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_________ ■ Sept 〜 November 2017■_

 

 私たち内科医は患者さんの様々な臓器のことを考えつつ診療にあたらねばなりませんが、とりわけその患者さんの「腎臓機能」については常に頭に置いておくよう習慣づけられています。今回は腎臓の機能につき改めて考えます。

 腎臓という臓器は私たちの生命維持のために、脳や心臓とならんでとても重要な働きを行なっています。その働きは非常に多岐に亘りますが、大きく次の二つ に別れます。(1)体内の水分量とミネラル量、栄養分の調整:私たちの身体活動が円滑に行われるためには血管内ならびに血管外の水分量・ミネラル量は常に 微調整されていなければならず、これには腎臓での調節作業が不可欠というわけです。(2)血圧調節:近傍にある副腎や腎臓周囲の血管壁と密接に連携しなが ら、腎臓が私たちの血圧を常にモニターし、その情報を元に血圧を調整しています。

 このように大切な腎臓ですが、その機能は健康な方でも年齢とともに少しずつ低下していきます。しかし様々な病気や良くない生活習慣が、それらの機能低下 に拍車をかけることをぜひ知っておいてください。腎機能低下を来たしてしまう小児〜若年時の腎疾患についてはここでは説明を割愛しますが、成人後に重要な のが、高血圧症と糖尿病です。この2つが腎機能を低下させる2大原因です。さらには肥満や脂質異常症、塩分の取り過ぎも大きな危険因子です。喫煙や過度の 飲酒もよくありません。それから、尿中にタンパクが漏れ出している「蛋白尿」や「高尿酸血症」も腎機能低下を助長します。逆に、これらの疾患のコントロ- ルが改善すると、それまで悪化していた腎機能が改善方向に向かうこともしばしばあります。また、高齢者で問題となるのが鎮痛剤の連用です。とりわけ、すで に腎機能低下を指摘されておられる方が鎮痛剤を使用される場合には、必ずかかりつけ医とよく相談されることをお勧めします。

 では、腎機能が低下すると何か症状がでるのか?_殆どのケースで答えは「No」です。人工透析を行わなくてはいけないほどにまで腎機能が低下しないかぎ り直接的な自覚症状はなにも起こりません。すなわち、血液や尿の定期検査が腎機能を知る唯一の手がかりです。近年の研究で、腎機能低下自体が心筋梗塞や脳 卒中のリスクを増すことも明らかになりました。まずは、ご自分の腎機能の状態を知ることから始めてください。そして、日頃から上に述べたような病気や生活 習慣をよくコントロールし、毎日の生活では脱水傾向を避けることを心がけ、腎臓の機能をできる限り正常に保つよう心がけましょう。

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大西内科クリニック