A-10(愛称:サンダーボルトII/俗称:ウォートホッグ)は、強力な対地攻撃能力と重装甲を誇るアメリカ空軍の近接航空支援専用機で、フェアチャイルド・リパブリック社が開発(A-10A)。同社が航空機産業から撤退後、能力向上型への改修をロッキード・マーティン社が担当(A-10C)。
A-10は非常に頑丈に作られており23mm口径の徹甲弾や榴弾の直撃に耐える。コックピットと操縦系の主要部は予想される被弾方向や入射角の研究で最適化されたチタン装甲で保護され、23mm砲のみならず57mm砲でのテストも受けている。防弾化されたキャノピーは、小火器による攻撃に耐え、前面風防は20mm砲に耐える。また、二重化された油圧系と予備の機械系による操縦系統は、油圧系や翼の一部を失っても帰投・着陸を可能としている。機体自体もエンジン一基、垂直尾翼1枚、昇降舵1枚、片方の外翼を失っても飛行可能な設計となっており、その卓越した生存性は航空機の中でも他に類を見ない。そしてこの群を抜く生存性の高さが、重武装と相まって本機に強力な近接支援能力を発揮させている。
A-10は11ヶ所に及ぶハードポイントに様々な外部武装を装備できるほか、機首に30mm徹甲弾を使用するGAU-8 Avengerガトリング砲を内蔵している。当初の設計では毎分2,100発と4,200発の発射速度だったが現在は毎分3,900発に固定している。また、A-10は通常自衛用として片翼にALQ-131
ECMポッドともう一方に2発の空対空ミサイルAIM-9サイドワインダーを携行している。
湾岸戦争では、AH-64A アパッチなどの対戦車ヘリコプターが砂漠環境での機械的トラブルに悩まされたのを尻目に、主に装甲車輌などの移動目標攻撃に活躍した。A-10Aの累計出撃数は8,755回を数え、イラク軍の戦車987両、装甲兵員輸送車約500両、指揮車両等249台、砲兵陣地926ヶ所、対空陣地50ヶ所、SAMサイト9ヶ所、レーダーサイト96ヶ所を破壊するなど著しい戦果を記録した。
湾岸戦争での活躍をうけて、1994年にはA-10の運用寿命の延長が決定され、1999年から「ホッグアップ」計画として実施されている。また、運用寿命の延長と並行して、戦闘能力向上を図る精密交戦プログラム(PEP)能力向上計画が2004年から実施され、グラスコックピット化や新型兵装搭載管理システムの搭載、精密誘導兵器(PGM)搭載用改修、エンジンもTF34-GE-100から信頼性の向上したTF34-GE-101に換装された。これらの改修が施された機体は、A-10Cとして2006年11月から部隊配備を開始、2007年8月に初度作戦能力(IOC)を獲得、同年11月7日にはメリーランド州空軍第104戦闘飛行隊がA-10C飛行隊として初めてイラクに展開している。
アメリカ空軍は、すでに保有する367機すべてをA-10Cに改修済みで、これら改修によって耐用飛行時間も16,000時間まで延長されている。
Photo:U.S.AIR FORCE |