ル・ポンドシエル　Le pont de ciel

ル・ポンドシエル(ギィ・マルタン料理週間)

住所：大阪市中央区北浜東4-33 大阪大林ビル　電話06-6947-0888
営業時間:11:30～14:30　17:30～22:00(ラストオーダー21:00)年中無休
京阪天満橋　地下鉄谷町線天満橋　14号階段上る。　大林ビル30階。

2003年2月14日

この時の個別評価は＜１０，４，４,５＝１８,５＞
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パリの歴史ある３つ星レストラン「グラン・ヴェフール」のシェフ、ギ・マルタンが料理フェアをするというので行ってきました。

たとえシェフが来ても厨房は普段と違うし、スタッフも別。だからサイモン・ラトルが来日してN響を振るようなものなのかなぁ。
材料もある程度フランスからもってくれば、ストラディとかガルネリなんかの楽器ももってN響に貸与するようなものなのかなぁ。
指揮者は自分で音を出さないけれど、料理の場合、シェフがレシピや調理方法を指示するだけなのと、自ら厨房で陣頭指揮をとる場合で違うし、後者ならほとんど「引越し公演」（＝ラトル＋ベルリンフィルが日本のホールで演奏）と同じになるのでは、などなどいろいろ考えましたが結果はいかに。

食べたもの

前菜1◎帆立貝とエシャロットのヴィネグレットとグラニテ　青りんごの香り豊かに

前菜2◎鴨のフォアグラのテリーヌにトリュフとハーブの香り　ジロール茸のエミュルション

魚料理◎オマール海老のミント風味ヨーグルトソース

肉料理◎とっておきの鳩のロースト

チーズ◎ブリーチーズとトリュフ

デザート1◎洋梨のオレンジ風味　りんごのコンポートとかりんのサバイヨン

デザート2◎アルデーシュ風アルレット

小菓子◎いろいろ

飲んだもの
Paul Bara/Bouzy/Champagne

メモ

このレストランはパリのグラン・ヴェフールと提携しており、ギ・マルタンのレシピをとりいれたメニューも用意しているらしいが、今回はマルタンの料理フェアだから全く別物と考えたほうがよいかもしれない。
マルタンは単身来日したのではなく、スタッフを他に4人連れてきており、材料も「ほとんど」フランスから取り寄せたとのこと。だから上の問いにたいしては、「引越し公演」が答えになる。フロアは通常のメンバーに加えて、系列店からも呼び寄せており、ソムリエの数がとても多く充実していた。
メニューは２つ。デジュネ（真鯛のエスペレットソースとフヌイユのサラダ、菊芋のデクリネにいちょう蟹　小海老を添えて、鴨のロティにグリエした落花生のパフューム、薔薇の香るマカロンとジュレに洋梨のソルベ）8000円と今回食べた「グラン・ムニュ」18000円。
料理は前菜1を除いて驚きの連続。料理名や見た目ではふつうだけど、食べてみると世界の頂点の凄さがわかる。
例えばオマールのミントソース。主材料の質や調理具合はいうまでもなく私たち素人が食べるには十分すぎるほど「完璧」。ヨーグルトソースはカレーとかのエスニックな面白さを取り入れたのかと思いきや、胡麻がはいっていることで（といっても5つぶくらい）がらっと味の世界が変わる。変わるというかひっくりかえる。ヨーグルト＋マンゴーのトロピカルなものから、水墨画の世界へ。でもオマールが接点となっているからかこの「革命的変化」にもかかわらず「あちらの世界」についた時に何の違和感もない。
例えば鳩のロティ。とにかく焼き具合が抜群。2分の1羽だったのが、ちょっと不満だったが・・。足の部分がカリっとした皮とほんのちょっぴりのお肉なのにちゃんとジューシィ。で、本体の胸肉は歯ざわり、舌への応え具合、まろいまろい味がする。ペリグー・ソース、最初、お味見したときはショッパイかな・・と心配したが、胸肉に絡めて食べると絶品というぐらい、ちょうどいい感じになる。ただ、お皿が十分温まっていないらしく、食べている途中で粘度が高くなり膜が張ってくる。ゆっくり味わって食べていたいのにソースの具合で急がされる感じ。お皿にも気を使っていただかなければ。でも。とにかくお肉は絶品でもっと食べたい！！
