いくら冷酷無情な上役といえども、自分を奴隷にすることは出来ません。
確かに、上役が自分の幸せや利益を気にもかけない冷淡な人間であるために、自分の生活に支障が出ることもあるかも知れません。しかし、どんな上役であろうと、よそよそしい無関心と、わざとらしい冷淡さを、何ヵ月にも、何年にもわたって自分に受け入れさせることは、絶対に不可能です。
自分個人としては、本当に不人情な管理者には殆どあったことはありません。そういう人間が存在することは知っているし、管理者の地位にある男女の中には、常にこ の類の人が何人かいることも分かっております。重要なことは、この人達がそのままずっとこの地位にとどまるか、それとも昇進するかということではありません。この人達が管理者である間は、大変扱いにくいということなのです。
冷淡で人情のない上役のもとで働きつづける必要などはありません。
もし、そんなところで仕事をし続けるとすれば、自分を奴隷にしているのは、上役ではなく、自分自身だということになるのです。自分が残っているのは、辞めて別の仕事を見つけたとしても、結局は同じような上役に行き当たるのではないかと恐れているためではないのです。
他へ移ることを考える勇気がなくなって、今のままの方が楽だからだと思ってしまうからなのです。
立ち上がって進むだけの勇気を欠いているのです。おそらく「いつかは、もっと良くなるだろう」という、空しい希望を抱いているということになります。普通、我々はみな、多かれ少なかれ、この種のつまらない恐怖の犠牲になっているものです。馘になるかも知れない。働きづらい雰囲気になるかも知れない。昇給を認めてく れないかも知れない。などの理由で、上役を恐れるものです。
時として、多くの人は、欲求不満の原因を自分のせいにすることがあります。そして、自分の行為や、地位について、すこぶる批判的になり、自分の優れた意見を引っ込めてしまうのです。これまで、我々は、上役に対する恐れを自分の攻撃にすり替えて、重大な精神的打撃を被ってきたのです。これは、全くバカげたことです。
冷淡な上役に対しては、真っ向から攻撃するか、最も人間味のある人物に代えるよう、忍耐強い努力をするかによって問題を解決することです。それが出来ないのなら、出て行けばよろしいのです。
決して奴隷になってなりません。自分を引き留めているのは、上役でなく、自分自身であるのです。人生をコントロールするのは、自分です。自分で決定を下し、自分 のやりたいことを計画し、実行することです。自分にとって一番恐ろしいのは、長い間冷淡な管理者と一緒にいると、つい自分までが、他人に対して冷淡になりはしないかということなのかも知れません。
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