Page-Galwaliear-ユウロスの憂鬱 第一話

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ユウロスの憂鬱3 世界へ行こう
第一話 ラオリス

 その星系にはいつの頃からか魔法があった その星ではいつの間にか魔法が日常にとけ込みそれがごく当たり前のように存在していた やがてその星のある地域で魔法至上主義をとった国家が現れたミニア王国である
 王国は魔法を兵器とし戦乱の末大陸統一を遂げ国名を改めた ラオリス王国がここに誕生したのであった それから幾年月・・・

 ここはそのラオリス王国の王都ラオリスにある魔法学校 王都で最も名声高い私立の魔法学校で一般にも広く門戸を開いている また王都の中では魔法学の底辺を支える学校である
 その学校のとある講義室にて一人の生徒が今年度最後の講義を終えた後かたづけをしている教師に半信半疑で質問をする
「ねえ先生 先生は魔法を使わないんですか?」
 その先生は華奢な左手で緑みを帯びた白い髪をかき上げ答える
「私は魔法ではたいていのことは出来るから 使わないんだ」
「本当は使えないのでしょう?」
「そんな事はないよ ほら」
 先生は片づけた道具を生徒の目の前から消し去った
「あ ほんとだ じゃあ先生あの話は本当なんですか?」
「あの話?」
「何年か前にあった 有志の教師対抗実戦では 対戦相手に手加減しなかったとかで全員病院送りにして実技担当からはずされたって言うのは・・・」
「ああ あれ まあね」
 ぽりぽりと鼻頭をかいて答えた
「学校で最強?」
「ふふっ 私は破壊神だから」
「はあ」何を言ってるんだか
 その先生は生徒としばらくとりとめもない話をした後 生徒と別れ食堂へ

 昼食を済ませ自室に戻ると先ほど講義室で送った道具が机の上にあった 一服してから書き上げていた本の原稿を封筒に入れ その封筒を鞄の中に入れた 身なりを整え首の後ろで髪をまとめているリボンを結び直し 鞄を持って部屋を出ようとしていた時スピーカーから

「ユウロス先生 校長室へお越しください ・・・」

「なんだろ」
 ・・・解雇通告かな 思い当たる節が多すぎて・・・ いや やめよう・・・

「失礼します」
 ユウロスが校長室に入るなり 校長であるサーマル・エピックは取り乱していた 彼は今日昼に出張先から帰って来る予定であったので 帰ってきて早々に何か大事があったのだろう
「ああ ユウロス大変なんだ」
 校長の様子を見て落ち着かせるような手振りをし
「とりあえず ゆっくりと深呼吸をしてください 気持ちを落ち着けて ゆっくりと 深呼吸を もう一度」
 ユウロスに言われるままに深呼吸をする校長は少ししていすに座り込んだ
「家の 事ですか?」
 ユウロスが訪ねると再び立ち上がり
「そうだ 息子が家出した」
 ユウロスはそれを制止する手振りをし 落ち着いた口調で
「ランキがですか?」
 サーマルは制止されいすに座り 水差しの水をコップに移し
「ああ しかも金庫から四千ルーも持ち出してだ」
 一息に飲み干した ユウロスは平然とした口調のまま
「かなりの金額ですね どうするんです?」
「探すもなにもこの二日間家を空けていたのは知っているだろう」
「ええ 存じてますよ 屋根裏を使わせてもらってますから」
「メイドの話だと昨日からいなくなっていたんだが 何か知らないか?」
「一昨日の夕食時にはまだいたんですけどね その夜から一人分の反応が消えたんですが さすがに今はどこにいるかは分かりませんね」
 サーマルはユウロスの背にあるドアに一度視線を向け
「今 城門へ確認に行かせている 帰ってくれば分かることだ」
 話が一段落したのでユウロスは用件を問う
「ところで私を呼んだのはこのためですか?」
「ああ そうだが 何か?」
「いや 思い当たる節が多くててっきり首になると思ってたのですが・・・」
「君の担当している講義を出来る者が 私以外にはいなくてな 大丈夫だ首にはせんよ」
「そうですか よかった」
 ユウロスは片手に鞄を持っている事を思い出し
「では私は行くところがありますので失礼します」
「ああ すまんな」
 部屋を出たユウロスが扉を閉めた後
「ああ 息子というモノは思いどうりにはならんなぁー」
 校長であるサーマル・エピックは嘆いていた

