間膜に穴があいたり、またはここんとこに
ある腹膜陥凹に小腸(多くは回腸)が入り込む。入り込んだ腸管は右傍結腸溝を
占拠しちゃうわけだ。


次が8%のWinslow孔ヘルニア。十二指腸の頭側、肝の奥にあるWinslow孔
という穴。ここは腹膜腔と網嚢をつなぐ穴なんだが、そこに腸管が入るわけだ。
典型的には、限局性のガスを含んだ腸管が、胃の内、後方の高位腹部に
みられる
。小腸が60〜70%。


次は経腸間膜ヘルニア。腸間膜のどこかに穴があく。小児の先天性の
内ヘルニアの中で一番多い。


次がS状結腸間ヘルニア。S字の上と下のカーブ、それとそこに張る
腸間膜との間に出来る陥凹(S状結腸間陥凹)に腸がはまるタイプ、どちらかの
カーブに張る腸間膜に穴があき、袋状となった部分に腸がはまるタイプ、そして
両方のカーブの腸間膜に穴があき、小腸が左下腹部に脱出するタイプ。まぁ、
画像でこいつらを鑑別するのはなかなかに大変ではある。


最後に、上記の腸間膜以外の所から脱出する内ヘルニアもある。例えば骨盤部、
子宮広間膜に穴があいて、そこから出るタイプ。こういうのもあるのだ。
珍しいらしいけど。


というわけで、普通にやってるとなかなか勉強できない内ヘルニアの話であった。
明日は骨腫瘍に戻‥‥れるといいなぁ。(^^;


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