「脂肪肝」になられる方が増えています。我が国での患者数は90年代から2000年代にかけ急激に増加し、以後それは減る気配をみせていません。
脂肪肝とは肝臓内に脂肪が異常に蓄積された状態をさします。診断にはエコーやCTなど画像診断と血液検査をあわせて行われますが、脂肪肝か否かの線引き
は必ずしも一定のものではありません。体内で最大の臓器である肝臓は、もともとエネルギー源として吸収した栄養素から脂肪を合成して肝細胞の中に貯めてお
く、いわばエネルギーの貯蔵庫です。そしてその貯蔵庫から身体活動に必要分の脂肪が引き出され分解されて使われていきます。従って使うエネルギーよりも作
られた脂肪のほうが多いと肝組織内に脂肪が貯まってしまうわけです。
主な原因を3つあげてご説明します。(1)アルコール性脂肪肝:飲酒で血中に吸収されたアルコールのほとんどは肝臓で解毒され体外へ排出されていきます
が、この解毒の過程で生じる物質が肝細胞を障害し、さらには或る物質が逆に消費されすぎてしまうことにより肝臓内に中性脂肪が蓄積しておこると考えられて
います。また大酒家の方に多い「大食家」であれば、この変化にさらに拍車がかかります。(2)非アルコール性脂肪肝:昨今もっとも増えている群で、過食に
よる肥満や糖尿病などとともに生じ、肥満と診断された人の3割近くに脂肪肝があるといわれます。やや話が難しくなりますが、インスリンの効きが悪くなる病
態「インスリン抵抗性」も関わっていると考えられています。(3)いわゆる肥満体型ではない人でも運動不足やバランスのよくない食生活から、わずかな体重
増加だけでも発症する場合があります。さらに意外なのが、過剰なダイエットや極端な栄養不足でおこる脂肪肝です。これは蛋白質不足が生じたことによって肝
臓が防衛反応として蛋白質の代わりに脂肪を蓄積してしまうためであろうと考えられています。
では脂肪肝だと何がいけないのか?かなり重症でも脂肪肝自体に自覚症状は無く、そのままでもあまり支障が無いのでは…実は古くには私たち医療関係者もそ
ういう見方をしていた時代がありました。しかし脂肪肝が長く続くと【脂肪肝 → 脂肪性肝炎 → 肝硬変 → 肝臓癌】
へと進行する一連の流れが確かにあることが解明されてきました。実際この進行が認められる患者さんの数も明らかに増加し、日本では100万人近くがすでに
「脂肪性肝炎」に進行しているとの報告もあり、飽食の時代の肝臓病として強く警戒される事態にいたっています。もし気になる方々は食事の量とバランスに注
意して適度な運動を行うこと、そして時には体重を測り血液検査で肝機能数値をチェックするようお心がけください。