 その夜 ユウロスが屋根裏を間借りしているエピックの家の食堂
 サーマル・エピックは妻ニーナの方を一度見てユウロスが食事を終えるのを待って話し始めた
「ユウロス一つ頼みがあるのだが」
 くつろいでいたユウロスはそのままの状態で聞き返す
「なにか?」
「ランキの事だが  どうやら王都ラオリスを出てパルミール川に沿ってラマ港に向かっているようなんだ」
「交通機関は?」
「船だ」
「で どうするのですか?」
「それで ユウロスにランキの事を頼みたくてな 他に安心して頼める人がいないんだ」
「むう・・・」
 しばらく黙っているユウロスにサーマルが声をかけようとしたとき
「条件があります まずはじめに私の持っている講義はあなたが行う 次に私を長期休暇の扱いにする ランキの事に関しては本人の意思でここに戻ってくるまで私に任せる 銀行の私の口座は本の印税が入ってくるのでさわらずにおくこと 以上です」
「すまないが紙に書いてくれないか チトー 書斎へ行って紙とペンを持ってきてくれ」
 即答しメイドのチトーに告げたサーマル
「分かりました」
 しばらくしてユウロスは差し出された紙にペンで契約書形式にして書いた物をサーマルに渡した これを読んだサーマルは
「ユウロス長期休暇というのは 給料は出ないんだぞ」
「仕事をしない者に賃金を渡す必要はありませんよ」
「む まあそうか」
「よろしければそこにサインを」
「分かった」
 サーマルはサインをする
「では私は準備をしますのでこれで」
「ああ」
 食堂からユウロスが退室したのを見てサーマルは書斎に赴き サインをした紙を契約書類の入っている棚の中に入れた

「では行って来ますよ」
 翌日ユウロスは朝日を浴びてゴーグルをかけ白いフィンを後ろに向かって広げた箒モードのワルキュリア・アイに右から腰掛けるように乗り 東の城門を出たすぐ側で見送っているサーマルとメイドのチトーを背にし飛び立った
「大丈夫でしょうか」
「信じるしかあるまい」
 二人は遠く小さくなってゆくユウロスの姿を手をかざし朝日と重ね合わせるように見つめていた

 朝の空気に乗るようにユウロスはパルミール川沿いに東へと飛ぶ 広く青く大きな川の流れは蛇行することなく穀倉地帯を東へと続いている
「ふむ」
 船は4日掛けてラマ港に到着するのだから 先にラマ港に行って待っていようか いや ランキのいる船に目印を打ち込んでから先回りするべきかな
「さて 船の名前はカクイクだったな」
 ワルキュリア・アイの後ろに向かって広がっているフィンの中に光球を作り 前にある二つのフィンが空気の壁を作り出すのを確認し ユウロスは一気にスピードを上げ空気を切る勢いでパルミール川上空を東へと飛んだ

