2005年11月13日(土)
シュタルバウム:アレクサンドル・ソモフ、
その妻:スヴェトラーナ・ティグレヴァ
マーシャ:イリーナ・ニーナ・カプツオーヴァ、
フリッツ:ユリヤ・チチェヴァ、
ドロッセルマイヤー:アレクセイ・ロパレーヴィチ 、
くるみわり人形:アンナ・チェスノコヴァ、
王子(くるみわり人形):ユーリー・ヤン・ゴドフスキー、
ネズミの王様:ゲオルギー・ゲラスキン、
アルルカン:セルゲイ・ドレンスキー、
コロンビーナ:ジュ・ユン・ベ、
悪魔:アンナ・ナハペトヴァ、
悪魔:アンドレイ・エヴドキモフ、
スペインの人形:アナスタシーア・ヤツェンコ、アンドレイ・ボロティン、
インドの人形:イリーナ・ズィブロヴァ、ティモフェイ・ラヴレニューク、
中国の人形:スヴェトラーナ・パヴロヴァ、岩田守弘
ロシアの人形:アンナ・レベツカヤ、アレクサンドル・プシェニツィン
フランスの人形:スヴェトラーナ・グネドヴァ、アレクサンドル・ヴォイチューク
指揮:アレクサンドル・コプィロフ
演出:ユーリー・グリゴローヴィチ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
原作:E.T.A.ホフマン
このバレエの初演は1892年だが、ボリショイ劇場ではじめて上演されたのは意外にも遅く、1919年。ロシア革命、内戦のただなかのこと。どういう経緯でこの時になったのか興味深い。それ以来、566回目の公演。
ボリショイは「くるみ割り」後発劇場だが、現在の振付けとなってからの歴史は長い。1966年、マクシーモヴァをイメージとしてグリゴローヴィチによって作られたもの。そしてこの日の公演で350回目。
「この役にはバレエが自然にうまく、そして少女らしいあどけないかわいらしさをもっているバレリーナが欲しい。」と前に書いたが、それにぴったりなのがカプツォーヴァ。「白鳥」や「ジゼル」、「ドンキ」などのアクの強い個性が必要とされるバレエの主役には少し弱すぎるところがあるけれど、「アニュータ」や「くるみ」など、はじめから終わりまで「優しいお姉さん」が必要とされる役には理想的なバレリーナ。子供の間に入って踊っても溶け込むし、大きなジャンプ、速い回転を見せる場面では、いつものかわいい笑顔を少し引き締めてしっかりと決める。
五年半前に見た時と、半数くらいは同じメンバー。つまりプログラムに名前が載るソリスト級の半数は若い踊り手で、順調に世代交代が進んでいる。この日の公演で特に記憶に残るような新人はいなかったが、ロシアの踊りや花のワルツで普通に客席は盛り上がっていた。もちろん岩田守弘の中国の踊りの後にはひときわ大きな拍手があったし、カプツォーヴァのソロでは終わったあとも舞台の袖から何回かお客に呼び出されるほどであった。
元々の演出では第2幕のはじめの方で王子がねずみの王様を刺し殺す場面などせり上がり装置が効果的に使われているが、新館には(たぶん)それがないために幕の後ろに消えるという小さな演出の変更がいくつかあった。でも場所にもメンバーにも違和感は全然なく、これからもまだ暫くは「ボリショイのくるみ」はグリゴローヴィチ版で歴史が積み重ねられて行くに十分なほど演出は古びていないし、また安心でもある。
オーケストラも立派な演奏。大劇場では指揮者の登場が暗い中よくわからずに、拍手もなくざわざわした中はじまったものだけど、今はオケのメンバーがサクラとして拍手をはじめ、それが会場に広がっていく。そのやり方に指揮者コプィロフは馴染めないらしく、割と大きな声で「ニ・ナーダ(必要なし)!」と団員をいさめていたのが面白かった。
今回の席は一階一列目の左端。1250ルーブル(約5000円)。
(2005年11月26日)
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