鴨のフォアグラのテリーヌ。まずは付けあわせから。イタリアン・パセリとセルフィーユのピューレの中にジロール茸が少し、その上にコンソメのジュレそしててっぺんにはジロール茸のムース。小さなエスプレッソの器のようなものの中にそれだけのものが詰まっている。ジロール茸のクリーミィなお味がコンソメのジュレで口の中のこってりした感じを一掃した後にやってくるのが、すっきりと爽やかな香りながらも濃厚なにおいがするピューレ。その香りがきついかなと思ったところにジロール茸がころりとした歯ざわりで心地好い。お皿の前方にはジロール茸のエミュルション。ソースはイタリアン・パセリとセルフィーユ。ジロール茸にくっつけて食べたら、先のムースとはまた違った感じでジロール茸が主人公になるという設定。でもとっても凄いのは、やっぱりテリーヌ。テリーヌのこってりした舌触りと濃厚な感触にトリュフのコリっとした口当たりと香り。けっこうな量のトリュフにびっくり。香りをくんくん嗅ぎながら味わって口の中でもぞもぞさせる。その後にやってくるのが、イタリアン・パセリとセルフィーユの湯がいたもの。結構シャープな組み合わせ。それがフォアグラの後味とトリュフの香りを消さないのが不思議。贅沢な一品だった。
チーズはブリー・ド・モー。下から3分の1くらいのところで切って生トリュフをはさんである。そしてそば粉を混ぜたビスケットを突き立ててある。それでチーズを味わってね。という感じ。でもチーズは熟成がちぃと足りない。あれはもっとトロっとしているほうが美味しいな。それとも冷蔵庫から出していなかったのか・・・。今回のコースでの唯一の不満がお皿の温度への気配り。そしてこのチーズ。ソースは美味しいのだがデザートでも固かった。
お皿は四角のグラス製。対角線上に洋梨をブラッド・オレンジで煮込んであるものと、同じ洋梨の芯の部分をくりぬいてお米をミルクで煮込んだちょっとライス・ミールチックなものが入っている。その上はカスタードクリームをクレープ風に焼いてあったかいうちにクシャクシャと丸めて飾っている。洋梨の歯ざわりと甘みを損なわずにオレンジに煮込まれているのには脱帽。別の対角線上はりんご。青りんごのコンポートを薄く切って器にしてその中に果林のサヴァイヨンがたっぷり。その上にシナモンの粉がかかっている。相手方はやっぱりりんごのコンポートに包まれたマンゴー。このお味はお手の物という感じ。ソースはブラッド・オレンジ、果林にジンジャーを加え、アクセントにしたもの。ちぃと飴化しているくらいにソースが固かった。しかし品のいい美味しい一品。
最後のデザートはアルデーシュ風アルレット。チョコとマロンがテーマ。とてもとても何層にもなった小さな三角のパイにまずは驚く。その下にはマロンクリーム。品のいい程よいお酒の香りと甘さ。もうひとつは苦いブラック・チョコレートを器に仕立て、中にはアイルランドのウィスキーが入っている。ほとんど酔いそうになるくらいウィスキーの香りが強い。だけど、それが嫌じゃない。大人の味ね！という感じで高級感を盛り立てていた。その上にはチョコクリームと乳脂肪分がたっぷりのホイップ・クリーム。器のチョコの苦味が嬉しい。 20センチもある真っ白なメレンゲがお皿に斜めにかけられて白、マロンのベージュ。茶色のマロン・グラッセ。濃い茶色のチョコと色のグラデーションが奏でられる。あくまで大人の品のよい一品だった。ただ、やっぱりここでもソースに添えられたチョコが固かった。
全般的に、料理はこの上何を望もうかというレヴェルだったが、最後まで食べてみて量がやや少なかった。でも他のテーブルを見るともったいないこと(!)に残している人も多く、サーヴィス陣に「少ない」というと「そういわれたのははじめて」との答えだったから、日本人向けのポーションだったのかもしれない。
会計は合計で49665円。内訳は36000円(コース二人分)+6000円（ハーフボトルのシャンパーニュ）+1000円（ペリエ）+4300円（サーヴィス料）+2365円（税）。フォアグラやトリュフ、オマールと高級素材をふんだんに使っているし、フランスからスタッフが大勢きていることを考えるとリーズナブルだと思った。
基本となる皿はベルナルドのパアン（Pahang）。カトラリーはホテル仕様のクリストフル。これはちょっと安っぽかった。
ワインリストは各国のものがまんべんなく揃えられているが、ボルドー、ブルゴーニュを見ると「コレっ」と決め手になるような目玉はなかったように思う。でもフルボトルでも5000円からあり、頼みやすいし、ハーフボトルやグラスワインも充実。ハーフのシャンパーニュだけでも5000円、6000円のがそれぞれ2種類ずつあった。
大阪はど真ん中にあるビルの30階。眺めがたいへんよく、十分な間隔を保ったテーブルも外を見られるように配置されている。ただ内装は一昔前のホテルのようで少々無機的。
サーヴィス陣はやや固かったが、質問にはよく答えてくれたし、細かいところにも気をつけてくれるプロ集団。2種類だけのメニューが5日間続く料理フェアの3日目だったからかもしれないけれど。
最後にはギ・マルタン自らがすべてのテーブルを廻り、少々歓談。天才肌の芸術家のはずなのに、気取るところが全くなく、こちらが思ったことをいうと丁寧に答えてくれた。来年のフェアが今から楽しみ。
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