 昼過ぎ 交易船カクイク号は一つの動力船に5つの艀がくっついた物で小さなメガフーロト程度の大きさを持っている デッキの面積は戦艦一隻に勝るとも劣らず乗員は約千五百人パルミール川最大の交易船である その動力船ヒュート号の後甲板の上でランキ・エピックは朝日に照らされた川面を静かに眺めていた
「はぁーーーーっ」
 船に乗ったはいいとしても 交易船はやめとけばよかったかなぁ
 そのきちんとした身なりから金を持ってると思われたのか 昨日は行商人たちを振り切るのに体力を使ってしまったランキ 望郷の思い半分 交易船を選んだことを後悔しているのであった
 十数分後 ぼーっと水面を眺めているランキの耳に岸の方から爆発音が入る 驚いたランキは音の方に視線をやった
「げっ ユウロス」
 ユウロスは名前を呼ばれてランキの方を向く 双方共に気づいたときには遅く二人はわずか数メートルの距離で目を合わせていた
 まいったなぁー
 仕方なくランキの前に降りるユウロス
「何の用?」
 ランキが拍子抜けたようにユウロスに聞く
「君の父上からお目付役を言付かってね 私も一緒に行きます 嫌とは言わせませんよ」
 開き直ったのか 予測していたのかランキは取り乱すこともなく
「学校の方はいいのか?」
「問題は多々あるやもしれませんが大丈夫でしょう」
「お金は?」
「とりあえず3千4百ルーほど持ってますよ」
 しばらくやりとりが続く中 異常な軽装のユウロスに気づいて
「荷物はそれだけ」
「背中のリュックサックの中に入っているのが全部ですけど?」
「そんな 軽装でいいの?」
「ふふっ おっと ここで待っていてくださいね 今のままでは無賃乗船ですから」
 ユウロスはランキから離れて行った
「まあいいか 一人じゃあ心細いしな」
 ・・・ でも あのモヤシが役に立つとは思えないけどなぁ
 3日後朝 ラマ港 交易船カクイク号を降りた二人は屋台で朝食を済ませ町中を歩いていた
「ごれからどうするつもりだ?」
「とりあえず船に乗ってヴィーイベリズに行ってみようと思うんだけど」
「ヴィーイベリズ行きの船に乗せてもらわないといけませんね 客船では少々高く着きますよ」
「とわ言っても とりあえず客船で行こう」
「そうですか でわ 次のヴィーイベリズ行きの船の乗船券を取りに行きましょう」
 船会社へと足を向けたユウロスにランキがおいてかれまいとついて行く
「・・・ ユウロスって慣れてない? こういうの」
「そうですね ラオリスに来る前はいろいろと旅をしていましたから」
「船にはどのくらい乗るんだ?」
「そうですね動力船なれば1週間 帆船でしたら2週間あれば着くと思いますよ 最もどちらも海の状態によりますがね」
「へえよく知ってるねぇー」
「知りませんよ」
「は?」
「航行距離と現在の船の能力から考えて出しただけです」
 こいつわぁー

 そんなこんなで二人は船会社数社の受付がある建物に入る 木造2階建てのこの建物の中には数組の人が乗船手続きをしていた
「任せてもらってもよろしいですか?」
「どうぞ 俺じゃわかんないから」
