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_ ______ ■ June / 2012 〜 August / 2012 ■ _

 

  体内をめぐる血液は「動脈」を通って末梢へ向かい、帰りは「静脈」を通って心臓に戻って来ます。今回は静脈に起こる二つの病気についてお話しします。

 私たちの脚の静脈はとても広大な容積をもっており、筋肉にはさまれた脚の中心部を足先から大腿までを貫いて走る太い一本の静脈「深部静脈」と、これ以外に筋肉や皮膚の表面を走る多くの「表在静脈」の二種類に大きく分かれます。

 まずは「深部静脈血栓症」:脚を動かさずに長時間寝ていたり、脚をまげた窮屈な姿勢で座り続けたりした場合に、筋肉に囲まれた深部静脈に血液のうっ滞が 続くことが引き金となります。さらにこの血栓症は「急性肺塞栓症」という重病に移行しかねないことが大きな問題です。すなわち静脈内壁にくっついていた血 栓が、その人が立ち上がると同時に内壁から離れて心臓〜肺動脈の方向にむかって勢いよく流れ込んでしまうと「肺塞栓症」を引き起こします。こうなると心臓 へ血液が還りにくくなり、ひいては全身の血液循環をも阻害してしまうのです。もし悪くして閉塞が完全でしかも回復しない場合には、その場で落命してしまう ことさえあります。この疾患は中年以降の肥満女性に多いことが知られ、ある調査では8年間で日本国内の航空機乗客44人に深部静脈血栓症が発症し、うち 40人までが女性であったとのことです。脚を長時間動かさないでいることは危険、ということを良く認識しておいてください。

 次に「下肢静脈瘤」:こちらは反対に表在静脈におこり、皮下を走る静脈の腫れや硬結、皮膚色の変化により気付かれます。そして外見上の問題もさることな がら、うっ血によって皮下に静脈炎が起こり、痛みや熱感、痒みを訴える方もあります。下肢静脈瘤自体が直接命をおびやかすことは無く、自覚症状のない軽い ものは放置可能ですが、症状が強い時には治療の対象となります。この病気で判断が難しいのは、検査・治療を行う診療科が施設によって一定しない点、そして 美容整形的治療との間の線引きに少し迷う点です。ただ、平成23年から「血管内レーザー治療」が健康保険に組み入れられたことから下肢静脈瘤の診断/治療 法に変化が見られ、手術件数も伸びています。

 下肢静脈瘤の予防法は言うまでもなく、よく歩くこと。そして「靴を正しく履く」ことです。大きすぎない靴を選び、靴の背側に踵を押しつけた状態で足を しっかりと靴に固定するようにして履いてください。こうして歩けば、足やふくらはぎに貯まった余分な水分は自ずから静脈へ入りさらに心臓へと戻って行きま すから、うっ血やむくみは自然と解消します。ぜひ正しいウォーキングで脚の健康を手に入れてください。

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大西内科クリニック