韓国旅行記 【韓国新正月旅行記】 4/5(全5話)

 

1998年 1月 2日(金)



01シルリムドン スンデ

スンデタウン入口 チャンギョングンを出て、再びmacfanさんの車に乗り込む。時間的にはもう夕方ちかくになっていた。今からカンナム(江南)に移動し、少し人を追加してからシルリムドン(新林洞)へ向かうらしい。シルリムドンは昔、くりぐりさんが住んでいたところで、近くにソウル大学などもある。しかしなんと言っても「スンデ」で有名な所だ。スンデとは、前出の朝鮮語辞典によると、米・豆腐・モヤシなどを詰めて蒸した腸詰めのこと、とある。血で固めたものなので、韓国人の中にも好き嫌いがあるようだ。スンデそのものにはあまり味がないのだが、料理の仕方によっては結構美味しいのだ。

 チャンギョングンからカンナムに移動するには、ハンガン(漢江)を渡らなくてはならない。予想通り渋滞が起こっていた。しかし、思ったほどではなく、渡りきることが出来た。

 夕方のカンナム駅は人と車でごった返していた。とにかく人人人だ。不景気なんてどこにあるんだというくらい、人で溢れかえっていたのだ。そこに車を停めて人を待つ。しばらくして現れたのはmacfanさんの恋人だそうだ。日本語が出きるそうなのだが、会話は苦手だということだった。

 そこから西に向かって大きな道路をひたすら走っていくと、シルリムドンが見えてきた。地下鉄駅前でとりあえず車を降りる。macfanさんが車をとめに行っている間に、この駅で合流するメンバーを捜す。こちらの駅前もすごい人出で、探すのに苦労したが、なんとか合流することが出来た。ということで10人近くに膨れ上がったメンバーで、「スンデ」を食べに行くことになった。

 シルリムドン駅前から数分歩いたところに「スンデタウン」という、ビル全体が「スンデの店」ばかりという建物がいくつもかたまって建っている地帯がある。今日はそこに行くわけだ。いわゆる広島の「お好み村」の規模を大きくしたようなものだ。

 くりぐりさんの案内で、ビルの中に入っていく。各階に、ところ狭しとスンデの店が並んでいた。フロア全体がすべてスンデの店だ。よく見れば小さい店がたくさん並んでいるのだが、はっきり言って区別はつかない。天井から吊された「ボード」が、かろうじて「店の違い」を示している。お好み村と違う点は、「スンデタウン」の方が、まず規模が比べものにならないほど大きいこと。それに仕切りがないため、フロア全体が見回せるということだ。ビルのフロア全体に、びっしりとイスと机が並べられていて、そこに人々がぎゅうぎゅう詰めになってスンデを食っているところを想像して欲しい。それにしても、このフロアの収容人員はいったい何人なんだろうか? 日本だと消防法とかで無理なんじゃないかと思えるようなすし詰め状態だ。

 くりぐりさんは、どの店が美味しいか知っているらしく、途中の店の強烈な勧誘を振り切るようにして、一目散に奥の方に進んでいった。店によって満員のところもあれば客がいないところもあるので、店によって味が違うのかも知れない。そして目指す店に着いた。既に客がたくさんはいているところを見ると、美味しいみたいだ。そしてお客さんに詰めてもらって席に着くことが出来た。

 このビルの店は、基本的に全部同じ形をしている。横長のベンチシートが向かい合うように並べられていて、その間にテーブルがありコンロが乗せられている。そしてその上に四角い縁付きの鉄板が乗せられている。鉄板と言うよりは、水炊きなどをするときに「具」をのせてくる入れ物に近い。或いは「箱」か。そのパターンがフロア全体を覆い尽くしているわけだ。

 早速、注文の品が出てくる。たっぷりの野菜にスンデ、そしてオプションとして「コプチャン」(牛の小腸:いわゆる「こてっちゃん」)が山盛り登場だ。それを鉄板の上にうずたかく盛るのだ。そしてコチュジャン(トウガラシ味噌)をぶっかける。そしてひたすらこねくり回しながら焼くのだ。雰囲気としては最近流行の「タッカルビ」(鶏カルビ)に似ている。そのうちコチュジャンの焦げた匂いがしてくる。これがまた、たまらなく食欲をそそるのだ。もう我慢できない。

 みんな争うように食べ始めた。韓国人の食欲が大炸裂した瞬間だ。だいたい4人〜6人くらいで一つの鉄板をつつくため、いくつかの鉄板に別れたのだが、鉄板によって辛さが違うのがご愛敬だ。好みに合わせてコチュジャンの量を増やせば辛くなるだけの話なのだが、韓国人でも辛いのが苦手組がいるようで、何だか面白い。僕は「どちらかというと辛い組」に入っているようで、何だか変な気分だ。

  スンデと野菜とコプチャンをほぼ食べ終えてから、やはり「シメ」にご飯を入れた。韓国人も最後に米を食わないと落ち着かないらしい。ご飯を山盛り入れてもらい、「焼き飯」のようにするのだ。コチュジャンの味が絡まって、とても美味しく仕上がる。これも「タッカルビ」と同じパターンだ。どちらが先なのかよく分からないが、これが韓国の定番なんだろう。



