←Home←今月のコラムへ | ←コラムIndexへ

_________ ■ September 〜 November / 2015 ■ _

 

 
 誰しも一度は経験のある急性胃腸炎症状、いわゆる「あげく だし」は本当に辛くて苦しいものです。この原因のほとんどはノロやロタなどのウイルス感染なのですが、この概念が確立してからまだほんの10年と少ししか 経ちません。今回はこの厄介な病原体ノロウイルス(正式名:ノーウォークウイルス)のお話しです。

 ノロウイルスにより嘔吐・下痢・腹痛などをおこした患者さんの多くは数日の経過で自然になおりますが、小児や超高齢者ではときに大事にも至ります。季節 的には寒い時期に多いとされています。そしてこの冬、ある理由からノロウイルス感染の大流行が懸念されるというニュースが、8月にNHKで報道されまし た。大流行した平成18年来の流行かもと。国立感染症研究所らがこれまで調査してきた流行ウイルスの遺伝子型と今年確認される遺伝子型が明らかに変異して おり、私たちが持っている免疫がそのウイルスに役に立たないのではというのがその理由です。

 この流行をおこす感染経路にはいくつかあり大別すると、(1)生ガキなど生鮮食材からの食中毒、(2)感染者の糞便・吐物からの感染、の2つです。そし てこの(2)の経路はさらに(2a)調理や食物に触れた人がノロウイルス感染者であったときに食中毒として広がる場合と、(2b)感染者の糞便や吐物に含 まれていたウイルスが細かいホコリに付着して口中に取り込まれ広がる場合とにわかれます。

 後者は患者と接触したり近くに居たために感染してしまうという現象で、幼稚園や学校・病院などでの集団発生はこの形態が大半を占めます。ここで厄介なの はウイルスのサイズが非常に小さく、かつ感染力が強いということです。これはウイルス個体の強弱ということではなく、少数でも感染が成立してしまうという こと。たとえば同じ腸管感染の例を挙げると、赤痢菌やサルモネラ菌であれば10万個から100万個でやっと感染が起こるのに対して、ノロウイルスではわず か100個でも感染が起こってしまうのです。じつに二桁以上の差です。さらにノロウイルスは乾燥に強く、ふつうの細菌であれば死滅するようなホコリの表面 ででもしぶとく生き残り、そのホコリと一緒に舞い上げられて人の口に入ってしまうというわけです。
 この感染症の治療法はありません。強いてあげれば失われた水分とミネラルをしっかり補充すること。また感染予防もとても難しいわけですが、まず第一に手 洗い、そしてもし自分が感染したと気付いたときには周囲の人に広がらぬよう良く考えて素早く行動することがとても大切です。どうか皆さん十分ご注意くださ い。



コラムIndexへ 

大西内科クリニック