フィッシュマンズ・ファンの間では「パクリ」と言われ、評判が非常に悪かったボノボ。しかし、昨年11月のTHE
LONG SEASON REVUEツアーにボーカルの蔡忠浩が大抜擢され、「フィッシュマンズ公認のコピーバンド」に昇格(?)しました。確かにあのライブでの蔡君の頑張りはなかなか良かった。というわけで、抵抗感も薄れてきた36歳フィッシュマンズ・ファンの私もついに生ボノボを観に行ってまいりました。
移転後のジャンクボックスには初めて行きましたが、移転するたびに狭くなってませんかね、ここ。場内後方は一段高く段差がついていて、後ろでもステージは見やすいけれど、あまりライブハウスとして良い設計とは言えないんじゃないかなぁ?
観客は混雑でもなく、ガラガラでもなく、程良い入り。100人くらいだったでしょうか?
登場したボノボのメンバーの第一印象は「若い」(笑)。Vo, G, B, Dr, Perのメンバー5人に加えて、なんとキーボードで元フィッシュマンズのHAKASEが参加。HAKASEだけ他のメンバーより一回り年上なんじゃないだろうか?
蔡君のボーカルはさすがに本家公認だけあって安定感があるけれど、演奏陣はまだまだ未熟。特にベースの女の子のプレイが弱いなぁ。グルーヴが生まれる寸前で音が切れてしまう感じで、MIDI用語で言えばゲート・タイムが短い。初期の曲らしいカリプソっぽいリズムの曲では気にならないけど、フィッシュマンズ的なダブ・レゲエ系の曲では、リズム隊の弱さがモロにでてしまう。蔡君のレベルに他のメンバーが付いていっていない感じがしました。
あと、ドラムやギターの男の子の屈託のない笑顔を見ていると、良くも悪くもフィッシュマンズのフォロワーとして注目されているという立場の重みを理解しているのか、心配になってしまった。
世の中ではビートルズやツェッペリンの完コピ・バンドというのは、ジャンルとして認知されているし、ジェームス・ブラウンを愛するあまりに、JBの演奏スタイルを完全に我が物にしてしまったオーサカ=モノレールのようなバンドもいる。そういう人達はオリジナルへの愛情を公言した上で、自らの音楽を作り上げているわけだ。ボノボも明らかにフィッシュマンズの多大な影響を受けているのに、その辺をうやむやにしている感じなのが、30代のオヤジの神経を逆撫でするのだ。
もちろん、Polarisもフィッシュマンズの延長線上の音楽を作っているんだけど、あれは元メンバーの柏原譲本人が演っているんだから、当たり前の結果なんだけど、ボノボはなぁ・・・と思ったら、元メンバーのHAKASEがいるじゃん!!
HAKASEがいるんだったら、別にボノボがフィッシュマンズに似ていても問題ないのか、実は(笑)。
演奏面では不満は残るものの、蔡君のソング・ライティングの実力は相当なもの。特に新作の“beautiful”は素晴らしい楽曲だ。詩もメロディーもレベルは非常に高い。
あと、前作の“THANK YOU FOR THE
MUSIC”。もう、タイトルだけで最高。“あの言葉、あの光”もいい曲だ。
本編終了後、アンコールを求める観客から“THANK
YOU FOR THE MUSIC”の合唱が発生しましたよ。ステージに戻ってきた蔡君は観客に向かって「君らテンポ速すぎ」と一言(笑)。
結局アンコールは2回で、30分以上演奏は続きました。
THE LONG SEASON REVUEで観た時から「蔡君って中国人?」というのが疑問だったのですが、今回のライブで判明しました。
「新潟に来たのは高校生以来」と話す蔡君に、メンバーが「高校生が何しに来たの?」とツッこんで、「修学旅行で船に乗るために来た」と白状。新潟から出航する船と言えば、将軍様のあの国へ行く貨客船ですよ。「荷物に20万円くらい隠して親戚に持っていった」と話した蔡君は「もしかしてみんな引いてる?」と場内の空気を察した模様。新潟ではこの話題はシャレにならんのですよ・・・。
蔡君も国籍の関係で子供の頃から色々と苦労してきたんだろうなぁ。そこから生まれるブルースが、あの素晴らしい楽曲を生んでいるんでしょうね。納得。