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__________ ■ March 〜 May / 2015 ■ _

 

 
 近年、日本食への関心が世界的に高まりつつあることが、各 メディアでしきりに報道されます。そこには食文化としての興味だけではなく栄養学的に優れた食習慣に対する関心がありましょう。それは低カロリーで食物繊 維やビタミン・ミネラルを多く含む食品を、主食・主菜・副菜とそろえて食べる和食への賞賛です。

 1980年から続けられている厚労省研究班による「NIPPON DATA(ニッポンデータ)」という全国300地区の日本人を対象とした循環器疾患予防のための長期追跡研究があります。今年1月、欧州の学術誌にこの一 部を解析した研究結果が報告されました。野菜や果物の摂取量が多い人ほど脳卒中や心臓病など循環器疾患による死亡リスクが低下することが、24年間の追跡 調査で示されました。しかし一方で懸念されるのが本家ともいえる私たち日本人の食の変化です。その一例が図らずも同じNIPPON DATAの解析結果に現れています。すなわち2013年の日本人の野菜摂取量の平均値は、30歳代で249g、40歳代で245g、50歳代で286g と、いずれも10年前に比べて減少しており、かつそれらは目標摂取量の350gに遠くおよばないのです。とくに緑黄色や葉物野菜、海藻などの摂取量減少が 目立つようです。

 菜食は血圧をさげ高脂血症を改善し糖尿病治療にも大きな役割をはたすことが過去の様々な研究で明らかとなっています。ですが現代の我が国、それも都市部 の日常生活で毎度食事のたびに新鮮な野菜や果物をたっぷり摂るなどというのは物理的にも経済的にもそう簡単にはいきません。ことし2月の米国学術誌に掲載 された報告はそんな悩みへ一条の光をなげかけます。それは、食生活の上で(1)非常に厳格な食事制限プログラムに基づいた食事をする群と、(2)食事制限 はせず単純に食物繊維をたくさん摂る群との2グループに分けて体重減量効果を調査したところ、当然ながら(1)のほうがより顕著な効果がありましたが、 (2)の群でも一定の減量効果が確かに得られたというのです。もちろん減量だけが目的ではありませんが、なんとかして食物繊維だけでもたくさん摂ろうとす ることが成人病予防に役立つのは間違いありません。

 食物繊維は野菜・果物以外に、豆類・きのこ類・藻類などにも多く含まれています。日本のもう一つの美点は細やかな気配り。毎日の食事に工夫をこらし、少しでも自身の健康に役立てたいものです。



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