「でわ ちょっと持っていてくださいね」
 ユウロスはまだ箒モードのワルキュリア・アイをランキに預け辺りを見回しヴィーイベリズ行きのカウンターを探し そこへ歩いて行く
「すみません ヤヌス港行きはこちらで?」
「はい ヴィーイベリズのヤヌス港行きは4日後高速帆船デューンアス号が出港予定ですが乗船手続きをなさいますか?」
「はい 二人分ほど」
「では ご記入願います」
 受け取った紙を持って一度カウンターを離れ ペンが用意されているテーブルにつきランキを呼び
「この紙の太枠の中を記入して」
と 紙を渡した
 二人分の記入済の用紙をさっきのカウンターに持って行き手続きを行う しばらくするとランキの元に二枚の乗船券を持ったユウロスが戻ってきて ワルキュリア・アイを受け取り
「ランキ 420ファルもらえますか」
「けっこうするなぁー」
 ぼやきながらランキは420ファルをユウロスに渡し代わりに乗船券をもらった
「なくさないように してください」
「はいはい」
「出港は4日後ですから それまでの宿を探しに行きますか」
 建物を出るユウロスに付いていくランキ
「ところでユウロス あの手続きは何のためにあるんだ?」
「あれですか? 船にはある一定以上の重量は詰めないのは分かりますね?」
「沈むから」
「そうです ですから安全に運ぶため定員というものが決まっています また沈没した場合生存者が分かればあとは名簿を調べれば死亡した者が分かります それから」・・・
 説明に聞き入っているランキ ユウロスが説明を終え立ち止まる
「どうしたのユウロス」
「部屋が空いているかどうか聞いてみます」
 こじんまりとしたINNに入って行った
「ここにぃ?・・・」
 ランキは建物を見上げる 一階に食堂のある3階建ての石造りで横町に面している建物 看板にはソラリアと書かれている あまり有名でなさそうな感じを受けたランキであった
「部屋あいてましたよ 荷物を置きに行きましょう」
 建物の中にはいると螺旋階段の上から声がする
「先生こっちこっち」
「分かった」
 二人は螺旋階段を上る
「先生って教え子?」
「ああ そうだよ 彼女はリーエ・ソラリアここの次女で今学校で魔法を教えているんだ」
「長生きだねぇーユウロス 60歳ぐらい?」
「まさか」
 程なく二人は部屋に通された
「私はこれからリーエさんの勤めている学校に行きます ランキなら大丈夫だと思いますがくれぐれも問題など起こさないように それから部屋を出るときには鍵を掛けてそれを預けておくように」
「分かった」
 ランキの返事を聞くとユウロスは荷物も置かずに出て行ってしまった
 建物から出て行く二人を窓から見下ろし しばらく風に吹かれていたランキは窓を閉め 財布を持って部屋を出た
「さてと とりあえず出ては見たものの・・・」
 ランキはラマの町中を歩いて行く しばらく行くと 人であふれかえる大通りに出た
「うわぁ」
 すごい人の数
 人混みの中 大通りには今朝着いた交易船の商人たちが中央に長く続く露店を出している

