さて翌朝 寝ぼけたユウロスのポケットから手紙が出て来た
「なんだ? おおっ」こっこれは
ユーリティアがまだ寝ているのをよそに魔王の居城ウスチィリムスク城に向かう
途中 アラリスクの町のメインストリートを走り抜けその外れにある魔王の農園の広い農道を横切り今にも折れそうな高い絶壁の上に建つ荘厳なウスチィリムスク城
その絶壁のふもとにある高い城門を飛び越し 数人の衛兵を無視して何もない絶壁の外側の突起を足場にして一気に飛び上がり続ける
「さぁて 今日は何をしようかなぁ」
と 魔王が書斎で書類に目を通しながらウーロン茶らしき紅茶をすすっていると後ろに人の気配が・・・
「よぉ」
窓から入って来たユウロスは魔王にあのユウロスをここに連れて来た手紙を渡した
「ほほう」
魔王は歓喜してこの手紙を読み終えた
笑う魔王 怒るユウロス
「これは私の字ではないぞ」
「へっ」
ユウロスの顔が歪む
「ところで我が部下が お前と手合わせをしたいと申しておる」
「その話はまた後で・・・」
ユウロスは大きな縦長のさっきのガラス窓を開けウスチィリムスク城から飛び降りた
シアネスはユーリティアの眠る寝室に入って来るなり暖炉に火を入れた
「んにゃ」
ユーリティアは薪の燃える音を聞いて目が覚めたようだ
と そこへ帰って来るユウロスはシアネスにあの手紙を突き付けて
「シアネス・コアール お前だろぉー」
「はぁっ?」
顔が引きつっているシアネス
「いいか この手紙を出して一番 利益があるのはお前だろぉー」
迫力のユウロス
「ど どうかなぁー」
「ふっふっふっ」オーバーホール
迫力に押されるシアネス
「・・・・・・」ああ 神様ぁーーー
押すユウロス
「・・・・」観念せい シアネス
と そんな所へ
「その手紙この私が出したものです」
台詞が先に現れた執事のヴィルセス
「これか」
ユウロスはヴィルセスに手紙を見せる
「そうです私が書いた物」と言いつつ手紙を破るヴィルセス
「・・・・・」あっ ちょちょっと・・・
「私がシアネスの書いた日記を見て 私の手紙を部下に届けさせました」
「そうか・・・」ああ なんだかややこしい
「私の日記を覗いたのですか?」
「すまん」
逃げるようにその場を離れるヴィルセス・・・
「あれ ユウロス何処へ・・・」
忍び足でその場を逃げようとしているユウロス
「ちょっとね・・・」
逃げるユウロスは ほっとして一息ついているヴィルセスを通り過ぎサードキャッスルの外へ出た
「なんだかなぁーーーーー」
ユウロスはサードキャッスルを背に歩き始めた 朝の日の光が目に眩しい
魔王が今日の予定を立てるべく朝の散歩をしていると うつむいたユウロスが目の前から歩いてくる
「どうした 若いの」
「誰がだ 誰が」
魔王はユウロスを指さした
「そんなに 率直に指すんじゃない」
そのまま魔王は
「ところで我が部下が お前と手合わせをしたいと申しておる と言ったのだがどうだろうか」
「場所と相手の強さは大丈夫だろうな」
「さぁ それは分からんな 場所はともかくとして・・・」
「よしっ 昼まで準備をして呼べ 相手をしてやる」
「偉そうに・・・」まったく
「ふん」うるさい
そんな訳で屋外の観客収容人数5000人の石で出来ている野球場ぐらいの大きさの簡素な格闘場
その広いグランドと観客のまばらな観客席との間に結界が4重に張り巡らされている
その中に普段着で武器の選択をするユウロスと しっかりと青い鎧を着込み重装備した騎士らしき者が刃渡り2m余りの(なんかよく分からない)大きな剣の柄を握っている
ユウロスは結局ブーメランを選ぶ
「とりあえず準備はいいぞ」
ユウロスは観客席に設けられた特設スタンドに座る魔王に告げた
その魔王の横にはアナウンサーらしき人物がマイクを片手に陣取っている
「ご場内の皆様に申し上げます 午後1時よりこの試合を開催致します なお試合中客席内での飲食はご遠慮いただきますので
ご了承ください」
1時まで あと6分
石造りのスタンドがヒューマノイドや魔物の観客で埋まる
「なんか 違う」あのやろう儲けようって魂胆だなぁー
と ユウロスの視界にシアネスとユーリティアが入った 二人は手を振っている
そんなうちに 1時になるとアナウンスが・・・
「ではこれよりユウロス・ノジール対カッセル・ウッジ・フォッケンウルフの試合を行います
ルールは特にありません 騎士道に則って審判の指示には従うこと 審判は旧第三帝国の総統
