プロセス・マップ(Process Map)
プロセスマップは、最初のところで説明しておりますが、さらに、重要な点をここで補足します。
先に述べたプロセス・マップの利点以外にも、われわれは湖の手法をチーム内の仲間意識の確立やチームワークの促進に利用しています。つまり、企業組織などの機能を横断して選出されたプロジェクトチームのような場合、チームメンバーは、これまでお互いにいっしょに仕事をしたことはないわけですから、プロセス内の作業マッピングを通じて通常は相互理解と共感が生まれてきます。「僕は、君がそんなことまでやっているとは全然知らなかった」とか「だけど、これからは、そんなことを続けるべきでないね」といったコメントがよく聞かれるようになります。
これら七つの基本的手法のいくつかは、ある局面で他の手法と比べてより役立つことがあります。たとえば、特性要因図は、事象発生原因を追及するのに優れた手法でありますし、一方で、事象の発生状況を記述するには、おそらくプロセスマップがもっとも優れた手法です。
これらの手法・技法は、ずっと以前からいろいろな場所で利用されてきております。問題は、これらの手法・技法がある特定の小さなグループをのぞき、広範囲に利用されていない点です。なぜ利用されないのでしょうか。
- 使わない人たちは、これらの手法・技法が製造現場用の手法であるので他の部署では使えないと考えている。
- これらの手法の使い方は訓練されていないし、それらを使った経験もない。
- これまでの参画社があまりにも少なすぎる。マッピングには、機能を横断した協力が必要です。プロセスについての見解が多ければ多い程良いのです。アイデアを出すためにはグループ・ディスカッションが大切であると考えられていても、多くの企業では、課題の達成または、問題の解決にチームやグループによる取り組みは殆どなされておりません。
- 使わない人たちは、本音では事実を知りたがらない、むしろ、歴史とか直感によって意志決定を行うことを好みがちです。
事例:会社の請求プロセスを改善するために、経営者が単純な質問をしました。
「請求プロセスにとっての顧客は誰になるか?」
この質問の答えを出すために、請求プロセスに従事している人、プロセス以外の機能、(たとえば製造部)に従事する人および経営者からなる機能横断的なチームが結成されました。
チームの最初の発見は、各人のとらえ方に思いこみによる乖離があることでした。当初、請求部門の従業員四人の顧客をリストしました。
インタービューやディスカッションなどを行った末、彼らは八人の顧客をリストしました。明らかに請求部門は、自分たちの顧客は誰なのかを知らなかったことになります。
つぎに、チームは請求部門に、彼らの顧客ニーズ、欲求、期待を明確にするための質問を行いました。そのまとめと整理の結果から、チームは二つの結論を導き出しました。つまり、顧客が欲していると請求部門が考えていたことの多くを実は顧客は欲しておらず、顧客が真に欲していることの多くが、請求部門によってなにも提供されていなかったのでした。
最終的に、チームはプロセス・マッピングを実施、請求書の発行までに、五十九日を要し、その間275の異なる作業が行われていることを発見しました。請求書は、プロセスを完了するまでおよそ3.5キロメートルも移動していました。曲がりくねった経路を目に見えるかたちで表現してみると、すべての人がそれを見て驚いてしまいます。再チェック、再計算、やり直し作業など、50%以上の活動が顧客になんの関連もないことがわかりました。このことが明らかになると、もはやプロセスを改善しなければ、業績の改善が不可能なことは明白な事実となりました。