 さてそのころユウロスはと言えば・・・
「先生 教頭先生の許可が取れました」
「そうですか でわ準備しましょうか」
「はい 先生」
 ユウロスはリーエと共にグランドへと足を進める
「ところでリーエさん どうして教師に?」
「それは 先生に魅せられたから」
「私に?」
「うん 先生みたいになりたいって思ったんです」
 あまり思い当たる節がないのか質問するユウロス
「あなたから見れば 私はどのように見えますか?」
「いつも柔和で毅然としていて 誰とでも自然体でつきあえて 人間としても尊敬に値する人です」
 ユウロスは抜けたような声で
「あの ずいぶん高い評価ですねぇ もう少し下がりませんか?」
「え でも」
「私はあなたが思っているほど できた者ではありません 第一何も考えていないだけだし・・・ 悲しむときもあれば かんしゃくを起こすときだってあります まあでも どちらかと言えば情に流されやすい方ですがね でも そう言うあなたもずいぶん落ち着いた様に見えますよ」
「そうですか?」
「ええ 年を経て人間的な厚みが増した と言うべきですかね」
「先生 私そんなに老けて見えます?」
「いえ そう言う訳ではなくて えーと あの ・・・ ・・・・・・・」
 あうあう・・・
 次第に口ごもって行くユウロスを見て苦笑するリーエ
「先生 そろそろ 用意しません?」
「あ そうですねぇ・・・ リーエさん持っていていただけますか?」
「はい 先生」
 ユウロスはワルキュリア・アイをリーエに渡し背中のリュックを下ろして中からバリア発振装置とやたらと銃身のみ大きいリボルバーのような光子銃を取り出す
「先生これは何ですか?」
「ちょっと待っていて下さいね」
 言いながらユウロスはバリア発振装置を10メートル程度離れた場所にセットし戻って来て
「どれですか?」
「この先生のこれです」
 そう言ってリーエはワルキュリア・アイを指した
「ちょっといいですか?」
 ユウロスはリーエからワルキュリア・アイを受け取りそれを横にして宙に手放した 静かにそれはその位置に静止する ユウロスはそれに腰掛けるように座り
「これは 私がワルキュリア・アイと呼んでいる物です この形態の時は空飛ぶ箒の様な物です」
「空飛ぶ箒ってなんですか?」
「・・・ 空飛ぶ箒というのは そうですね まだこの世に魔法が名前しか存在していなかった頃に空想上のものとして魔女というものがありました それは今となっては滑稽ですが いろいろな魔術を使い箒にまたがって空を飛ぶことの出来るというものでした その箒を模して私が造った物です」
 説明を聞き言っていたリーエは気がついたように質問をする
「先生 何を するおつもりですか?」
「このラオリスにおいては 現在 魔法は絶対とされ 科学はないがしろにされています そのことを諭してみようと思います」
 ユウロスの言葉に何かを考えるようにしているリーエの前でユウロスはこぼすように言った
「科学の否定は極論私の存在の否定になる」
「せ 先生?」
「何です」
「いま なんて言ったのですか?」
「えっ? ああ 気にしないで下さい たぶん無意識に言葉が出たんでしょう それより あれに向かって何か魔法を使ってみて下さい できれば派手な攻撃魔法がわかりやすくてよいのですが」
 バリア発振装置をさしてユウロスは言ったあと リーエから少し離れた
「いいんですか?」
「大丈夫です」
「分かりました ・・・っ ファイアー!」
 バリア発振装置に向けたリーエの手のひらから少し離れた場所から炎がバリア発振装置に向かってのび まるで見えない壁に当たったように炎がその見えない壁沿いに広がった
「あなたも思いこみ効果を使うんですねぇ」
「もう癖になってますから」
「でわ 私も 撃ってみますか」
 ユウロスはワルキュリア・アイに腰掛けたまま身構えもせずバリア発振装置の方に視線を向けた 数秒後ユウロスの前に徐々に明るくなる光球が現れた その光球の周りでは大小さまざまな放電が飛び交っている その放電がすうっと消えた直後光球から光線が爆音と共にバリア発振装置へと撃たれた それは先ほどの見えない壁を覆うように広がり消える その形状はバリア発振装置を取り囲む球の様になっていた
「これも見ていて下さい」
 言い終えると先ほどリュックから出した光子銃に弾を一発込めバリア発振装置へと向け 引き金を引いた 爆音と共に先ほどと同じ光線が光子銃から放たれ 先ほど同じように見えない壁を覆うように広がり消えた
「どうですか?」
「あの その銃は魔法を弾丸にしているんですか?」
「違いますよ 詳しいことを説明しても分からないでしょうから説明はしませんが」
「はあ」
「まあ 魔法でも科学でも同じ事が出来るんです これは魔法も物理事象の上にある事を指していると思っています さて 質問させてもらってもよろしいでしょうか」
「何ですか? 先生」
「この学校では何を教えているんです?」
「え? あっ 私ったら そんなことも・・・ 説明しますね この学校は先生が勤めている魔法学校とは違って普通の学校なんです 私が魔法学校を卒業してこの町に戻って来た時に魔法を教えてくれないかと学校からお誘いがあったので喜んでお誘いを受けたんです それから授業の中に魔法が入ったんです 授業は主に魔法に対する知識を教えています 魔法って本人の資質に左右されますから使える人には家族との相談の上で放課後に時間をもうけて教えています」
「ふむ 要するに普通の学校に魔法を教える授業を設けて そこで魔法に対する知識を教えていると」
「はい」
 二人はとりとめのない話をしながら生徒が校庭に出てくるのを待っている 程なく生徒達が校庭に出てきてユウロスの周りを取り囲むようにそれぞれ自由に座ったり立ったりしてユウロスの話が始まるのを待っていた ユウロスはそれを見渡しリーエに合図し リーエの紹介を受け程なく話し始めた

