研修とはいうまでもなく仕事の能力(のうりよく)を高めるために、特別(とくべつ)に勉強や実習をすることです。
その研修生かが組織運営に何らかの効果をもたらすものであるからこそ、企業をはじめとする多くの組織は、多大の経費を投入して組織のメンバーをみずから研修するあるいは種々のセミナーなどに参加させるのです。
最もその成果は必ずしもすぐに現れるとは限りません。しかし、いずれ近い将来には現れるものでなければ企業組織としては困るのです。
この点において、人の一生に役立つよう幅広く、基礎的な学理を教育する学校教育とは好対照を作り上げるものといえます。
このような研修のもつ独特の性質は、研修の方法に様々な工夫を生み出させることとなります。これは、単に座学として教える、あるいは記憶させるだけでよいのならば、学校教育を見習い、講義に重点を置いた方法で実施すればことが足りるでしょう。しかし、組織は、組織メンバーに対し、日常の仕事を具体的に動かしながら、その中でよりよい態度、よりよい選択、よりよい行動をとって欲しいと期待しています。
あるべき態度、選択、行動は単一ではないとしても、その場の状況によっては最適なものがあるはずです。
これを訓練して体得させるには、講義一辺倒だけでは不十分です。出来るだけ実際の職場や仕事の動きと同じ状況のもとで実践的に教育、訓練したいと考えるのは自然な成り行きになります。”経験に勝る教師はない”とも言われているところです。
体験学習法と呼ばれる研修技法は、このような考えから生まれてきたと言えます。体験学習法とは、研修員に対して、経験を通じて研修内容についての理解を深めさせていくことを狙いとした研修技法を総称するものです。
このカテゴリーに属する技法としては、実習、シュミレータ訓練、ロール・ブレイング、ビジネスゲーム、見学などが上げられます。また、問題解決訓練としての事例研究や、イン・バスケット法、センシティビティ・トレーニング、TA訓練、ケプナー・トリゴー法などもこれに属する技法とも言えます。日常と異なる状況下で態度や意識の変革を狙う方法も含まれます。たとえば、経験を基礎とし、実践的に行われる方法であり、OJTやジョブ、ローテーションに近い発想の研修技法といえます。