向上訓練の研究
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視聴覚教育技術(AVI=Audio-Visual)

■概要
AVは、Audio-Visualの略で、視聴覚のこと。AV視聴覚訓練とは、テレビや、ラジオ、映画、テープ、チャート、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)、実物投影機などの視聴覚的な機器・手段を利用して教育訓練をすることです。

視聴覚教育技術は、単にテレビや映画などを見せることではありません。
人間のもつ五官のうち、視覚機関である目と聴覚器官である耳との二つの器官に伝えられる視覚と聴覚との二つの情報を密接に関連づけ、両器官相互に関連を持たせることが真の視聴覚技術である‥‥‥‥(神奈川大学教授・末武国広氏)といわれております。

 しかし、単に映像を放映しているだけになると、その効果は、本質的な特性に限られた伝達の効果だけしか得られません。教育の訓練場面においては、インストラクション技術と相まって効果は倍加します。

たとえば、映像の中のポイントを纏めるとか、あるいは指示棒を使って指し示す都下の強化手法を併せ持ちいることによって、映像が視聴者の脳裏に焼き付き、残像の時間をより以上に引き延ばすことが可能になります。

応用例としては、、新製品の写真をOHPで映したり、工場の生産ラインのビデオを見たり、月面探査の模様を撮影した映画やビデオを見たりするなど、事物を感性的に認識することによって、実物や実地を擬似的に知覚することができるので、実地訓練や実物訓練に近い教育訓練をすることができます。

このように視聴覚教育は、視聴器官を相関させることであるならば、私達の持っている五官(感)の特性について十分知っておく必要があります。『産業教育機器システム便覧』によると、五官による知覚の割合は視覚器官が83%、聴覚が11%、臭覚3.5%、触覚1.5%、最後の味覚が1.0%、であるとしています。

そのため、教育訓練場面でよく利用する視覚と聴覚では、なんと94%となり、圧倒的な割合を示しています。これにみずからが行動に表して体感、体験すると脳裏に焼き付く度合いはさらに強くなるとも言われております。

パソコンの普及や、コンピューター・グラフィックスやアニメーションの技術の発達などによって、AV視聴覚訓練の重要性は、今後、ますます増大するものと思われます。

<人間の五感と学習効果>
    視覚から83%
    聴覚から11%
    臭覚から 3.5 %
    触覚から 1.5 %
    味覚から 1.0 %
    の学習を行う。
 しかし、ものによっては次のような難点があります。
  1. 制作するのに高度な知識や技能を必要とする。
  2. 莫大な労力と費用を必要とするものがある。

■教育技法・開発上の留意点

AV視聴覚教材を有効に活用するにあたっては、次のような配慮が必要です。

教える側から受講者の想起率(時間の経過による記憶の程度)を観察した場合、教え方と受講者の想起率にも五官との関係が示されています。

つまり、トレーナーが一方通行的に言うだけであれば、三時間後の想起率では七〇%の想起率ですが、三日後にはなんと、一〇%しか残っておりません。
三日間の間に八五%も減衰していることになります。ところが、トレーナーが言い、かつ示す(この場合、ポイントを指し棒などで指し示す)動作を取ると、三時間後の想起率は八五%に対し、三日後のそれは六五%と減衰率も一四%程度にとどまっています。一方通行だけで終始するインストラクションが如何にたわいないものか理解できると思います。

  • 視聴覚教材(教育技法)は、さまざまなものを利用できるようになっています。けれども、機材には、一長一短の特質もありますから、能力開発の目的に合わせて適切なものを選択する必要があります。

  • 視聴覚教材の使用にあたっては、器材のチェック、部屋の広さ、電源の有無、スイッチの位置など、講義場所に適応するよう細かい確認が必要になります。

  • 適切なAV器材を適用することにより、臨場感あふれた映像や音声によって、受講者に強い印象を刻印しながら、教育訓練を進めていくことが可能になります。

  • 便利なものとして、OHP(オーバーヘッド・プロジェクター)が広く普及しております。OHPは講師が受講者と対面したままの状態で、学習内容を受講者の頭越しに前方のスクリーンに映写するというスライド形式を採用しています。明るい部屋でも使える、受講者と向かい合いながら使える、映写用原紙(TP=トランスペアレンシー)の作成が比較的簡単である、などの理由により、大変広く普及しております。

  • コンピューター・グラフィックス(CG、コンピューターによる画像処理)やシミュレーション(模擬実験)などの発達によって、AV視聴覚訓練のための教材の開発はきわめて高度なものが期待できるようになってきました。

  • 最近のパソコンの学習では、CD−ROMの動画および音声とシミュレーション・テストとの組み合わせにより、テキストだけでは得られない理解度の高さと学習時間の短縮を実現しています。

    注:「下図、NEXTで次ページへ続く」


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