02シンチョン(新村)の日本語喫茶:かけはし

 メシをたらふく食ったあと、僕の希望でシンチョン(新村)の「かけはし」に行くことにした。「かけはし」は、日本語喫茶(?)とでも表現すればいいのだろうか? 要するに、日本の雑誌やマンガが置いてあって、日本のビデオが流れる中、日本語で話をしようと言うコンセプトの喫茶店なのだ。日本人や日本語を勉強している韓国人が集まってくると言う。話には聞いていたのだが、一度、行ってみたいと思っていたのだ。

 ここで帰る人に別れを告げてから、再びmacfanさんの車に乗りシンチョンへ向かった。既に日はとっぷりと暮れていた。車は真っ暗な中を快調にとばしていく。もう道はさほど渋滞していなかった。

 シンチョンに近づくにつれ、人の流れが多くなっていく。そしてその流れの中に車は突っ込んでいった。シンチョンの奥の方にその店はあった。

 「かけはし」は、とある雑居ビルの中にあった。よく探さないと分かりにくい位置にある。階段を上っていくと入り口が見えてきた。入り口付近には伝言スペースがたくさんあって、日本人と文通したい人や友達になりたい人、或いは一緒に日本語を勉強してくれる人などを求めるメモがたくさん貼られていた。日本人旅行者が残していったメモなども見つかった。

 中に入ってみると、いわゆる「コピショップ」(コーヒーショップ:喫茶店)だった。ただ、韓国の一般的な「コピショップ」よりは、少し落ち着いた雰囲気だ。左手にカウンターがあって、右手には窓があり、外が見えた。焦げ茶色の大きめのテーブルが数台並べられており、窓際にはソファータイプのイスが置かれていた。カウンターの上部にはモニターが数台埋め込まれていて、安室奈美恵のビデオが流れていた。壁際には日本の雑誌やマンガなどが並んでいた。

 ウェイターが注文を取りに来る。メニューは日本語も書かれていたが、特に変わったものがあるというわけでもないようだった。

 日本人がもっとたくさんいるのかと思ったが、そうでもないようだった。窓際に日本語をしゃべっている人が座っていたが、どうも韓国人っぽかった。相手の人は日本人かも知れないが、よく分からない。僕らも日本語が喋れない人がいるので、当然のことながら会話は韓国語になってしまう。

 しかし、それにしてもお客が少ないような気がした。時間帯が遅いと言うこともあるのだが、普段はどうなのだろう? 反日派がうようよするお国柄だから、風当たりが強いはずなので、少し心配になってきた。そう言う意味ではいつつぶされてもおかしくない店ではある。先頃、キム大統領が「日本文化の段階的開放」を発表したが、これを契機にこの手の店も増えてくるのかも知れない。

 しばらく話をしていたのだが、時間も遅くなってきたので引き上げることにした。



03韓国のビリヤードとボーリング事情

 ここで帰る人は帰っていった。そして残った人で「次はビリヤードをしよう」ということになった。ビリヤードか・・・。まだ韓国ではやったことがなかったので、一度やってみることにした。僕も大学時代にかなりやっていたので、恥をかくこともないだろうし。そう思ってビリヤード場に移動した。

 しかし、ビリヤード場に入ってびっくりしてしまった。なんと、ほとんどの台がポケット(玉が落ちる穴)のない、赤白の4つ玉用の台だったのだ。ポケットのある台は、端っこにぽつんと1台だけ置かれてあった。なんということだ。僕は穴に落とすタイプのゲームしか知らないので、これは弱ってしまった。ルールが分からない。

 かんねぎさんたちにその件を話すと、「じゃ、穴ありの台を使いましょう」ということで、普通の「ローテーション」(って一般的な言い方か?(^^;)をすることにした。しかし、逆に今度は彼らの方がよくルールが分からないようなので、結局、落とし合いをすることになってしまった。赤白の4つ玉のルールはおさえておかないといけないと思った。

 ビリヤードが終わって外に出てみると、もう夜の11時近くなっていた。しかし、残ったカンネギ、カイ君たちは、今からボーリングをしようと言い出したのだ。・・・そう言えば僕も大学生の頃はこういう感じで遊んでいたなぁ、と思い出してしまった。韓国の学生も同じなんだ。しかし、韓国のボーリング場って夜中までやっているんだ。じゃ、2ゲームやろうと言うことになり、ボーリング場に入った。

 韓国のボーリング場は、当然日本のものとあまり変わりなかった。コンピュータシステムも導入されているようだった。ただ、レーンは15個ほどで、少し狭い気もしたが日本だってこう言うところはある。しかし、天井が低くて、やや圧迫感があった。これが一般的なのかどうかは分からないのだが・・・。それから、ボールの種類もあまりなかったので、重めのやつ(16)で行くことにした。靴を借りるのも日本と同じだった。そしてゲーム開始だ。

 端っこのレーンを使ってバトルが始まった。みんななかなか上手だ。僕も大学時代にかなりやっていたので、順調に倒していった。結局、1回目は僕が199点でトップに立ってしまった。さすがにこの点数には「韓国人もびっくり」のようだった。そして俄然燃えてきた韓国勢が2回目は巻き返して、トップの座を奪い返してしまった。なかなか楽しいボーリングだった。

 ボーリングを終えて外に出てみると、もう12時近かった。そしてお開きとなった。今度会えるのはいつになるんだろうと思いながら、みんなと別れた。

 僕は地下鉄でシチョン(市庁)まで行き、ぶらぶらと歩いてカンファジャンヨグアンまで戻った。充実した一日だった。

(第4話終了/全5話)