◆概要
管理・監督者に「仕事と部下を管理していく上で必要な原理・原則を組織的、体系的に理解させる」と、
云うことを目的にしたこの訓練プログラムは、昭和二十五年八月から人事院においてその開発に着手して、
翌年の八月に完成したものです。
MTPが主に、生産部門の管理・監督者を対象にした訓練コースであれば、JSTは、事務部門対象
のコースといえるかもしれません。このコースは同年空きより各省庁、民間企業に普及して以後、三回
の内容改定を行い現在に至っております。
JST技法は、討議方式をもちいた会議の方法で行います。参加メンバーにより経験の豊富な知識を
出し合い、討議を重ねた後、インストラクターが、原理・原則を体系的に整理説明していくというやり
方を取っております。
そのため、受講生の会議式研修は参加人員には効果をあげるため定員を一コース十七名に定めていま
す。また、受講資格は、現在、管理・監督の立場にあるもの、あるいは、職歴五年以上で、受講後に
JSTの指導に当たるものとされています。
人事院では、こうした定めによって所定課程を修了した受講生へ、JST指導者としての公的な認定書
を与えております。
◆技法の特色と効果
原理・原則の必要性を学習する
この変化の激しい時代に、新たにマネジメントの原理・原則の勉強が必要なのか。そうした
気長な時間はない、といった声も聞きます。
けれども、そのような場合「管理者であるあなたは、いつも何を管理してますか」「管理とは
何ですか」と、改めて訊いてみると、多くの場合、真剣な答えは返ってきません。同じように
「組織とは何ですか」と尋ねて、それにふさわしく理解させてくれる管理者も実際のところは
あまりいないようです。
このことは、各人各様に自分の経験の中で自分流に「管理」や「組織」あるいは「部下指導」と
云ったことを解釈しているということだと理解されます。
もし、このような人達による課長会議を行ったなら、会議での発言にたいする理解の仕方は、バラ
バラになざるを得ないかもしれません。
枝葉末節のところで職場会議の紛糾するのも、案外こんなところに原因があります。管理者は少
なくとも、共通の言葉で同じ土俵で共通に理解できなければ、組織目標の達成は、うまくいくかど
うか疑問です。
研修グループにより統一見解をつくる
管理者または監督者5〜七名編成のグループを作ります。先にあげた「管理者とは何か」あるい
は「組織運営をしていく要素とは」といったテーマで、各グループによって統一見解、定義づけを
します。
理解の仕方にどれほどばらつきがあるかは、一目瞭然です。また、JSTの内容を中心として、
某団体が開発したワーク・シートの中の一つに、「コミュニケーションとは話し合うことである」
という設問があります。イェスかノーで答えよという設問です。
これだけでも、管理者それぞれの答えはばらつきます。正解はもちろんノーです。では、何故
ノーなのかを次に指導していけばよいのです。これは、いうまでもなく、話し合いとはコミュニ
ケーションの手段の一つに過ぎないからで、手紙や文書またファクシミリ、あるいはボデイ・ラン
ゲージによるやり方など、手段方法を選ぶとコミュニケーションの仕方にはいろいろあります。こ
のような身近なテーマであっても、管理の基本的知識や原理・原則を十分に学ばせることが可能に
なります。
◆活用事例
社内での展開は調整が不可欠
管理の基本的知識や原理・原則について、何故正解がノーになるのか。このことを、各
管理者に納得させるには、インストラクターである筈のものが、JSTやMTP技法を
しっかり学習していなければ無理があります。
けれどもJSTの研修内容は、全課程で八日間あります。これをそのまま自社の管理者
研修に持ち込んでは、あまりにも時間がかかりすぎます。そこで、JSTの要素を考えに
入れた短縮版をつくる工夫を期待します。
必要限にとどめると一泊二日、あるいは、全日三日間でも内容的には可能といえます。
管理・監督の原理・原則をベースにしているJSTの内容は、同じようにこれを基準と
して社内の管理者の理解度、知識の程度を知るには、格好な条件のものといえます。
そのやり方については、いろいろ考えられますが、既存のものを使うとすれば、
DISA(管理・監督適応性診断検査・日本経営協会作成)と言う検査用紙が市販されて
います。これを用いて、研修前、あるいは研修後に策定すれと、自社の管理者の原理・原
則にたいする理解度が正規分布で表せます。
そこには、個人別及び前者のプロフィールが現れてくるので、どこが強み、弱みかが判
るので研修ニーズは掴みやすくなります。
今日では、組織の大小を問わず、JSTあるいはMTPのような基礎コースは、管理者
には不可欠なものといえます。その立場にたつ人々にとっては、なににもましてマネジメ
ントの定石といえる管理の原理・原則は、十分身につけるべきものだといえます。
参考文献:【教育訓練技法】教育技法研究会編、経営書院発
行