向上訓練の研究

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 『 MTP技法 ―管理者訓練計画― 』

◆概要
 管理者訓練の中で産業界に最も普及したのは、MTP(manager training plan)です。
MTPの目的は、管理の基本的な知識を、広い範囲に亘って総合的に研究するとともに、管理者の管理能力 と、部下の勤労意欲を向上させるための能力を高めることです。
 MTP実施の場合対象は、主に課長係長など部下を持つ管理者になります。

 産業界におけるMTPの導入は、かなり古く昭和二十八年にさかのぼります。以降、この技法方式 は、四年に一度の割合で改訂され今日に至っております。そして、その内容は、経済環境など状況適応 の立場から、経営が期待する管理者の役割、管理者の使命感などをあきらかにしております。

◆ MTPの構成と特色
 MTPは、指導型討議(会議式)二〇会合・四〇時間が基本です。
 この基本コースでは、「管理につい ての基本的な知識・技能・態度の啓発」を主眼としているものです。管理についての共通概念、共 通思想のには、
 第一部 管理の基礎
 第二部 仕事の改善
 第三部 仕事の管理
 第四部 部下の育成
 第五部 人間関係
 第六部 管理の展開
で構成されております。

 管理の基本の意識づけ
 管理職候補者を管理職任用の時、管理の全般にわたっての概念や方法を、知識として習得するの に効果的です。



 この対象は人事処遇とリンクしているので受講者の反応はいつも新鮮 さが感じられます。
 とくに、管理職候補の場合は受講後現場に戻ってから、直属上司の行動を原理原則と照合して観察す るので、管理者任用時にスムーズに職責を遂行できることから、早い時期の受講は一層効果がありま す。

 この対象者にMTPの受講感想を聞いてみると、
@ 管理の仕方について体系的に理解できた。
A 管理の仕方について判断基準が出来た。
B 数多くの管理用語を一度に知った。
C 自分が伸びなければ部下も伸びない。
D 管理の基本を実践的に学習できた。
 等の声があがっております。

管理職体験後のスキル再構築
 私達は、管理用語を概念として大まかなことは知っていますが、実務体験に結びついているか、 疑問が残ります。また、管理用語を気にしなくても管理活動を行い、体験を積むこともできます。 けれども、マネジメントの効率化の為に、管理者は適当な時期に、管理体験を棚卸しして、原理原 則と照合する必要があります。しかも、適当な時期に自分の管理体系を再構築するのには、MTP は有効な技法になります。

MTOの学習課程において、例えば、「権限の委任」「自己統制」などの管理用語が出てきます。そのとき、これら用語にそそがれた思い起こすと、相当な数の 体験を引き出せます。そして、体験と原則のすりあわせの中で体験を整理統合すると、マネジメン トの再開発へステップアップさせるのに、MTPは格好の材料になります。

 それで、管理経験豊かな方のMTPを受講した感想をまとめてみると
@ 日常管理と原理原則のギャップを知った。
A 管理の弱い面と偏った面を知った。
B 管理活動を意識的に管理しなければならない。
C 自分の管理の仕方に自信がついた。
D 管理面でまだやっていないことが多かった。
 等でした。

技法教育のベースに
 法新管理とQCさーくる活動に不協和音があってTQCがうまくいかないという例をよく聞きま す。
 その原因は、管理の基本的姿勢、物事の本質を掴む能力、分析し体系づける能力、部下個人個人 への関心と理解力が不十分だからです。
 技法を取り入れるとか、実践活動をする場合、ややもすると、技法に押し流れて中身を軽く見る ようになります。技法のメリットを生かして効果を上げるためには、技法を使う人にしっかりした 管理の基本が身につかなければなりません。
 技法教育を実施する場合、忘れてならないのは、技法は考えの段取りであり、フレーム、プロセ スに過ぎないということです。問題解決に必要なのは、知識、情報、意欲、情緒といった人間の 持っている全精神活動が基本であるということです。



◆ MTP導入上のポイント
(1) インストラクターの選定
 MTPを企業内で実施する場合、多くは社内インストラクターが担当します。MTPの内容が、組織、管 理、人事問題に関わってくるので、誰がインストラクターをやるかによって、教育展開の雰囲気が変わって きます。インストラクターとして適当な人がおれば、管理部門よりはラインマネジャーを勧めます。

(2) インストラクションのコツ

  • 管理原則と職場実体との橋渡しの工夫。
  • 参会者に質問を投げかけるときの表現方法の工夫。
  • 管理原則を消化するためのグループ討議の課題設定。
  • バラバラに発言している内容を短時間にコンパクトに収束する技術。
  • 教育展開の効率化(板書きの使い方、時間管理、緊張感を持続させる質問の仕方など)の工 夫。

     

 参考文献:【教育訓練技法】教育技法研究会編、経営書院発行



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