 さてそのころランキは・・・
「これが高速帆船かぁ」
 港に停泊している高速帆船の側まで来ていた 通常の帆船の倍近くある帆を支えるマストはそれを見上げるランキの頭上高くそびえている
「すごいマストだなぁ」
 感嘆の声を上げたランキであったが知人がいるわけでもなく それをしばらく見てまた町の方へ戻った
 夕刻 INNソラリアに戻ってきたランキは 途中で買ってきた得物を自分の荷物の上に置き靴を脱いでベッドの上に横になった
「ユウロス 遅いな」
 ふと視線を向けた窓から顔を出して外を眺める ランキの視界に戻ってくるユウロスが入ったのは日が暮れる直前だった
「何してたんだか」
 部屋に戻ってきたユウロスに言ったランキ 返すようにユウロスは言う
「学校で科学のなんたるかを教えてきたんです」
「科学なんて 魔法万能のこの世の中に・・・」
「その言葉 いやいいでしょう」
 聞き捨てならんが あなたでは役不足だな
 とりとめのない話を交わした後二人は食事をとるべく部屋を後にした

四日後 朝・・・
 二人は朝食の後 荷物をまとめおのおのの荷物を持って部屋を出た
「乗船券 ありますね」
 ユウロスの問いかけに乗船券を取り出すことによってランキは答えた
 降りてきた二人にリーエは
「先生 まだ乗船手続きには早いですよ」
「そうですか とりあえずはここでゆっくりしますか」
 リーエの言葉を聞いてランキの方を見てリュックを下ろしテーブルにつくユウロス
「ユウロス」
「なんですか? ランキ」
「ユウロスは外国の言葉分かるのか?」
「ふふ その程度 破壊神のたしなみというもの 当然です ・・・ リーエさんお茶をいただけますか?」
 ユウロスはリーエにお茶を頼みここから離れたのを確認し リュックを開けそのなかに手を入れ
「いい物をあげましょう これを身につけていればだいたいの言語は問題なく聞き取れます」
 取り出した耳に掛けるタイプの補聴器の様な物をランキに渡すユウロス
「本当に?」
「試しにつけてみて下さい」
「どうやって?」
「この部分を耳に掛けて この部分を耳の中に入れて下さい」
 ユウロスに言われるままに殆ど補聴器のそのものの外観の翻訳機をつけるランキ
「つけたよ」
 唐突にユウロスは地球文化圏の共通語で話し始めた その内容は「どうです 聞こえますか 私は現在この星の歴史上の一時期にのみ使われた言葉を話しています 問題なく聞き取れてますか?」
 言い終えたユウロスにランキは
「別々の言語が同時に聞こえてくるよ ユウロス」
 ユウロスは元のラオリスの言葉で
「では ちょっと失礼して」
 ランキの耳の裏にある翻訳機のスイッチをいじる
「今度は 両方とも同じ言葉ですか」
「うん 同じだ」
「それをつけていると呪文の詠唱も翻訳されて聞こえますよ」
「ふーん 外してもいい?」
「かまいません 必要なときにつけて下さいね」
「分かったユウロス」
 少ししてリーエはお茶を持ってテーブルについた 程なく三人でとりとめのない話が始まるのであった

昼前 高速帆船デューンアス号の乗船手続き所
 手続きを終えた二人に見送りのリーエが寄り
「先生・・・」
「何ですかリーエさん」
「お元気で」
「大丈夫です 私にはまだやることがありますから 戻ってきますよ でわ今回はこれにて」
 ユウロスはリーエに軽く会釈をし 船の側面に付いている階段を上る ランキがその後を追いかけるように階段を上っていった

 船内に入ったユウロスはリーエの視界に再び姿を表すことはなかった
 高速帆船デューンアス号は2時間後にヴィーイベリズの玄関口ヤヌス港への航路についていた

第一話 ラオリス END

解説
この話はユウロスの憂鬱の約2世紀程度後の話になります
まだエピック家が貴族でない時期の話です どうもエピック家は放浪癖があるらしく この話に出演するランキ君も 第五文明に出演したディアスさんも若い頃は放浪癖があることになってます まあいいけどねぇ
お気づきの点がありましたら「しまぷ(う)」までご一報を でわ 第2話で あでゅー
キャスト
 ユウロス・ノジール
本編の主人公
 サーマル・エピック
ラオリス魔法学校の校長 理事も務める 妻の名はニーナ 一男二女の子供を持つ
 ランキ・エピック
校長の長男で主人公にしなければならない人物
 チトー・ルバーズ
メイドさん 私の話には結構メイドが出てくる
 リーエ・ソラリア
ラマの町の学校で教師をしている女性 三十路一歩手前位か?

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Ende