なにかことを為そうとするときにどうも難解な外来語が登場する昨今。今回はそんななかから、この数年間で見聞きするようになった外来語「サルコペニア」についてお話しします。
これは【サルコ:肉、ペニア:〜が不足】というふたつの医学用語を併せて【身体を支える筋肉が減少し、身体機能に影響している状態】をあらわす複合語で
す。簡単には、古くからある「足腰が弱る」という言葉に置き換えて「動けない・よく転ぶ」ようになった状態を思い浮かべれば良いでしょう。かねてより高齢
化に伴う認知症や骨粗鬆症などによる身体機能の低下について議論がなされてきました。しかし近年、筋肉構造の弱体化が身体機能低下にかなりのウェイトを占
めることが注目されています。欧米では20年以上前から提唱されており、生活習慣の欧米化が進むアジア地域でも今後克服せねばならぬ重要課題として、アジ
ア人向けの診断基準が昨年新たに作成されました。
サルコペニアは年齢とともに増え65歳以上で高率にみられます。その原因のひとつは私たちの生活があまりに便利になったことであることは想像に難くあり
ません。すなわち「歩く・持ち上げる・腕を振り下ろす」など、昔の人々であれば毎日ごく普通にしていた動作をすることなく日々を過ごせるようになり、自身
の筋肉をまったく使わなくなってしまった日常生活こそが最大の原因というわけです。さらに注意すべきは、このことが決して高齢者にばかり起こっていること
ではないといういこと。若い人々にも確実にこの傾向が進み、今後サルコペニアの発現年齢がどんどん低下していく懸念があります。サルコペニアを防ぐには蛋
白質を含むバランスのとれた食生活をとることと適度な運動が重要です。一部の若い女性を中心とした過剰なダイエット指向も、サルコペニアの大きな危険因子
です。
ここでもうひとつの問題は、いわゆる「サルコペニア肥満」と言われる状態、すなわち筋肉量低下に、体脂肪量の増加で生じる体重増加が追い打ちを掛けてい
る状態です。もともと筋肉が落ちてさらにその上に乗っかる重みが増えるわけですから、これはもうダブルパンチで動けなくなるというわけです。こうなると栄
養をうまく摂ろうにもまずは食事制限から始めなくてはならず、なかなか一筋縄ではいかなくなってしまいます。ですからサルコペニア肥満に陥ってしまわぬよ
う、過度なカロリー摂取を若い頃から慎む必要があります。筋肉の保持にはまずは毎日歩くこと、そして歩くことが難しい方には室内でもできる運動等が様々な
メディアに取り上げられています。いまも世界の長寿No.1を続ける我々日本人こそ、今後、心して取り組むべき課題でありましょうね。