みんなも知ってる魔王様にやってもらいます なお 試合が始まりますので飲食はご遠慮ください」
アナウンサーのアナウンスが終わると魔王は立ち上がり
「では試合を始めよう 両者握手でもしてくれ・・・」
ユウロスは重装備のカッセルに近づき握手の手を差し伸べる
カッセルは兜を脱ぎユウロスと握手し
「あなたと戦えるとは光栄です」
「そうかなぁー」
てれるなユウロス
両者がグランドの上で間合いを取る
「さて・・・ 始めっ」
魔王の声かグランドへ届いた
カッセルはユウロスへと刃渡り2m余りの大きな剣を抜き構え軽やかに突進する
ユウロスはカッセル振り下ろしの一撃目をブーメランで受け流しカッセルの後ろに回りカッセルから離れた
カッセルから明らかに逃げるユウロス
「逃がすかっ」
そのユウロス背中目がけてカッセルは刃渡り2m余りの大きな剣を降り投げた
ユウロスは振り返りその場に止まり 回転しながら迫りくる剣の回転の中心点を裏拳で殴った
鋭い金属音の後 砕け散った刃渡り2m余りの大きな剣の残骸と殴った手を痛がるユウロスの姿があった
「なんと」
カッセルは短い独り言をいい終える
「少しは 攻撃しないと失礼にあたるな」
ユウロスはカッセルに攻撃せんとブーメランを投げ走り出す
カッセルにブーメランがあたらんとした瞬間 ユウロスの背後で多数の金属音が響く
ユウロスは半ば振り向きその様子を視認した 同時に破片が一斉にユウロスに向かって飛ぶ
「邪魔だ・・・」
ユウロスは右手の掌を向かってくる破片に向け 叫ぶ 直後破片から掌の前に浮かぶ光球に光が吸い込まれ破片はすべてそのまま重力に任せ地に落ちた
ユウロスが再びカッセルを視認しようと振り向いている間に カッセルは細身の剣でユウロスにきりかかろうとしていた
ユウロスは右腕でカッセルの振り下ろす細身の剣を受け止めほほ笑む
「こんなものか?」
「言ったな」
カッセルはユウロスの肉に食い込んだ剣を抜き間合いを取った
ユウロスは一度カッセルの視界から消え 特設スタンドの魔王の隣のあいている椅子に座っていた
「よう 殺してもいいのか?」
「そうだな・・・ お前が非難されるが それでもよければ」
「そうか」
ユウロスは魔王のいる特設スタンドからグランドに降りる
「逃げたかと思ったぞ」
カッセルがユウロスをやじる ユウロスはカッセルの間合いまで無造作に近づき
「・・・ カッセルとか言ったな なぜ私と戦おうと思った」
「強い奴がいれば倒す それだけだ」
「愚かな・・・」
「何だと」
斬りかかろうとモーションを起こしたカッセルは目の前からユウロスが消えるのを見
一瞬動作が止まった
「愚かな その程度で 私と本気でやりたいだと?」
言葉を発したユウロスの左手はカッセルの首を後ろからつかみ持ち上げる
「ぐあっ くっ」
「身の・・・ 程を・・・ 知れっ!」
ユウロスがカッセルの首を離し多とほぼ同時にグランドに爆発音のような大音響が響く
「 ・・・ あっ・・・ しまった 余分な衝撃波を中和するの 忘れたなぁー」まぁいいか
そのユウロスの前のグランドの上には力つきたカッセルが落ちていた
高らかにアナウンサーが勝利宣言するなか
「やはり 勝負にならんな」
魔王はいい終えると結界を解き救護班を二人に向かわせた
「さてと」
ユウロスは迷彩色の飛行機を分解してホワイトバードMark2に乗せ終わると
ユーリティアとシアネスを先に乗せた
「また 来るか?」
「ああ シアネスを届けに・・・」
ユウロスは魔王に答えホワイトバードMark2のタラップをのぼる しばらくしてタラップが収納され白い機体はゆっくりと垂直離陸し夕焼け空を旋回して東の空へ消えた
「行ったか・・・」
魔王は また何かを考えているように滑走路を後にした
《第六話 ユウロスの憂鬱 果てしなく》
解説
ユウロスは手紙の真意知る がカッセルという者に戦いを挑まれる
カッセルを難無く駆逐したユウロスは帰途につく・・・
余談
半ば強制的に終わらせたがまあいい
謎のキャラクター名鑑 桜花編 魔王(生年不明)
通称魔王で通っている
一度は世界を征服せしめんとした旧第三帝国の総統であり世界最高のコマンダーでもある
ユウロスのある質問により一夜にして世界征服から手を引いた 現在は隠居の状態で ある国の公位をもつ
なお 理論的にはリネと同じ存在状態であると思われる・・・